2015 Fiscal Year Annual Research Report
能動運動を引き出す教示支援型在宅下肢リハビリテーションシステムの開発
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15H03050
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 高志 東北大学, 医工学研究科, 教授 (90250696)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リハビリテーション工学 / 電気刺激 / 慣性センサ / 片麻痺者歩行 / 足こぎ車いす |
Outline of Annual Research Achievements |
慣性センサによる3次元運動計測法について,カルマンフィルタのパラメータを自動調整する方法を検討した結果,角速度積分による方法では,矢状面内角度の計測精度を改善できたが,クォータニオンによる方法では,大きな改善は見られなかった.しかしクォータニオン法は,健常者のトレッドミル歩行中の角度計測において,運動機能障害者に近い歩行速度で,矢状面の角度の二乗平均平方根誤差(RMSE)が概ね平均3deg以下を達成した.前額面内角度も4deg未満の平均RMSEを達成したが,被験者毎,試行毎のばらつきがあり,参照信号の座標系との不整合が影響していることを示唆する結果も得た. 上記の角度の他,臨床での評価指標を慣性センサで計測するため,回旋運動について,角速度信号への高域通過フィルタ(HPF)の適用を検討し,短距離歩行ではあるが,2~8deg程度の平均RMSEを得た.HPFは有効であるが,角速度のドリフト成分が一定しないことがばらつきの原因であることが示唆された.また,足部に装着したセンサを用いた歩行事象タイミング検出法,1歩毎のストライド長計測法を構築し,精度を検証した.これらの方法を基に,10m歩行時の平均歩行速度推定法を検討し,健常者で平均約5%以下の推定精度の達成可能性を示した.フットクリアランスについても,既存の方法を調査し,プログラム実装を進めた. 運動リハビリテーションでの電気刺激印加タイミングのデータを作成するため,健常者での歩行と足こぎ車いす走行において、筋電図と慣性センサによる運動の同時計測を行った.これらの結果から,健常者の筋活動タイミングについて,歩行事象や足こぎ車いすクランク角度との関係を明らかにした.また,機能的電気刺激(FES)により動作を補助する方法として,数回の繰り返し動作制御を行う中で電気刺激パラメータを自動設定する方法を,歩行時の下垂足矯正,足こぎ車いすのFES走行に適用可能にした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慣性センサを用いた3次元運動計測法を構築し,歩行運運動中の矢状面内と前額面内の下肢の角度を平均3~4deg程度以下のRMSEで計測できることを確認した.これにより,人の実際の運動を慣性センサで計測する場合の精度を定量的に検証でき,本計測手法をシステムへ実装し,試験に使用可能であることを確認した.しかしながら,前額面角度の計測精度にばらつきがあり,計測精度の更なる向上のためには継続した検討の必要性が課題となった. 慣性センサを用いて臨床評価指標を算出する方法として,新たに回旋運動について検討し,HPFの有効性と課題を確認した.これまでは,磁気センサを用いて誤差を補正する研究が多く,実用上の課題が大きかったが,角速度と加速度だけで計測する1つの方法を定量評価できた.この方法でも,精度の改善が望まれるので,さらなる検討が必要である.また,在宅での利用を想定した少数センサでの指標算出法として,足部に装着したセンサから歩行事象タイミング,足部角度,1歩毎のストライド長を計測する方法を構築し,一般的に利用される10m歩行時の平均歩行速度が,足部に装着したセンサから良好な精度で推定可能になることを示唆する結果を得た.フットクリアランスについても、先行研究の方法を実装し、試験できる段階になった. 電気刺激教示支援型運動リハビリテーション法を開発する上で不可欠な電気刺激印加タイミングについて,健常者の運動を目標とする方法を採用し,その運動に関する筋活動タイミングを慣性センサで検出する方法を構築できた.また,動作が十分に行えない患者のために,FESにより動作を補助する方法として,数回の繰り返し動作制御を行う中で電気刺激パラメータを自動設定する方法を実装し,歩行時の下垂足矯正と足こぎ車いすのFES走行で試験可能にした.
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Strategy for Future Research Activity |
検討した慣性センサを用いた3次元運動計測法については,比較的良好な計測精度を達成できた.また,複数種類の角度の他に歩行事象や1歩毎のストライド長,平均歩行速度などの評価指標算出法を構築でき,先行研究のクリアランス算出法を実装できた.これらの結果をもとに,それらの算出アルゴリズムを統合し,自動処理,および複数の評価指標を組み合わせた評価が可能なアプリケーションの構築を進める.なお,3次元運動計測法では,前額面内の角度の計測精度にばらつきがあり,参照信号を計測する3次元動作解析装置の座標系とセンサ座標系との不整合が影響している可能性が示唆されたので,検証方法を検討して精度を再検証することを並行して進める.また,臨床評価指標として角度を利用する場合,屈曲/伸展,内転/外転のような運動の表現での角度の他,オイラー角で計測している研究も多い.慣性センサによる3次元的運動の計測では,それらの運動と角度との対応が不明確になる場合もあり,現状では明確な説明は無いので,本研究でも検討を進める.さらに,慣性センサを用いた臨床評価指標の算出法として,回旋運動に関する指標の算出を継続して検討し,加えて,新たな評価として,大腿部センサだけでぶん回し歩行を評価する指標も検討する. 電気刺激教示支援型運動リハビリテーション法の検討を行えるようにするために,少数のセンサと小型電気刺激装置,タブレット型コンピュータで構成するプロトタイプシステムの構築を行う.ここでは,今年度の結果をもとに,足部に装着したセンサで評価する方法の検討も継続し,少数センサでの有効な評価指標算出法の構築を進める.そして,リハビリテーションにおいてFESにより動作を補助する方法として,動作制御を繰り返し行う中で電気刺激パラメータを自動設定する方法の実験的検証を行うとともに,フィードバック制御法についても検討を行う.
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Research Products
(19 results)