2015 Fiscal Year Annual Research Report
Convey the Lessons of Fukushima Atomic Plant Accident to the Vietnam relating with the Export of Atomic Plant
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15H03129
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
坂本 恵 福島大学, 行政政策学類, 教授 (90302314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 孝治 福島大学, 経済経営学類, 教授 (10245623)
村上 雄一 福島大学, 行政政策学類, 教授 (10302316)
伊藤 正子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20327993)
吉井 美知子 沖縄大学, 人文学部, 教授 (30535159)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原発 / 原発事故 / ベトナム / 原発輸出 / 再生可能エネルギー / 太陽光 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.福島県現地調査と安全規制基準・コストに関する専門家への集中ヒアリングを実施。原発事故・東日本大震災による福島県外への避難者は依然4万3千人にのぼり多くは児童・生徒の被ばくを懸念した「母子避難者」である。放射線量の高い地域がある福島市・郡山市の「全児童のほぼ1割が減少し」、児童の甲状腺がんは50人に上っている現状について現地で聞き取り調査を実施した。また、日本環境学会元会長、原子炉開発技術者への集中ヒアリングを実施した。 2.福島原発事故対応がままならない中での原発輸出に対し、ベトナムで実施した本研究準備調査の中でベトナム国会議員、原子力研究所元所長らから、事故原因解明を含む日本側の情報公開不足の指摘、技術・安全性への不信が表明され、福島原発事故の教訓・課題をベトナム原発輸出に活かす立場から、日越政府に責任ある共同対応を求める施策を検討する一助となった。 3.台湾、韓国との事例比較調査を継続した。 4.ベトナム国内、特に南部ホーチミン市などでの市民共同発電による再生可能エネルギー導入聞き取り調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.8-9月にハノイ市、ホーチミン市、ホイアン市で実施した行政機関、専門家・国会議員らとの懇談では、「日本と比べて原発導入後進国のベトナムで本当に安全性が確保できるのか。安全性が確保されたと言えるためには,十分な人材、工業技術、法律の枠組みが必要で、これら3つはベトナムにはいずれもない」との率直な意見表明を得た。ベトナム側関係者らからの原発導入に関するこのような率直な意見表明は事実上他の研究課題では得られていないものであり、日本ベトナム両政府への政策提言を行う上で極めて貴重な判断基準を得られたから。 2.国際連携によるベトナム側への情報伝達 このようにベトナムの一部有識者、国会関係者やニントゥアン省の先住民族チャム人有識者らの取り組みはあったものの、新規導入国となるベトナムでは原発に関する知識が広く共有されているわけではないことを本研究は、明らかにした。とくに原発の安全性や、建設・運用・廃炉に要する膨大な費用が日本の経済規模の20分の1しかないベトナム経済に及ぼす負荷、賠償法整備の必要性や避難計画策定、長期に及ぶ放射能汚染の深刻さなどについての認識はベトナム国会関係者のなかですら十分認識されていたわけではないことを解明した。このようななかで、福島原発事故を経験した日本からの情報伝達は日越両政府への政策提言上、極めて貴重であったこと。 3.日本・ベトナムにとどまらず、韓国、台湾との国際比較がさらに広い知見を提供するものとなったこと 4.日本で進む「市民共同発電」的な住民が主体となる再生可能エネルギー発電に関してホーチミン市以南での導入について、現地大学と情報交流を実施した。ハノイ市など北部の小規模発電に関しての研究は従来あったが、南部地域での可能性調査を実施したのは本研究が初めてであり、とくに発電から売電により、地域社会の貧困対策ともなることを明らかにした点は特筆に値するから。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ベトナム南部沿岸部ニントゥアン省で日本が受注した2基の原発の着工開始にあたり、現地専門家との共同現地調査を実施する。その際、漁業・農業が盛んであり、観光収入もあるこの地域への経済的影響についても検証する。その際に「日本原電」が現地で実施した、導入の適地性を調査する「FS調査(適地性調査)」は、活断層・津波被害、周辺地域の経済的影響、避難方法の検討をおこなっており、安全性の裏づけを検討する基礎資料となる。このFS調査結果を実証的に検証する日越の共同研究は、全国でも初の試みとなる。 2.現地カウンターパートナーとしては、「ダラット原子力研究所」ファム・ズイ・ヒエン元研究所長、「ベトナム国家地理学研究所」、「ベトナム社会科学院」、「ベトナム国家大学(ハノイ校)」との共同研究の準備を整えている。ベトナムは、原発導入が初めてであり、基礎研究力が乏しい。他方、日本側は地震・津波研究で最先端の知見を持っており、両国専門家の共同研究は大きな効果が期待される。日本では、「国会エネルギー調査会」提言者の原子炉専門家、ベトナム国家地質研究所との共同研究を実施した地理学研究者、予定地ニントゥアンで現地聞き取り調査を実施した伊藤正子氏(京都大学)、大島堅一氏(立命館大・原発コスト論)から最新の専門的知識の提供を得、迅速に調査を行う
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Research Products
(10 results)