2016 Fiscal Year Annual Research Report
真言密教寺院の史料調査に基づく分野横断的綜合研究―新たな仏教思想史の枠組を求めて
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15H03165
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上島 享 京都大学, 文学研究科, 教授 (60285244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 常人 京都大学, 工学研究科, 教授 (00142018)
蓑輪 顕量 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30261134)
佐藤 愛弓 天理大学, 文学部, 准教授 (50460655)
皿井 舞 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化財情報資料部, 主任研究員 (80392546)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本史 / 日本思想史 / 日本仏教史 / 真言密教史 / 寺院経蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、真言密教拠点寺院における史料調査を基盤にした着実な実証的研究を踏まえ、諸分野の研究者による綜合的研究を進め、最終的には新たな仏教思想史研究の枠組の構築を目指そうとするものである。2年目の今年度は、研究実施計画にもとづき下記のことを行った。 (1)5月に研究組織全体による打ち合わせ会議を行い、本年度の目標と調査・研究計画を確定した。(2)研究代表者による真言密教史の著書を完成させるべく、特に顕教と密教との交流、密教と神仏習合に関する考察を重点的に進め、その研究成果の一部は6月3日のシンポジウム「南都学・北嶺学の構築に向けて―論義と儀礼―」、3月4日に仏教史学会シンポジウム「日本とアジアの神仏の融合の諸相」で講演・報告を行った。(3)研究分担者は思想史・文学・建築史・美術史の分野で真言密教・密教法会に関する調査・研究を進めた。(4)勧修寺聖教・文書、安楽寿院文書、仁和寺聖教の調査を定期的に行い、各史料の目録作成などの基礎的作業を行うとともに、各経蔵が持つ特質の解明を進めた。これらの調査成果に基づき、17年3月に勧修寺文書が国の重要文化財に指定されることとなった。(5)a本研究組織に外部研究者も加えて、京都大学にて、11月13日に国際研究集会「仏教・道教儀礼の伝播と変遷」を実施し、台湾・中国・アメリカの研究者も参加し、広い視野から総合的な仏教思想史像の構築に向けた議論を行った。b人文知の再構築に向けた研究を進め、研究代表者は3月11日にシンポジウム「史学科の比較史 ―草創期から1945年―」にて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は4年間の計画の2年目で、本年度の研究実施計画にしたがって研究・調査を進めた。その状況は着実かつ順調に進展しているといえる。具体的な進捗状況は「研究実績の概要」の通りであるが、本年度も本科研の主催で国際研究集会を実施できたことは重要な成果である。昨年度実施の国際研究集会「法会と空間」での成果と課題を引きつぎ、道教を含めた広い視野から東アジアの仏教について議論できたことは、日本の密教の位置づけを考察する上で、重要なきっかけを得た。そこでの課題を踏まえて、研究代表者は「神勧請儀礼の歴史的変遷 ―インド・中国・日本―」を発表した。また、上述のごとく、本科研の調査成果に基づき、勧修寺文書が国の重要文化財に指定されたことは大きな社会的貢献と判断する。以上より、「おおむね順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、研究はおおむね順調に進展しており、4年間の最終的な目標を達成すべく、着実に研究・調査を進めていきたい。本科研の成果の多くは未だ研究発表の段階だが、完成度を高めて、順次、活字化していきたい。また、本科研主催の研究会等を実施し、研究組織外部の研究者にも成果を発信し共有していきたい。さらに、海外の研究者との交流もより積極的に進めたい。
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Research Products
(10 results)