2015 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト第一次世界大戦の時代としての現代史の再検討ー世界性と現代性の概念を中心に
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15H03231
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山室 信一 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (10114703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 耕太郎 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00264789)
藤原 辰史 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (00362400)
小関 隆 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (10240748)
野村 真理 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (20164741)
田辺 明生 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30262215)
坂本 優一郎 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (40335237)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 世界史 / 現代史 / 第一次世界大戦 / グローバリゼーション / 民族主義 / アジア研究 / 人文学 / 国際ネットワークの形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代史の起点としての第一次世界大戦の意味は、勃発から百年を経た今日、ますます強く認識されつつある。グローバリゼーション、それと並行して生じる世界の果てしない分裂と紛争、いまだに克服されざる民族主義、産業界までも巻き込んだ総力戦の浸透と科学技術の暴走など、第一次大戦は21世紀の今日なおわれわれが生き続けているところの現代世界のありようを決定する出来事であった。本研究は京都大学人文科学研究所における平均して月2回の共同研究をベースとしつつ、①大戦後の一世紀に及ぶ世界の変貌を見据え、大戦勃発百年を経た2014年の世界史状況を踏まえながら、②第一次大戦の何が現代史の基本的な枠組みを形成し、そして今日まで世界を規定し続けているのかを把握し、③そこからいかなる新しい道を見出すべきかを探ることを、課題として研究を行ってきた。それに際しては、代表者山室信一が平成19年より班長をつとめてきた京都大学人文科学研究所における共同研究班「第一次世界大戦の総合的研究」を基に再編して新たな拠点を形成することとし、異なる地域/時代を専門とする研究分担者ならびに各自が所属する研究者コミュニティーの間の知識の共有と認識の深化および人的交流を重視してきた。また山室がベルリン自由大学の主導で編纂されつつあるインターネット上の第一次大戦辞典のアジア関係の項目に寄稿するなど、国際ネットワークの形成も着実に行ってきた。なお本研究は第一次大戦「の」研究であると同時に、大戦を一つのランドマークとする現代史の再検討を目指すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトを推進するための拠点として、2015年4月に共同研究班「現代/世界とはなにか」を京都大学人文科学研究所に設立し、現在までに計13回の研究会を開いた。特筆されるべきは次の2点である。第1に、同じく人文研に設立されている共同研究班「環世界の人文学」とのジョイント研究会を2回(2015年7月18日、2016年2月15日)にわたって設定し、現代世界の考察にあたって不可欠な自然科学的知見を導入したことである。第2は、また別の科研プロジェクト「中東欧・ロシアにおける歴史と記憶の政治とその紛争」と共催のかたちで、2015年11月28~29日に国際カンファレンス「歴史と記憶の政治とその紛争:ユーラシアをめぐる東西の対比と対話の試み」(於関西学院大学)を開催し、ロシア、ポーランド、エストニア、アメリカ、韓国の研究者と知的な交流をもったことである。「隣国間の対話/紛争」「記憶の政治/記憶の法制」「歴史家・社会科学者の役割」を3本柱とした後者の成果については、近年注目を集めている「歴史認識」論争への重要な一石を投ずる意味で、書籍化の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度と同様、2016年度にも月2回の頻度で開かれる「現代/世界とはなにか」の定例研究会が本プロジェクトの基軸となる。現時点で14回の開催が予定されているが、そのうち2回は公開のかたちをとり(人文研アカデミー企画の一環として)、研究成果の社会還元の意味をもたせる。これもまた2015年度と同じく、2016年度にも「環世界の人文学」とのジョイント研究会を2回予定している。さらに、11月4~5日には、2015年11月の国際カンファレンスの成果を東アジアの文脈において継承・発展させるべく、東アジア国際フォーラム「東アジアにおける歴史認識と歴史教育(仮)」を、韓国、中国、台湾、等から研究者を招聘して開催する。国境を越えた対話を通じて知見の共有を図ることこそ、現代世界の諸問題を考察・検討するうえできわめて重要だ、との判断に基づく企画である。
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Research Products
(16 results)