2018 Fiscal Year Annual Research Report
伊勢商人の文化的ネットワークの研究――石水博物館所蔵書簡資料をもとに
Project/Area Number |
15H03183
|
Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
青山 英正 明星大学, 人文学部, 教授 (10513814)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菱岡 憲司 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (10548720)
早川 由美 奈良女子大学, 大学院人間文化研究科, 博士研究員 (30745310)
神谷 勝広 同志社大学, 文学部, 教授 (40233952)
浦野 綾子 皇學館大学, 研究開発推進センター, 助教 (30825774)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 近世文学 / 伊勢商人 / 書簡 / 書物文化 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
書簡約4,300点全ての撮影を終え、画像データに不備があるものについては再撮影をおこなった。また、目録データの確認作業も3月末までに約1,500点ほど進めた。 書簡翻刻は、小津桂窓166点、高畠式部23点、正住弘美17点は読み合わせによる確認を終えた。竹内弥左衛門92点は翻刻を終え、読み合わせによる確認作業中である。城戸市右衛門132点、岡田屋嘉七60点も一通り翻刻を終えた。 研究成果としては、青山英正「伊勢商人川喜田石水の蔵書形成と京都の書肆城戸市右衛門の営業活動――石水博物館所蔵書簡をめぐって」(口頭発表、第17回幕末明治研究会、於明星大学、2018年12月8日)、神谷勝広「晩年の三代豊国―書簡に注目して―」(『浮世絵芸術』177号、2019年1月)、早川由美「川喜田潭空をめぐる嵯峨野文化圏―馬杉亨安等書簡と小沢蘆庵自筆六帖詠藻を手がかりに―」(東海近世文学会例会、於熱田神宮文化殿、 2018年9月8日)、菱岡憲司・村上義明・吉田宰編『小津久足資料集』(雅俗の会、2019年3月)などがある。 こうした作業と成果を通じて明らかになったのは、近世後期の伊勢において、和学、茶、本草学、御師などのネットワークが縦横に交錯していたという点である。川喜田家のような伊勢商人は、伊勢の局所的なネットワークに接続する一方、江戸や上方とも文化的、商業的関係を保つことで、三都をハブとする広域ネットワークとも接続していた。つまり彼らは、伊勢の局所的ネットワークと、三都を含めた広域ネットワークとを中継し、その複合的ネットワークを通じて蓄積された知・財・情報によって、さらに新たなネットワーク生成をもたらすなど、近世後期文化における「インフルエンサー」としての役割を果たしていたと見ることが出来る。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた撮影を全て終え、本格的に書簡の翻刻と内容の検討をおこなったことにより、書肆や同好の士などとの間の、書簡ならではの生々しいやり取りを含む具体的な交流の様子が見えてきた。たとえば、川喜田遠里が、小津桂窓のような伊勢の読書家仲間との情報交換によって書物の情報を得、それに基づいて江戸や京都の書肆へ発注し、書肆がそれを入手して遠里へ納品し、それがまた伊勢の読書家たちに回覧されるといった、書物流通の全体像が、当初の想定以上に具体的に見えてきたのである。 また、差出人の検討も進めたことにより、茶・和学・漢学・俳諧・本草など、分野が多岐にわたっていたことも明らかとなった。そして、たとえば本草学で知られる山本榕室が京都の公家の短冊を川喜田家に仲介していた事実など、近世後期の日本文化が分野横断的であったことが改めて具体的に浮き彫りになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
5月末までに、画像の確認と目録データの確認をおこなう。その後、11月頃までに、目録の体裁統一と最終確認をおこなう。 成果報告書は、メンバー各自がそれぞれ取り組んできた課題について執筆し、目録と合わせて年度末までに刊行する。 書簡の読み合わせのための研究会は、月1回(2~3日)のペースで、主に同志社大学で開催する。対象は、一通り翻刻を終えた竹内弥左衛門、岡田屋嘉七、城戸市右衛門等を予定している。 2020年2月~4月に、石水博物館にて成果報告を兼ねた展覧会を開催する。研究会の際には、その展覧会の企画や資料の選定等についての協議もおこなう。
|
Research Products
(7 results)