2017 Fiscal Year Annual Research Report
バラッド文化とメディア:18・19世紀のバラッド・ソング・物語詩の出版を中心に
Project/Area Number |
15H03188
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
三木 菜緒美 (服部菜緒美) 帝京大学, 福岡医療技術学部, 准教授 (20461535)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 久代 九州女子大学, 共通教育機構, 教授 (90227778)
宮原 牧子 筑紫女学園大学, 文学部, 准教授 (00636524)
鎌田 明子 東京農業大学, 地域環境科学部, 非常勤講師 (00533580)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 出版事情 / バラッド詩 / 英語圏文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、メンバー4名による研究会を2度開催し、互いの進捗状況、情報交換と今後の課題計画について話しあった。またメンバ-2名は、シチリア島パレルモにて開催された「第47回国際バラッド学会」に出席し、Sir Walter ScottやAnne Gordonの収集したバラッドについての研究状況や、シチリア伝統歌謡・文化研究の現状について情報を得た。各メンバーの活動内容は以下のとおり。
三木:18, 19世紀のアイルランドの印刷出版文化に与えたスコットランドの影響について事例を探り、特にスコットランド啓蒙主義の出版物について、アイルランドのリプリント産業が印刷物を入手・出版していった経緯や節約術、果たした役割について発表を行った。 中島:19世紀後半のスコットランドの出版事情に関連して、商業的成功を目指してイングランドへ移住したスコットランド作家たちの背景にある経済事情・文学作品の取り扱い・使用言語の問題等を詳細に分析し、論文にまとめた。電子書籍『やまなかみつよしのバラッド・トーク-魅惑の物語世界』の序章を執筆し、伝承バラッドが各種メディアの発展によってこそ現代に継承されていることを指摘した。 宮原:19世紀アウトロー・バラッド詩の系譜の一部として、ロマン派第二世代の詩人たちがロビン・フッドをどのように描いたのか、4編のロビン・フッド・バラッド詩を書いたLeigh Huntを中心に、彼らが描くロビン・フッド像の一側面を探り、論文にまとめた。 鎌田:第36回イギリス・ロマン派講座で「Keats: "La Belle Dame sans Merci"ーバラッド詩の魅力」と題し、キーツのバラッド詩がバラッドの伝統をラファエル前派の画家たちに引き継いだことを中心に講座を行った。また、研究発表ではホッグが作品で異界とキリスト教世界の両方を内包する世界を提示していることについての考察を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、国際学会や研究会での情報収集や意見交換については計画通りにできたが、1) 扱う資料の整理に時間がかかっていること、2) 収集した各地域のバラッドの内容が予想以上に多様性に富んでいて、その内容の歴史的・社会的・文化的検証に時間がかかり、論文の執筆があまり進んでいないことから「やや遅れている」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) 平成30年度は、本課題研究の完成年度に当たるため、メンバー全員で、10月に行われる九州英文学会シンポジウムにおいて、「ブロードサイド」をキーワードに、文化研究の視点を踏まえながら、各地域文学者たちのブロードサイド・バラッドに対する関わり方・内容提示の仕方、絵や音楽との関係など多方面からその可能性を検証する。 2) 夏に研究メンバーの一人がイングランド・アイルランドにおいて情報・資料収集を行う。 3) 全体として研究会を3回開き、それぞれの研究・資料情報・意見の交換を行い、シンポジウムや論文執筆に向けての計画について、また今後の研究の展望について話し合う。 4) アイルランドに関する研究では、引き続き、収集したバラッド資料を整理しつつ、Jack B. Yeatsが編集した A Broadside について、収録された作品の考察、およびブロードサイドの歴史的・文化的意義について検証する。18, 19世紀イングランドに関する研究では、Thomas Hood が裁判記録を元にして作ったバラッド詩や、Lafcadio Hearn の作品、 George Bigot のYokohama Ballads を取り上げ、ブロードサイドのメディア性を中心に考察を行う。18, 19世紀スコットランドに関しては、予定を変更し、ストリート・ソングやブロードサイドとの関係を視野に入れながら、John Betjeman のバラッド詩についての考察を行っていく。
|
Research Products
(4 results)