2015 Fiscal Year Annual Research Report
ラトナーカラシャーンティの『般若波羅蜜多論』新出梵語テキストの研究
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15H03159
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
桂 紹隆 龍谷大学, その他部局等, 研究員 (50097903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能仁 正顕 龍谷大学, 文学部, 教授 (70290210)
吉田 哲 龍谷大学, 経済学部, 講師 (00644080)
片岡 啓 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (60334273)
護山 真也 信州大学, 人文学部, 准教授 (60467199)
志賀 浄邦 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (60440872)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ラトナーカラシャーンティ / 般若波羅蜜多論 / 後期インド仏教思想史 / 中観派と瑜伽行派 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インド仏教最後期において顕教と密教に通じた大学者、ラトナーカラシャーンティの唯識学綱要書『般若波羅蜜多論』の新出梵語テキストを研究することにより後期インド仏教の実相を明らかにすることである。中国蔵学研究中心の羅鴻博士から提供された梵語校訂テキストをインド仏教・インド哲学の様々な研究分野に通じた複数の研究者が共同研究することにより、同書の可能な限り正確な和訳と詳細な注釈を作成し、公表することを目指している。 本年度は、学期中の隔週に定期研究会、8月と3月の長期休暇中にそれぞれ3日間の集中研究会を開催した。予定通りフォリオ5~8までの翻訳研究を終えた。研究会のための試訳と関連資料の収集は、研究協力者の早島慧・西山亮・間中充・桑月一仁・Vo Thi Van Anh・道元大成氏が準備し、研究会でそれを検討・修正した後は、研究代表者が暫定的な和訳を完成した。集中研究会においては、研究分担者の片岡啓・志賀浄邦・護山真也・吉田哲氏、研究協力者の酒井真道・松岡寛子氏が、『般若波羅蜜多論』に関連する、それぞれの最新の研究成果を発表した。 10月に、研究代表者は吉田哲氏とともに、オーストリア科学アカデミーとウィーン大学を訪問し、仏教認識論・論理学研究の世界的権威であるエルンスト・シュタインケルナー教授をはじめとするスタッフから本研究のレビューを受けると同時に、8世紀の重要な仏教論理学者であるジネーンドラブッディに関するワークショップを開催し、研究発表した。 今回読了した箇所からは、インド仏教後期における瑜伽行派と中観派の有相派・無相派などの分派に関する正確な情報が明らかになったのが最大の収穫であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『般若波羅蜜多論』の和訳と訳注の作成に関しては、計画通りに進捗している。また、年二回の集中研究会で本研究参加者の最新の研究成果を交換することが出来、大変有意義であった。ウィーンのシュタインケルナー教授によるレビューと彼の地の研究者との学術交流も予定通り行うことができた。 ハワイ大学のアリンダム教授を招聘して、本研究のテーマに沿った学術交流する予定であったが、彼の個人的事情により実現しなかったのは残念であった。しかし、それ以外の研究計画はすべて遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も『般若波羅蜜多論』の読解のための定例研究会と集中研究会は継続して行う。さらに、5月28日ー29日に龍谷大学で「清弁と二諦」をテーマとする国際ワークショップを開催する。さらに、9月-10月には、『般若波羅蜜多論』の梵語テキストの校訂者である中国蔵学研究中心の羅鴻博士を招聘して、最終的な梵語テキストの校訂作成の為の共同研究を行う。 来年度の8月トロント大学で開催される国際仏教学会のパネルに「般若波羅蜜多論の新研究」というテーマで申請したところ採択されたので、来年度は研究代表者と研究分担者2名、研究協力者2名、そして羅博士の6人でパネル発表を行う予定である。
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Research Products
(17 results)