2016 Fiscal Year Annual Research Report
幕末近代の商家が伝えた文化財の総合調査:貝塚廣海惣太郎家コレクション
Project/Area Number |
15H03172
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
永島 明子 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部列品管理室, 主任研究員 (90321554)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化財 / 美術史 / 工芸史 / 土蔵 / 商家 / 廻船問屋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は延べ114日間、学生アルバイトや美術輸送会社の作業員を含めた述べ245人を動員し、絵画23件の調査と69カットのメモ撮影、書跡30点の調査と60カットのメモ撮影、彫刻3件の調査と39カットのメモ撮影、金工25件の調査と25カットのメモ撮影、陶磁182件の調査と910カットのメモ撮影、漆工・木竹工143件と1110カットのメモ撮影、染織15件の調査と417カットのメモ撮影が実施され、土蔵の環境調査も継続された。このうち、絵画2件、書跡1件、彫刻1件、陶磁142件、漆工・木竹工7件、染織3件、歴史4件の計160件の収蔵品と、京都国立博物館の教育事業や茶会等のイベントで用いる7件の備品が同館へ寄贈された。 本プロジェクトは、科学研究費補助金の継続が予定されている来年度までに調査と寄贈手続きを終え、寄贈顕彰を兼ねた展覧会を開催して一般社会に還元するところまでを目標とする。そのために、これまでに受贈した作品の図録用撮影を開始し、58件193カットを整備した。また、展覧会の予告と調査の中間報告を兼ねて、一般来館者向きの講座「廻船問屋の土蔵が伝える木・竹・漆の文化財」を開き、昨年度までに寄贈いただいた作品の一部を特集陳列「生誕300年 伊藤若冲」や平常展「香りの調度」で展示した。 本年度は近世・近代の商家において、中国磁器が数十人前、数百人前という数で所蔵されていたことが明白となり、商家に伝わる例の多い南蛮屏風も寄贈され、商家の暮らしの豊かさがいよいよ具体的に示されたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分野によっては調査が遅れ気味のところもあるが、全体としては最終年度の展覧会にむけた調査や寄贈は、おおむね順調に推移しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、書跡・陶磁・染織・金工の調査と寄贈を進め、すでに800点を超えている全分野の寄贈品から出陳作品を選定し、展覧会の構成を考え、図録用の撮影を行い、広く一般市民に幕末明治期の商家の暮らしを紹介できるよう、周辺情報も収集する予定である。 問題点としては、昨年度同様、調査主体たる研究者の人事異動があり、一貫した視点を引き継ぐことの困難から、非効率かつ研究者に負担を強いる状況があることである。時間が余計にかかり、所蔵者にも心配と迷惑をかけているが、来年度中に調査を完遂できるよう、研究員同士で連携してこの状況を乗り越えていきたい。
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Remarks |
本年度の実績にも記したとおり、京都国立博物館における一般来館者向きの講座「廻船問屋の土蔵が伝える木・竹・漆の文化財」を開き、昨年度までに寄贈された作品の一部を特集陳列「生誕300年 伊藤若冲」や平常展「香りの調度」で展示した。
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