2015 Fiscal Year Annual Research Report
中国伝統演劇・芸能文化の域内・域外における、成立と伝播・変容に関する総合的研究
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15H03196
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
福満 正博 明治大学, 経営学部, 専任教授 (60165313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 徹 明治大学, 法学部, 専任教授 (80253029)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中国地方戯 / 元刊本 / 琵琶記 / 日中美意識 / 京劇 / 方正・円順・自己相似 / 汗衫記 / ポストモダン |
Outline of Annual Research Achievements |
○提出した論文、福満正博:①中国近世戯曲小説中の異体字研究(8)-元刊本・大都新編関目公孫汗衫記―(『明治大学教養論集』508号)、②元刊本雑劇「汗衫記」は、何処に在ったのか―併せて明抄本と元曲選本の性格を論じる(1)ー(『明治大学人文科学研究所紀要』79冊)、③中国伝統演劇の全国地域別の劇種と劇目の総覧(『明治大学教養論集』514号)、④中国戯曲小説中の異体字研究(9-1)-『新刊巾箱本蔡伯皆;琵琶記』(『人文科学論集』第62輯) 加藤徹:①「日中美意識の比較-方正・円順・自己相似の視点から」、雑誌『アステイオン』83号,公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会 、②「京劇はポストモダンー二・五次元芸術という考え方――」、三浦雅士 編(芳賀徹・高階秀爾・山崎正和 著 / 報告者=河本真理・岡田暁生・片山杜秀・斎藤希史・加藤徹・三浦篤)『ポストモダンを超えて』副題「21世紀の芸術と社会を考える」平凡社 ○国際学会、口頭発表:加藤徹、2015年獅城国際戯曲学術研討会(主催:新加坡伝統芸術中心) 2015年11月7日-11月8日、 会場:シンガポール、「从戯曲的舞台空間所見中日美意識的比較--関于方正、円順、自我相似以及対統一感的熱衷--」(中国語) ○海外出張:福満正博、2015年10月~12月:中国芸術研究院戯曲研究所(中国北京市):学術交流、資料収集 福満と加藤は、以上のような研究活動をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福満は、中国芸術研究院戯曲研究所に出張して、学術交流を行ってきた。またその際、中国有数の演劇関係の資料を有する図書館で、50年代に中国各地で調査された地方戯の資料を収集して「中国伝統演劇の全国地域別の劇種と劇目の総覧」(『明治大学教養論集』514号、2016年3月)を出した。これは中国最高の中国国家図書館でも見ることのできない貴重な資料である。学術的価値は、小さくないと思われる。 加藤は、日本と中国の演劇の比較に関する論文を二本出版している。また、シンガポールの国際学会で発表するなど、国際的に学術交流を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
福満は、新しく「薛仁貴東征」に取り組む。まず、成化本「薛仁貴征遼伝」、『永楽大典』本の「薛仁貴征遼事略」等の語り物系統の異本と比較検討する。また、「薛仁貴衣錦還郷」(元刊本)、「薛仁貴衣錦還郷」(元曲選本)、雑劇「摩利支飛刀対箭」(脈望館鈔校本)、雑劇「賢達婦龍門隠優」(脈望館鈔校本)、伝奇「薛仁貴」(風月錦嚢本)、明伝奇「薛仁貴跨海征東白袍記」(富春堂本)、明伝奇「薛平遼金貂記」(冨春堂本)等の演劇系統の異本とも比較する。このように、話本小説・雑劇・伝奇等のジャンルを超えた伝播と変容の実態について検討する。そして、池州市の農村で伝承される「薛仁貴」の特徴を明らかにする。 加藤は、地方戯の演目「打花鼓」に着目し、その伝播と流伝の痕跡を追跡する。この歌曲を歌う大道芸人の夫婦を描く素朴な短編劇「打花鼓」は、中国各地の地方戯に吸収された。周朝俊(1573年前後)の伝奇(戯曲)『紅梅記』(李慧娘の話)の第十九、第二十出にも「打花鼓」として出てくる。『綴白裘』六集・一巻、雑劇にも『花鼓』として収録されている。近代の京劇の演目にも「打花鼓」がある。その伝播の終端は江戸時代の日本にも及んだ。音楽としての「打花鼓」は長崎経由で広まった「清楽」のレパートリーとして、俳優の所作とドラマを伴った演劇としての「打花鼓」は琉球使節が「江戸上り」で披露した演目として(1832年、琉球の尚育王の謝恩使の一行が芝白金の島津邸において、中国語で上演)、それぞれ江戸時代の日本で受容された。琉球王国の「打花鼓」はその後、郷土芸能化して現在も「伊集の打花鼓」として残っている。 福満と加藤は、それぞれの研究対象を通じて「国境を越えた、小説・雑劇・伝奇等のジャンルを超えた、伝播と変容の実態」を解明する。
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Research Products
(7 results)