2015 Fiscal Year Annual Research Report
近代移行期における「音」と「音楽」―グローバル化する地域文化の連続と変容―
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15H03232
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Research Institution | Aomori Chuo Gakuin University |
Principal Investigator |
北原 かな子 青森中央学院大学, 看護学部, 教授 (80405943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浪川 健治 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (50312781)
古家 信平 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (40173520)
武内 恵美子 京都市立芸術大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30400518)
山下 須美礼 帝京大学, 文学部, 講師 (90523267)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音楽 / 民俗芸能 / 武士階級 / 国学 / ハリストス正教 / プロテスタント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、幕末から明治にかけた北奥羽地域の、民衆の「音」や武士階級の「楽」など、音楽にかかわる諸相に注目し、移行期の社会と文化について、グローバル化の視点から考察することである。本年度は、参加研究者それぞれが、近世、近代、民俗の各専門分野から関連資料調査を行った。
近世については、弘前市立弘前図書館所蔵資料を中心として調査を行い、農民、町民、武士の各社会階層の視点からの資料収集を行った。また相対化の視点から、平戸藩に目を向け、藩主松浦煕が完成させた平戸囃子及び旧平戸藩、佐賀藩、大浦藩領内の民俗芸能調査も行った。近代に関しては、Japan Weekly Mailの解読を定期的に行い、膨大な量の中からのオルガン導入にかかわる資料選定を進めた。また、東京芸術大学所蔵資料から、近代文化形成における士族層の影響に関する資料を収集した。民俗に関しては、沖縄・与論島調査を行った。エイサーなどのフィールド調査に加えて文献調査を行い、明治政府の施策による村落社会の変貌を跡付ける基礎資料を整備した。また琉球と日本本土の双方からの影響により民俗変容していることを示す資料を収集、さらに辺野古をめぐる出稼ぎや移民などグローバル化の動きにも目を向けた。
以上の国内調査を進める中で、10月に筑波大学で開催されたシンポジウム「グローバルな「知」と地域の「知」ー「知」受容と創造ー」において、代表者の北原が本研究の内容を報告するとともに、研究分担者・協力者全員によるディスカッションを行った。さらに、当初の予定には無かったが、3月にロシアのモスクワ音楽院研究者たちとの交流・アカデミックミーティングの機会を得て、ニコライを初めとした来日ロシア人宣教師たちについての日露合同ディスカッションを行った。今後、同音楽院研究者たちとも共同研究を行うことになり、「北からのグローバル」を考察するうえで貴重な協力体制を築いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた調査は、担当者がそれぞれのフィールドにおいて滞り無く進めており、合同ディスカッションによって研究展開の方向性を全員で共有するなど、順調に推移している。
さらに今年は、当初の予定には無かったロシアのモスクワ音楽院研究者たちとの交流が実現した。「北からのグローバル」は、本研究の基軸の一つだが、これを解明する上で、ロシアとの関係は非常に重要である。今後日ロ共同研究により幅広く研究の進捗が期待できることから、最初の計画より進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の調査先としては、八戸市立図書館、国会図書館及び宮城県図書館伊達文庫調査、三戸町立図書館、東京芸術大学、国立国会図書館などを予定している。また、収集資料の解読作業も継続する。近代部分については、収集資料に英文が多いことから、露文資料も含めて今年度から翻訳を進めて、随時資料紹介としてだしていきたい。
6月には、アメリカ・カリフォルニア大学ノースリッジ校で開催される、Asian Studies on the Pacific Coast 2016 Conferenceにパネルとして参加予定であり、本科研で進めているテーマを学会で発信することにより、展開の可能性を広げて行きたいと考えている。また、平成H28年度「ひらめき☆ときめきサイエンス」に採択されたことから、9月には、高校生を対象として研究内容をわかりやすく伝える機会を持ち、若い世代の関心に訴える形での発信も考えている。
以上のように調査研究および発信を進める中で、随時合同ディスカッションの機会をもち、視点を共有して互いに啓発することを重視しながら研究を進める予定である。
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Research Products
(8 results)