2015 Fiscal Year Annual Research Report
インド仏教論理学の東アジア世界における受容と展開――因明学の再評価を目指して
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15H03155
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
護山 真也 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60467199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲見 正浩 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70201936)
師 茂樹 花園大学, 文学部, 教授 (70351294)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 因明 / 仏教論理学 / 過類 / ディグナーガ / 玄奘 / 護法 / 基 / 因明入正理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
東アジアの知的遺産である因名学をインド仏教認識論・論理学研究との連携の上で再評価することを目指す本研究は、年度内に2回開催された研究会を中心として、以下の実績を挙げた。 1. 『因明入正理論』(Nyayapravesaka)については、ジャイナ教徒による注釈文献のデータベースの構築が進められるとともに(稲見)、基の『因明入正理論疏』の解読研究が継続されている(護山)。一方、『因明正理門論』については、聖語蔵の中に師が発見した沙門宗『因明正理門論注』が散逸した古注の情報を含む貴重な資料であることが判明した。今年度は、この資料が扱う「過類」(ジャーティ)の箇所を精読し、さらにジネーンドラブッディの注釈から再構築される『正理門論』梵文とその注釈と比較検討することにも着手した。また、印度学仏教学会第66回学術大会において「過類をめぐって」のパネルを企画し、小野・室屋・渡辺の各氏による発表が行われた。 2. これら因明学の基礎となる資料をもたらした玄奘とその弟子である基の思想形成に影響を及ぼしたと考えられる護法の教学についても考察が加えられた。特に、これまで研究が遅れていた『唯識二十論宝生論』と基の『二十論述記』の記述を「他心知」が扱われる最終部に限定して比較検討し、有形象認識論の形成とその受容の問題が指摘された。 3. 日本における因明研究の歴史を振り返り、特に明治期に大西祝等により西洋哲学・論理学が紹介される際に、江戸期までの因明研究の素地が有効に機能したこと、宇井伯寿等の近代仏教学の確立により、梵語原典による研究が進む中で、その伝統が失われてゆく受容史が明らかにされた。 4. インド仏教論理学研究の最前線を知るために、ライプチヒ大学を訪問し、新出梵語仏典である『量評釈荘厳』に対するヤマーリ注のテキスト校訂に立ち会い、インド仏教論理学における解釈作法の議論を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基礎作業となる『因明入正理論』・『因明正理門論』それぞれの漢訳テキストとその注釈、そして関連するサンスクリット語資料の解読は予定通りに進められている。 また、二回の研究会を通して、それぞれの解読の成果がつきあわされることで、特に『因明正理門論』「過類」の箇所については総合的な理解を得ることができている。 当初は、国際ワークショップも開催する予定であったが、それに代わり、台湾の国立政治大学での国際ワークショップに参加することで、台湾・中国・欧米の研究者との意見交換を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎作業を継続しつつ、定期的に研究会を開催する。また、国際ワークショップや国際学会でのパネル発表を企画し、その準備を進めてゆく。同時に、成果を公開するための準備も進める。
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Research Products
(13 results)