2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03177
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Research Institution | Aichi University of the Arts |
Principal Investigator |
岩永 てるみ 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (80345347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北田 克己 愛知県立芸術大学, 美術学部, 教授 (50242251)
河内 将芳 奈良大学, 文学部, 教授 (40340525)
山田 真澄 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (60726454)
龍澤 彩 金城学院大学, 文学部, 教授 (00342676)
阪野 智啓 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (00713679)
本田 光子 愛知県立芸術大学, 美術学部, 講師 (80631126)
瀬谷 愛 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (50555133)
安井 彩子 愛知県立芸術大学, 美術学部, 非常勤講師 (30750244)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 復元研究 / 室町絵画 / 月次祭礼図 / 金属箔 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は東京国立博物館所蔵の「月次祭礼図模本」について、技法・歴史・美術史・材料の各分野からの専門知識や研究成果を総合して、原本の図像復元を行うものである。本図に描かれる雲形表現や江戸時代の狩野派により模本が作成されたことで、狩野派による洛中洛外図の原形と考えられる事が多かったが、研究を進めることで本図の表現は洛中洛外図などで観られる金雲や空間表現とは全く異なる土佐派による室町時代特有の絵画表現が施された作品であることが推測される。根本理解には復元的考察が不可欠であることより、失われた原本図像を復元し、その過程で得られる各分野の研究成果を集約することで、中世と近世の狭間にある本図の表現や成立背景について解明を試みる。 28年度は数回の学内研究会においてこれまでの研究成果を総合し、復元案をとりまとめ、実際に復元画の制作に着手し進めた。学内研究会以外にも10月には京都文化博物館での合同研究会において検討を行うことで、これまで不明だった図像についても再現を行うことが可能となった。中でも金雲と共に霞表現が作品全体の空間の見え方に大きく影響することより、雲と霞の重なり方や、金、銀箔の蒔き方のバランス、霞の色味の選択や彩色の程度などは念入りに検討を行った。CG案の作成と共に室町時代日本画研究の専門家にも意見を仰ぎ、模写制作者それぞれが室町時代独特の美的観念の理解と同時認識に努め、より当時の絵画に近付けるように作画作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では彩色に入るところまでが平成28年度の目標であったが、彩色については広範囲の山や川などの水表現、建物や祇園祭、人物の一部まで進むことが出来たのでほぼ予定通り、または予定以上の進捗となっている。研究最終年には祭事などの細部表現や彩色も全て決定し、作画を完了しなければならず、完了までの検討課題は現状では多少残るが、28年度中に予定通りに進行出来たことで課題が明確となり29年度の研究に繋がっている。 復元図の制作については、1~4扇(的始、賀茂祭礼)を岩永・阪野・中神が、5~6扇(祇園会)については岩永・安井・中神が中心となって進め、金雲試作、絵画材料の検討、雲形表現の検討の各課題について担当を決め並行して行い、再現模写制作は次の手順で進めた。①本紙紙継ぎの寸法を検討し、雁皮紙を紙継ぎし、裏打ちを行い本紙の準備を完了した。②本紙をパネルに張り込み、雲母下地を塗布した。③東京国立博物館より借用した原寸大資料の上に原本調査時に撮影した詳細な画像を重ね原寸大の下図を作成。④上記①の資料の上に一旦パネルより剥がした本紙を重ね、ライトテーブルで下図を透かしながら墨線を描き起こす。金雲形の形取りや欠損など不明な個所の再現も同時に行う。⑤墨線描画が完成した後に再度パネルに張り込む。⑥金雲型内に蒔く金箔と銀箔切りを京都造形大学にて製作を進め、完成した金、銀切箔を雲形内に布海苔と膠を接着剤として蒔く。⑦金雲の完成後、ロール石州紙で面蓋を施す。⑧模本に指示のある色のうち、まずは広範囲に広がる遠景の山より彩色を進めた。 復元画制作過程においても作画研究担当の組織で確認を行いながら進めていき、問題点や課題を共有するように努めた。3月の段階で部分的にではあるが彩色に入れたことは、今後の彩色表現の細部を検討する上でも妥当な進行となった。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は3か年の最終研究年になるため、不明な個所の復元を全て解明し、復元図の彩色作業を終える予定である。作画作業にあたっては、①模本に書かれている色指定箇所の彩色を全て完了する。②(7月頃)この段階で東博新収蔵の「年中行事図屏風」の特別観覧、調査を行う機会に東京国立博物館で合同研究会を開催し、不明な彩色箇所を絵画としてのバランスや美術史的な視野、祭事といった決まり事など複合的に検討し、決定する。③合同研究会での検討結果をふまえ、模本より想定可能な箇所の彩色を完了する。④彩色を全て完了した後に最終の合同研究会を開催し、全体的な仕上がりについて最終確認と今後の表具について検討決定を行う。また、今後の報告書作成、報告会についても検討決定する。
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