2015 Fiscal Year Annual Research Report
幸福、存続、ウェル‐ビーイングの思想基盤:功利主義の射程と得失をめぐる国際的研究
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15H03164
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
深貝 保則 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (00165242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 和信 慶應義塾大学, 商学部 (日吉), 教授 (30198387)
森村 進 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (40134431)
高橋 久一郎 千葉大学, 普遍教育センター, 教授 (60197134)
山崎 聡 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (80323905)
小畑 俊太郎 成蹊大学, 法学部, 助教 (80423820)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ウェル‐ビーイング / 幸福 / 存続 / 功利主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の3つの軸のうち (1)「徳の倫理学と功利主義、幸福観」、(2)「ウェル‐ビーイングの社会的スキームと幸福および自由」を中心に進め、欧米の研究者の参加を求めてワークショップを開催した。(1) に関わって幸福の倫理を論じている Chris Heathwood (Colorado - Denver, USA) 、 (2) に関わって、功利主義研究をベースに置きつつ Nudge の検討にも射程を伸ばしている Malik Bozzo-Rey (Lille, France) の両名を招いて、研究組織メンバーのほか関連領域の中堅・若手の研究者も加わって議論する機会を設けた。Workshop on Happiness, Well-being and Unrest のほか、若手研究者向けのワークショップなどの形で実施したものである。 この研究課題にとって第1に、旧来の人文知、社会哲学のあいだでそれぞれに細分化された状況を超え、横断的に議論することが重要である。第2に、思想史的な文献研究と問題解釈とのあいだの重層的な往復が必要となる。第1の面では研究組織メンバーを狭義にいえば西欧古典哲学、倫理学、法哲学、政治思想史、経済哲学、経済思想史それぞれの領域のメンバーから構成することによって横断を試みているが、これは1994年および2014年に日本で開催した国際功利主義学会大会などの蓄積からの発展である。上記ワークショップは、海外研究者の参加を得て横断的議論を少人数で緻密に行なう絶好の機会となった。第2の側面では、近年急速に展開しつつある古典的文献のデジタル化を活かす方策を検討した。日本18世紀学会大会でミニ・シンポジウムを設定し、また国立情報学研究所の公募型共同研究のプロジェクトと連動させてオランダからの研究者招聘を含むシンポジウムを開催したのが、その具体化である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年12月後半から2016年2月にかけて、研究代表者がフランスおよびイギリスに研究打合せで出張を行なったうえで両国から2名の研究者を招いてワークショップを開催する予定であった。ところが2015年11月中旬にパリで大規模な同時テロ事件が発生したため、安全を考慮して訪問予定を取りやめ、併せ招聘の計画を延期することとした。そこで当該年度の直接経費のうち一部について、繰越金としての手続きをとった。 繰越金相当分についてまず、2016年6月にこの研究課題ときわめて関連の深い学会がフランスで開催されたので、当初の派遣による研究打合せを当該学会への参加に合わせて行なうこととした。また、イギリスから招聘予定であった研究者は他の機関の予算により2016年5月に来日する機会があったので、その際に打合せを行なった。共同ワークショップのための招聘はもともとフランスおよびイギリスから1名ずつの予定であったが、これを受けて変更し、フランスおよびアメリカから1名ずつの招聘の形として2016年12月に実施した。 これら一連の事情により招聘によるワークショップの実施日程が2016年2月の当初設定であったものが2016年12月になってしまい、関連していくつかのスケジュール上の遅延が生じることとなった。その反面、招聘すべき研究者について内容面ではバランスを維持しつつ、従来は議論する機会を持てなかったアメリカからの研究者1名と緻密な議論をすることができた。なお、これらの事情による計画の遅延については2016年度の実施計画と関連づけて進めることで調整を施した。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】の欄に記載のように、2015年11月のフランスにおける同時テロの影響で実施のタイム・スケジュールに変更が生じた。このため、国際功利主義学会の2016年大会の主催者の Malik Bozzo-Rey を招いたうえで、共同研究の重要な担い手として加わっていただくという措置を施した。中身のうえでは従来の関連研究者のネットワークが活かされるが、具体的な進展を図るうえでは、とくにこの研究者の協力を得ることが有効と判断したためである。 国内の研究組織メンバーのあいだでの議論は2016年度の計画のなかで進展を行なっているが、国際的な研究展開のうえでは、Bozzo-Rey とも協力して2018年大会(ドイツ)へのセッション提案という設定も活用して進展を図る。
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Research Products
(16 results)