2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03185
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
黒田 彰 佛教大学, 文学部, 教授 (80178136)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 幼学書 / 孝子伝(図) / 列女伝(図) / 武梁祠画象石 / 舜図 / 董黯図 / 魯秋胡子図 / 開封白沙鎮後漢画象石 |
Outline of Annual Research Achievements |
八月に中国山東省、山西省、深セン市の武氏祠始めとする調査を実施、孝子伝図、列女伝図、竹林七賢図などの図像資料の原石を実見し、写真・拓本・関連文献等の収集に当たった。同時に、尭・舜・禹等五帝伝説の故地、申生伝承の遺跡も踏破、テキストと伝承発祥地の地理的・歴史的考察を行った(成果は後掲「武梁祠帝舜図攷」を参照)。 深セン市の呉強華氏藏北魏孝子伝図資料については、八月に次ぎ、九月、十一月にも追跡調査を実施、先に報告した郭巨図を含む北魏石床脚部(黒田「郭巨図攷」、『佛教大学文学部論集』98、平成26年)に続き、テキ門生石床、二枚石床、臨深履氷石床、二枚石床の連れの囲屏一枚などの原石を追加調査、その内の二枚石床については、28年3月に成果を報告できた(後述「董黯図攷」参照)。また、南京博物院の新出後漢画象石の原石(列女伝の魯秋胡子図が描かれる)が、初めて展示されたため(特別展「南腔北調―伝統芸術展」2015・10・30~2016春節)本年一月に急遽南京を訪れ、その原石・拓本や関連資料を入手、近く成果を報告する。その折、南京市西善橋出土の七賢図原石のみならず、六朝芸術博物館蔵の錯版七賢図原石をも実見、現地の研究機関よりその他の七賢図の情報が得られたことは、今後の研究にとって大きな成果となった。 なお、前回科研の課題として、遅延していた『和林格爾漢墓壁画孝子伝図模写図輯録』(内蒙古文物考古研究所、幼学の会、内蒙古博物院編)の公刊が2014年に実現したことを付記する(中国国内版が2015年刊行された)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載した、1孝子伝図、列女伝図の研究、2孝子伝の研究、3海外の幼学研究との連携、4古代幼学書の開拓、の四課題について、現在までの進捗状況を簡単に報告する。 1は、幼学の会として継続的に取り組む武梁祠画象石(北魏司馬金竜墓出土木板漆画屏風)の解読が二読目に入り、順調に進捗している。基礎読解を目的とした一読に対し、最新の情報の反映と内容の深化を目差す二読目は、従来にない学際的視点が要求されるため、各図像の総合的点検が欠かせない。本年度の研究成果欄に記した「武梁祠帝舜図攷」や「董黯図攷」は、そのことを具体的に明らかにする。また「開封白沙鎮出土後漢画象石の研究」は、3の一環ではあるが、2に基づき、武梁祠のケイ渠図、超苟図、原谷図などに関する、従来にない発見と知見を盛り込む。さらに列女伝図の研究としては、新出南京博物院蔵後漢画象石の資料収集が叶い、その成果報告が近く公刊される。 3は、「董黯図攷」として、呉氏藏北魏石床(二面)の紹介論文を公刊したが、その連れの一枚の石床が出現し、引き続き呉氏との連携の下、その報告を近く予定する。 山崎誠氏による『華北訪古誌抄訳』は、これまで本邦未紹介のシャヴァンヌの仕事を本格的に紹介するもので、邦訳に加えた全図版の公刊の意義は大きい。 4については、例えば平家物語における、我が国の幼学書受容をさらに具体的に論じたものとして、「祇園精舎の鐘攷(序章)」、「崑崙与獅子」の二編があげられる(後者は、黒田「崑崙と獅子」〈『京都語文』2014.11〉の中国語訳版である)。また「石清水八幡宮本八幡縁起」の公刊も4の一環であることは言うまでもない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、未開拓の領域であるため、まだまだ資料蒐集が欠かせない。例えば本年度に判明した南京博物院蔵後漢画象石の列女伝図(魯秋胡子図)のことは、先にも触れた通りだが、その他に、ジゼル・クロエ旧蔵の北斉孝子伝図石床の出現や、武梁祠帝禹図の諸資料の現存、また、列女伝図の梁高行図の相次ぐ発見など、しばらくはそれらの資料の蒐集と整理がどうしても必要となる。 加えて、前述開封白沙鎮出土後漢画象石の原石は、従来全く行方が分からなかったが、実はそれがボストン美術館に収蔵されていたことが、研究協力者キース・ナップ氏により報告された。 そこで次年度以降、呉氏藏北魏石床の連れの一面や、開封白沙鎮出土後漢画象石の原石調査を始めとする、中国、米国などの渡航調査を行うと共に、日本のみならず、中国、米国等の研究者と連携して、課題遂行のための情報蒐集に努めたい。また課題4に関連し、三部作を予定する「祇園精舎覚書」の完結も予定する(「崑崙と獅子」は第二部に当たる)。
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Research Products
(9 results)