2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規治療機器を実臨床に導入時に有効な循環シミュレータの開発
Project/Area Number |
15H03041
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
梅津 光生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90132927)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 清隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (20339691)
伊関 洋 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (90119892)
八木 高伸 早稲田大学, 理工学術院, 客員准教授 (00468852)
松橋 祐輝 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (50754777)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 循環シミュレータ / 新規治療機器 / 医療技術評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,研究代表者(梅津)が有する体循環シミュレータ(流体循環モデル)の技術を活かし,生体という“不確定要素のかたまり”を相手に,3種類の新規治療機器(うち1種は国産)による医療行為が臨床現場で効果的に発揮できるような“循環シミュレータ”の評価装置の開発を行うことに焦点を絞り研究を推進している.研究テーマは,A) 国産人工弁(ステントレス僧帽弁:NORMO弁)の植込み手術・評価用シミュレータの開発,B) 経皮的大動脈弁の適正な径選択と留置部位検討用シミュレータの開発,C) 生体吸収性ステントの性能評価用シミュレータの開発の3つとした.以下に各テーマの概要を述べる. A) 国産人工弁(ステントレス僧帽弁:NORMO弁)の植込み手術・評価用シミュレータの開発:NORMO 弁の性能評価に使用してきたシミュレータの臨床面からの改良を進める.又それと並行して構造解析などから耐久性予測も行い,弁の性能を向上させる.3 年後の最終年にはNORMO 弁の性能や植込手術,術後管理リスクの評価ができる拍動型シミュレータを作り上げる. B) 経皮的大動脈弁の適正な径選択と留置部位検討用シミュレータの開発:Valsalva を含む解剖学的にも力学的にも高精度のヒトの弾性大動脈弓部モデルを作り,現在,我国で臨床が開始された新型弁の適切な留置位置決めが可能となる手法の確立を行う.そして3 年後の最終年には,カルシウム沈着,小口径といったサイズ選択と高リスクに対応できるシミュレータを作り上げる. C) 生体吸収性ステントの性能評価用シミュレータの開発:まず狭窄病変や分岐モデルを高精度に製作する技術を確立し,そこでの最適ステント拡張・挿入方法を検討すると共に,3 年後の最終年には,繰り返し屈曲部に適正に留置する手法を動的に評価できるシミュレータの開発を行う.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
A) 国産人工弁の植込み手術・評価用シミュレータの開発:僧帽弁の弁輪運動,および,弁輪と乳頭筋の相対的位置関係を模擬可能な左心室モデルを製作し拍動循環シミュレータを用いて生体弁との水力学的特性比較評価試験によりNormo弁性能を検討した.その結果,Normo弁は生体弁と比較して,僧帽弁平均流量は同等,Forward flowとRegurgitationは有意に大きいこと,僧帽弁平均圧較差が有意に減少することを明らかにした. B) 経皮的大動脈弁の適正な径選択と留置部位検討用シミュレータの開発:患者CTデータを用いて患者の治療前後の弁輪面積と弁留置前後の弁輪面積が合致する術前の実形状石灰化付大動脈弁モデルを6症例製作し,拍動循環シミュレータに組込んで,流量波形から弁周囲逆流量を取得した.この逆流量は臨床におけるエコーを用いた測定結果と合致した.マイクロCTによる解析から,弁とモデル血管壁の間に大動脈側から左心室側まで連続して圧着していない非圧着逆流路が存在し,この流路の最小断面積と弁周囲逆流量が強い相関持つことを明らかにした. C) 生体吸収性ステントの性能評価用シミュレータの開発:AHA/ACC狭窄病変分類の中で,最も多くステント治療が行われている血管を想定した屈曲角度125 deg,内径3 mmのシリコーン製屈曲血管モデルを製作した.この血管モデルをローラポンプを駆動源とし,繰返し屈曲負荷に合わせて冠循環環境を創出可能な循環シミュレータに組込み,ポリ乳酸性の生体吸収性スキャフォールドに対する屈曲変形の角度変化量が破断リスクに及ぼす影響を検討した.角度変化量は125 degを基準角度とし,105から125deg(Δ20),115から125deg(Δ10),120から125deg(Δ5)の3条件で実施した.その結果,破断耐久限度はΔ5~Δ10の間にあることが示唆された.
|
Strategy for Future Research Activity |
A) 国産人工弁(ステントレス僧帽弁:NORMO弁)の植込み手術・評価用シミュレータの開発:シミュレータ利用では検証が困難なNORMO弁を乳頭筋に逢着する位置の違いが弁閉鎖時の応力分布に及ぼす影響を明らかにし,構造解析とシミュレータの併用によるNORMO弁の最適設計の科学的検証方法の提案をめざす。 B) 経皮的大動脈弁の適正な径選択と留置部位検討用シミュレータの開発:組織学的分析に基づく石灰化モデルを組み込んだ循環シミュレータに経皮的大動脈弁を挿入し,臨床ではエコーによる定性的評価にならざる負えない弁周囲逆流量を定量化し,弁周囲石灰化と弁周囲逆流量の関係を明らかにし,開発したシミュレータの有効性を検証する. C) 生体吸収性ステントの性能評価用シミュレータの開発:本年度は(a) 開発したin-vitro生体吸収性ステントの吸収・分解特性試験を引き続き実時間で実施し,開発したシミュレータの有効性と限界を明らかにする.さらに(b) 実験により得られたデータを数値構造解析に反映させ,時系列を考慮し,現場での適切な使用方法の活用に資する破断予測指標の提案に着手する.
|
Research Products
(27 results)