2015 Fiscal Year Annual Research Report
免疫系に積極的に働きかけるイムノセラミックスの創製とその機能発現メカニズムの解明
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15H03025
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
相澤 守 明治大学, 理工学部, 教授 (10255713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 重徳 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (50348801)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イムノセラミックス / 水酸アパタイト / イノシトールリン酸 / ホウ素含有アパタイト / 免疫細胞 / T細胞 / フローサイトメーター / 養子免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで生体機能の一部あるいは全部を代替する目的で開発されている「バイオマテリアル」は人工材料であるため、免疫による拒絶がほとんど生じないことがメリットの一つであった。しかしながら、もし、材料が積極的に免疫系に働きかけ、免疫細胞(ナチュラルキラー細胞(NK細胞), T細胞など)を活性化することができれば、現在、がんの治療法として注目されている「養子免疫療法」に新機軸を提案できる。 我々はこれまでに免疫系に作用するバイオセラミックス(イムノセラミックスと定義)の試製に成功している。このイムノセラミックスとマウス由来脾臓細胞とを共存培養すると、免疫細胞中のT細胞の比率を増加させるとともにNK細胞が活性化することを明らかにしている。 平成27年度は、これまでに得られている知見を足掛かりとして、免疫系に積極的に働きかける新規な「イムノセラミックス」を創製するとともに、その機能評価を推進した。より具体的には、イノシトールリン酸固定化水酸アパタイト(IP6-HAp)にIP6-HAp セラミックス上で脾臓細胞を培養すると、ヘルパー T 細胞およびキラー T 細胞比率が増加することを明らかにした。その成因として、イムノセラミックスに接触した T 細胞の存在が考えられる。T 細胞は細胞膜外からのカルシウムイオンの流入により、増殖や分化といった応答をするため、IP6-HApセラミックスでは、HAp セラミックス表面に修飾された IP6 のキレート化作用と、IP6の表面修飾でゼータ電位の低下による静電的な作用によって、表面近傍において局所的にカルシウムイオン濃度の上昇が起こっており、IP6-HApセラミックス表面からの刺激によりT細胞の比率が増加したものと考えられる。 以上の結果より、HAp セラミックスの基材表面に IP6 を表面修飾したIP6-HApセラミックスは、がん治療に有効な T 細胞を効果的に活性化できる「養子免疫療法」に有用なバイオマテリアルとして期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本提案では、以下の4つの課題: 1) 免疫系に積極的に働きかけるイムノセラミックスの作製条件の最適化、2) イムノセラミックスの免疫機能発現メカニズムの解明、3) イムノセラミックスとラジアルフロー型バイオリアクター(RFB)を利用した免疫細胞の効率的な増殖・活性化プロセスの構築、4) 免疫系に積極的に働きかける新規材料の探索とその検証を併行して進める計画である。 H27年度は、IP6-HApセラミックスの作製条件の最適化を進め、その研究成果をバイオセラミックス国際会議(27th Symposium and Annual Meeting of International Society for Ceramics in Medicine; Bioceramics 27)などで口頭発表している。また、研究分担者と協力して、免疫系向上の成因がイムノセラミックスに接着したT細胞が刺激を受けたことに起因する可能性を見いだしている。今後、T細胞と材料との相互作用の観点から、免疫学的な評価を実施し、イムノセラミックスの免疫機能発現メカニズムの解明につなげる。さらに、新規材料探索として、ゾル-ゲル法によりCaO-P2O5-SiO2-B2O3系結晶化ガラスを試製し、免疫系に働きかけるホウ素含有アパタイトを優先的に析出する調製条件を明らかにし、その免疫賦活効果を確認している。 以上の所見より、ほぼ当初のマイルストーン通りに研究が進行していることから、「(2)概ね順調に進展している」を選択している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、免疫系に積極的に働きかける「イムノセラミックス」を創製し、その機能発現メカニズムを解明するとともに、医学応用を見据え、免疫細胞の効率的な増殖・活性化プロセスを構築することである。そこで、本提案では、以下の手順:1) 免疫系に積極的に働きかけるイムノセラミックスの作製条件の最適化、2) イムノセラミックスの免疫機能発現メカニズムの解明、3) イムノセラミックスとラジアルフロー型バイオリアクター(RFB)を利用した免疫細胞の効率的な増殖・活性化プロセスの構築、4) 免疫系に積極的に働きかける新規材料の探索とその検証により研究を推進する。 まず、1)でこれまでの研究成果をもとにイムノセラミックスのモデルとなる二つの材料(BApおよびIP6-HApセラミックス)を試製し、その免疫機能を最大限に引き出す作製条件を明らかにする。2)では、イムノセラミックスの機能発現メカニズムを解明し、材料創製へのフィードバックをかける。3)では、医学応用を見据え、免疫細胞の効率的な増殖・活性化プロセスを構築する。さらに、4)では、BApおよびIP6-HApセラミックスを越える優れた免疫賦活効果を備えた新規材料の探索と検証を行なう。 H28年度は、特に、IP6-HApセラミックスの表面構造を制御して免疫細胞が活性化する条件を見極めるとともに、多孔化プロセスについても検討を加える。さらに、新規材料として期待されるCaO-P2O5-SiO2-B2O3系結晶化ガラスの免疫細胞応答性(特に、NK細胞)を検討する。また、研究分担者と協力して、免疫細胞と材料との相互作用の観点から、免疫学的な評価を実施し、イムノセラミックスの免疫機能発現メカニズムにつなげる。
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Research Products
(12 results)