2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03068
|
Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
近藤 良享 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (00153734)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ドーピング防止教育 / 非RPT選手 / 学生/選手 / 無知のドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2020年東京五輪の中心選手となることが予想される学生/選手のドーピング防止教育に狙いがある。一流競技選手となるまでドーピング検査を受けない選手は、ドーピングによる競技力向上を受容あるいは無知のまま摂取・実施している可能性がある。 このため本研究は、現在はドーピング検査を受けるレベルにない学生/選手を対象にした、ドーピング防止教育の構築を目的とした。 本年度は前年度の平成26年度から28年度の3年間の調査結果を拡大して、平成20年から29年度まで(平成21、25年度除く)の8年間の結果をまとめた。総数は4,519名、男3,084名(68.2%)、女1,426名(31.6%)未記入(9名)であり、競技レベルは52.3%が全国大会レベル以上であった。ドーピング問題への関心レベルは高くなく、「非常に関心がある」と「かなり関心がある」を合わせても32%に留まる。また、「状況、条件次第でドーピングを判断すべき」との回答率は19%を超えている。ドーピングに関する情報についても、「まったくなし」と「少し」を合わせて、74%強である。サプリメントのドーピング可能性についても「可能性は小さい」と「まったくない」の回答率が25%である。高校時代のドーピング防止の情報源は、保健体育授業(44.9%)、運動部活動(13.7%)、競技・協会関係のセミナー(12%)、新聞・テレビ・雑誌(29.4%)であった。 最近の傾向は、高校保健体育の授業において「ドーピング」を扱うことが定着しつつあるようで、平成25年(40.8%)から平成29年度(49.6%)に増加している。ドーピング問題を単なる一流選手の問題とするのではなく、スポーツ参加者が遵守すべき「スポーツ倫理」を基盤とした啓蒙、教育を高校レベルまでに行うことが重要であると示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、①学生/選手のドーピング違反事例の分析、②ドーピングに関する意識調査のまとめと他国の学生/選手との比較を行うこと、③研究成果の公表することが課題であった。 最初の課題については、平成29年度、国内において2件の大学生/選手のドーピング違反が起こった。1件は外国製サプリメント使用(水泳競技)、もう1件は治療薬のTUE(治療使用特例)未申請(フェンシング競技)であった。何れも意図的ではなく、無知のドーピングと判断され、罰則が軽減されている。ただし、2人とも非RTP選手ではなく、RTP選手であり、ドーピング検査対象であることを招致している選手である。このRTP選手レベルであっても十分にドーピングの基礎知識が身についていない状況が伺えた。 2つ目の課題は、国内の調査(8年間の延べ4,519名)と国際比較をするために、ドイツのD大学の学生70名に対して、日本で経年的に実施している調査と同じ項目でアンケートを実施した。結果についての分析・考察は次年度に行う予定だが、非RTPの学生/選手との国際比較は興味深いし、各国のドーピング防止の対策、教育、啓蒙について、その現状を理解することができるだろう。 3つ目の課題については、海外研究協力者(カナダ、アメリカ)との企画内容及び日程調整が不調に終わり、学会大会へのシンポジウム申請および研究成果の公表ができなかった。カナダの研究協力者には、有名大学フットボール部員9名のドーピング違反事件、アメリカの研究協力者には国内のドーピング防止教育実践を報告してもらい、我が国の学生/選手に対するドーピング防止の教育モデルに資する企画を予定している。現在も調整を試みている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、海外の研究協力者を招聘しての国際シンポジウムを企画、実施を予定していたが、関係者間の調整が不調に終わっている。それを、再度調整して、最終年度に備える。 また、平成29年度に実施したドイツでの学生/選手らへの調査結果を分析し、加えて、他国の調査も視野に入れる予定である。我が国と他国の比較検討により、日本における学生/選手に対するドーピング防止教育のモデルを策定しようとする。特に、日本では、JADAが情報公開により平成19年度より「ドーピング検査実績報告」と「アンチ・ドーピング規則違反決定結果」を公表している。それによると、日本人選手の違反率は、0.1%(千件の検査数に対して1名の違反者)程度である。WADAが公表しているデータ(約2%)と比較すると違反者は僅少、かつ初犯で無意図ゆえの資格停止期間短縮が半数以上である。この点を踏まえると、日本におけるドーピング防止はRTP選手には徹底したセミナー、情報提供を行い、非RTP選手には、教育機関における「スポーツ倫理教育」が求められるであろう。今後は、スポーツの本質に基づくどドーピング防止のカリキュラム開発が必要である。 最終年度(平成30年度)は、3年間の研究を踏まえて、①学生/選手のドーピング防止のための諸条件、②ハイリスク群への教育・啓発対策、ローリスク群への教育・啓発対策、③各国の学生/選手へのドーピグ防止教育に関する戦略、④学生/選手のドーピング防止教育モデルなどが提案される。非RTPの学生/選手は、現行のドーピング防止運動の空白地帯でもあり、見逃されやすい。しかし、ドーピングの不祥事、事件が発生すると、所属する教育機関を巻き込む大問題に発展する。スポーツ界の社会的信用を一気に失墜させることになる。地道な継続的な研究、教育・啓発が必要とされる所以である。
|
Research Products
(3 results)