2017 Fiscal Year Annual Research Report
War Tourism and Nationalism in East Asia
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15H03140
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
高山 陽子 亜細亜大学, 国際関係学部, 教授 (20447147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楊 小平 東亜大学, 人間科学部, 客員研究員 (30736260)
岡本 亮輔 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (30747952)
藤野 陽平 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (50513264)
田中 孝枝 多摩大学, グローバルスタディーズ学部, 専任講師 (50751319)
今津 敏晃 亜細亜大学, 法学部, 准教授 (60449973)
加藤 睦 (山口睦) 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (70547702)
大塚 直樹 亜細亜大学, 国際関係学部, 准教授 (80549486)
金 賢貞 亜細亜大学, 国際関係学部, 講師 (20638853)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 戦争 / ナショナリズム / 観光 / ノスタルジア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、第51回日本文化人類学会(平成29年5月27日・28日、神戸大学開催)において分科会を開催し、3月にベトナム・ホーチミン市において共同調査を実施した。 分科会は「ノスタルジアとナショナリズム:東アジアの戦争観光比較から」(代表:山口睦)というタイトルで、中国・韓国・台湾・日本の戦争観光をノスタルジアという側面から分析し、ナショナリズムの多面性を明らかにすることを目的とした。具体的には、現代の東アジア諸国における戦跡や植民地支配の遺産が観光資源として成立した過程を描き出し、そこに存在するノスタルジアとナショナリズムの動きを分析した。楊小平は、広島の原爆ドームを事例に「被害者」の語りから見る日本のナショナリズムについて考察した。金賢貞は、韓国における日本統治下の建造物からみるナショナリズムとノスタルジアについて分析した。藤野陽平は、 戦後、政治犯を収容する監獄が人権文化園区として整備されいた台湾東部の緑島の事例から、白色テロの被害者、関係者、観光客らの間で交差するノスタルジアとその敵対性を植民経験の重層性から読み解いた。山口睦は、日本の平和/戦争博物館における零戦展示から 日本における戦前へのノスタルジアを論じた。田中孝枝は、中国共産党ゆかりの地をめぐる紅色旅行(レッドツーリズム)の拠点一つである四川省震災遺跡公園から現代中国のナショナリズムを論じた。 3月は、ホーチミン博物館、ホーチミン作戦博物館、戦争証跡博物館、クチトンネルにおいて実地調査を行った。調査の過程で中国や日本、台湾との戦争展示の違いやツアーのあり方の違いを議論し、今後の検討課題を明確にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初、高山、田中(中国担当)、今津、岡本、山口(日本担当)、藤野(台湾担当)、大塚(ベトナム)の7名で開始したが、平成28年に中国と日本を比較研究する楊小平が加わり、平成29年に日本統治下の朝鮮半島を研究する金賢貞が加わったことにより、地域的にも分野的にもバランスが取れるとともに、視野が拡大した。特に外国人研究者である楊と金の視点は戦争観光におけるナショナリズムを分析する本研究に欠かせないものであり、二人の本研究への参加は当初の計画以上に大きな貢献をもたらした。それは、同郷の者でしか近寄り得ないインフォーマントへの接近によって、戦争展示にかかわる人々からの貴重な聞き取り結果を得たことである。人類学や人文地理学はフィールドワークを基盤とするが、現代社会では実地調査においてそれなりの制約もあり、外部者では聞き得ない話も少なくない。日本が関わった戦争や統治に関して、外部の調査者に何を話し、何を話さないかという点も含めて、中国人研究者と韓国人研究者の主張は重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの研究成果を論集として刊行することに重点を置く。論集の題目は『戦争と災害の保存と展示に関する比較研究:東アジアの事例から』(仮)として、2部構成とする予定である。第1部は「変わりゆく展示」として戦争博物館の展示の変遷に着目する。第2部は「展示からダークツーリズムへ」として戦争遺産がどのようにダークツーリズムの資源となるかを解明する。 第1部の戦争の展示の変化については、①戦争の語り(解釈)の多様化と②展示手法の多様化から分析する。体制転換やグローバル化とともに第二次世界大戦の語り(解釈)は変わり続けている。かつてはタブーであった展示が可能になった例や、反対にかつては問題視されなかった展示が変更を余儀なくされる例がある。個々の事例から展示の変更理由を分析し、東アジアにおける戦争の展示と語りの共通性と多様性を明らかにする。第二の展示手法の多様化は、IT技術の向上に起因するものである。各地で映像や精巧なレプリカが増加し、それを好む観光客も増えている。その理由は、スマートフォンの普及により、インターネット上にアップして映えるもの(いわゆる「インスタ映え」)が好まれる傾向が強いためである。戦争というダークな内容のものであっても、一度カメラに収められてしまえばそれはもはやダークなものではなくなる場合もある。こうしたものの見方が戦争の展示や語りにどのような影響を与えているかを明らかにする。
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Research Products
(46 results)