2017 Fiscal Year Annual Research Report
Philosophy of "mind and Society" through Making Robots with Personality
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15H03151
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柴田 正良 金沢大学, その他部局等, その他 (20201543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長滝 祥司 中京大学, 国際教養学部, 教授 (40288436)
大平 英樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90221837)
金野 武司 金沢工業大学, 工学部, 講師 (50537058)
橋本 敬 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90313709)
柏端 達也 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (80263193)
三浦 俊彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10219587)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ロボットの個性 / 人間の進化における個性の役割 / 人とロボットのインタラクション / 倫理的行為者としてのロボット / 個性と倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、その核心のみを述べれば、(1)ロボットと人をインタラクションさせることによって、来るべき「ロボットと人間の共生社会」において重要となる「個性」がロボットにとってなぜ必要となるのかを認知哲学的に解明し、また、(2)その結果を「個性」に関する哲学的なテーゼとして提示するとともに、(3)そのテーゼに経験的な支持を与えることを目的とした、人とロボットのインタラクション実験を設計・実施することである。 まず、われわれが今年度に到達した個性概念テーゼは、「ロボットが<個性>をもつとは、それが<道徳的な行為主体 moral agent>だということであり、道徳的行為主体であるとは、他の何者も代替できない責任を引き受けるということであり、そのためにロボットは、他者が経験しえない(クオリア世界のような)内面世界をもたねばならない」、ということである。 われわれは、このテーゼを、本研究の最も重要な哲学的成果だと考える。このテーゼはロボットに適用可能であるばかりか、「道徳」、「責任」、「クオリア」、「内面世界」、「主観性」といった従来の道徳哲学や心の哲学、ひいては認知心理学全般に大きな視点の転換をもたらすものと考えている。 このテーゼを経験科学的に「確証」するために、われわれは、今年度、人とロボットをメインとするインタラクション実験を設計し、このテーゼと実験の「概要」を、平成29年7月にロンドンで開催された国際認知科学会(CogSci2017)で発表した。この実験に関しては、今年度においては数回の予備実験と、それによる実験手順の調整をおこなったにすぎないが、来年度の本格実験のためのほぼ完璧な準備を終えることができた。この実験は、最近、心理学や認知科学の分野で頻繁に取り上げられている「トロッコ問題」などの道徳的ジレンマに、まったく新しい光を投げかけるものとなるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の「研究実績の概要」ですでに述べたように、われわれは、当初の目的の第一に掲げた「新たな個性概念」の構築に成功した。この概念は、従来、通俗科学的に通用していた、「見た目や動き方といった他と差別化できる性質」という「貧弱な概念」ではなく、「代替不可能性」、「責任」、「内面世界」、「道徳的行為主体」といった概念と密接に関わる哲学的・認知科学的・道徳的な「豊かな概念」である。まず、このように他の研究領域、他の実践分野に応用可能な分析道具としての概念(個性概念)をアカデミア一般に提示できたことは、われわれの研究が「当初の計画以上に進展している」ことの一つの根拠であると考える。 第二に、われわれの個性概念テーゼを経験科学的に「確証」することは、通常、きわめて困難であるが、われわれは、人とロボットとのある種のインタラクション実験を設計することによって、この難題を克服できたと考えている。これが、われわれの研究が「当初の計画以上に進展している」と判断したもう一つの理由である。 このインタラクション実験はロボットに身体的同調動作をさせるものであるが、たとえ、その結果が、「ロボットが自律的なターンテイクを生起させることのできる内部メカニズムを持つ場合には、道徳的ジレンマの状況で、われわれは道徳性を帰属できる相手としてロボットを扱うことになる」、というわれわれの予想を裏切るものであったとしても、その詳細な分析は、必ずや、個性や道徳に関するさらに深い洞察へと人々を導くものとなるだろう。われわれは、この点でも、自分たちの研究の進捗状況を「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度、平成30年度は本研究課題の最終年度である。したがって、それを推進し、目的を達するために行うことは、今年度に設計した「人とロボットのインタラクション実験」の具体的で、検証可能な実施である。そのために、分担者、金野(金沢工大)の下に全員が結集し、8月末まで集中的に実験を繰り返す。実験の準備は、ロンドンでの国際学会発表以後、すでに十分におこなってきており、ロンドンでの聴衆の「道徳性との関係」に関する期待に応えられるものと自負している。 もう少し具体的に言えば、われわれは今後、「人は、ロボットとの身体的な同調行動を通じて、そのロボットに内面を帰属させたり、そのロボットを道徳主体とみなすようになる」という仮説を経験的に検討する。そのために、われわれは「身体調整運動タスク」を考案し、それを実行するための実験環境を構築する。その際、被験者はハンドルを人間またはロボットとともに回す運動を行う。2つのハンドルは独立に回すことができ、被験者には、適宜逆回転するように指示する。相互作用する相手が人間の場合は対面と背面の2条件,ロボットの場合には相手の動きに合わせる適応的なアルゴリズムと、独立の回転運動との2条件で実験を行う。実験のポイントは、同調行動の後で被験者に課す「そのロボット」を相手とした道徳的ジレンマ課題に対する「その被験者」の反応にある。 われわれはこの実験の結果を、Society for Social Studies of Science, Sydney(アブストラクトはアクセプト済み)、及び XIX International Conference on Human-Computer Interaction, Palma (Spain) で発表し、さらに、Science and Engineering Ethics 誌に論文として掲載することを目指す。
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Research Products
(43 results)