2016 Fiscal Year Annual Research Report
近世~近代日本における遊女・娼妓と遊廓社会の総合的研究
Project/Area Number |
15H03241
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐賀 朝 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40319778)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 伸之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (40092374)
塚田 孝 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (60126125)
松井 洋子 東京大学, 史料編纂所, 教授 (00181686)
小野沢 あかね 立教大学, 文学部, 教授 (00276700)
人見 佐知子 岐阜大学, 地域科学部, 助教 (00457029)
横山 百合子 国立歴史民俗博物館, 研究部歴史研究系, 教授 (20458657)
金 富子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40558102)
吉田 ゆり子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (50196888)
神田 由築 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (60320925)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 日本史 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、新潟・佐渡現地調査を行い、さらに遊廓・遊所研究データベース拡充のための小研究会を2回開催した。研究会では、2015年度に作成した岐阜県・福岡県のデータ内容の検討を行い、地域的な特殊性(例えば軍都・炭鉱町・製鉄所との関連など)を見出せる事例を確認した。 2014年度から暫定公開を開始した「遊廓・遊所研究データベース」では、詳細データの作成・追加作業を進め、すでに公開している岩手県・福島県のデータ内容について更新したほか、新潟県の詳細データの作成、京都府の追加データの作成などを進めた。 新潟・佐渡での現地調査では、幕末~明治初年の新潟町における旧遊廓地に関わる史料(川村修就文書・新潟町会所文書)を調査、収集した。新潟県立文書館での県内古文書目録の調査により、新潟県内の近世~近代遊廓関係史料の存在も確認でき、その一部を収集した。今後の追加調査で全体の収集に努めたい。特に廃娼運動関係文書(新潟市斎藤文書)は、継続調査が必要である。佐渡現地調査では、佐渡市立佐渡博物館・相川郷土博物館において遊廓関係の一次史料の存在が確認できた。今後、現地研究者との研究交流も行いながら、史料の調査・収集を行う必要がある。 研究会としては、2016年10月に大阪で近代公娼制度と「慰安婦」問題を視野にした研究会を、2017年3月には東京で吉田ゆり子『近世の家と女性』の書評会など、計4回を実施した。また2016年度は、代表者・分担者・協力者による国際学会での研究発表が精力的になされ、居留地付き遊廓の比較史や近世~近代大阪の遊廓社会史、日本軍「慰安婦」問題などで国際的な研究の進展が見られた。データベースの修正・更新および、次年度の史料調査の方向付けとなる所在確認も進んだが、データベース構築はやや遅れ気味であるため、用語集の拡充などを含め、さらなる作業の進展をはかる必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は予定していた新潟市および佐渡の史料調査を行うことができ、代表者・分担者・協力者の精力的な活動により研究発表の場を多く設けることができたものの、組織的・系統的な研究会の開催や各地域ブロックでの調査・史料分析に基づく都道府県別データの蓄積、構築作業にはやや遅れが見られた。 主題別には、居留地付き遊廓の研究や芸娼妓解放令など近世~近代移行期の遊廓研究、国際的人身売買問題などのテーマにおいて進展が見られたが、当初計画を念頭に置くと、芝居地と遊廓の比較と相互関係、女衒と金融のネットワーク、遊廓と芸者町の比較と相互関係などのテーマについては、個別の研究成果はあるものの、やや遅れ気味である。 なお、2016年度には、新に栃木県那須烏山市の烏山遊廓に関する一次史料の存在が確認でき、準備調査を実施することができたため、今後、県内全体を視野に入れた調査を進めることで、発掘が遅れている近現代の個別遊廓の一次史料に基づく共同研究を進展させることが可能であり、強く期待される。この点は大きな可能性を持つが、現状では準備調査段階にとどまっているため、次年度に具体化し、進展させたい。 以上の状況をふまえ、全体として「やや遅れている。」との自己評価を下した。新年度は、早期の段階で活動方針に関する協議を行い、最終年度の共同論文集刊行に向けた計画の策定、国際学会での研究発表、複数箇所での一次史料の現地調査、さらには遊廓・遊所データ構築の具体的推進計画などを明確化し、研究活動の一層の組織化に努めたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
①遊廓・遊所研究データベース 2015年度に暫定公開を開始した「遊廓・遊所研究データベース」について、今年度も詳細データのさらなる作成・追加作業を進める。研究代表者の統括のもと、分担者・協力者を、地域ブロックに振り分け、作業を進める。2017年度も、可能な限りの詳細データコンテンツの追加を目ざし、進捗を確認し課題を協議するデータベース小研究会も年数回、開催する。また2017年度は、キーワードの追加・充実をはかり、終了年度の出版企画に向けた準備を進める。 ②現地調査・研究会と日常的な史料調査 特徴的な遊廓事例のある地域における史料調査・収集と現地研究者との交流により、史料・研究情報の共有と研究ネットワークの組織化をはかる現地調査・研究会を今年度も開催する。2017年度は、昨年度の成果をふまえて新潟県、特に佐渡島の追加調査を行うとともに、福岡県を含む北九州地域のほか、2016年度に史料の存在を確認した栃木県の烏山遊廓を含め、北関東・東北地域を重点的な調査候補地とし、現地の史料所蔵機関や大学等の研究者とも連携して準備を進める。ブロックごとの日常的な小規模調査にも、引き続き取り組む。 ③テーマ別研究会・年度総括研究会 年度の早い時期に研究活動計画を検討する協議を行う。その際、終了年度に刊行する共同論文集に関する構想案も検討。その構想もふまえて、a遊女・娼妓の存在形態、b芝居地と遊廓の比較と相互関係、c女衒と金融のネットワーク、d芸娼妓解放令の歴史的位置、e遊廓と芸者町の比較と相互関係、f遊廓をめぐる国際関係の6つの小テーマを意識しつつ、複数チームの連携による研究会を年3回程度開催する。このかん、一定の進捗があったa・dに加え、b・c・e・fの課題推進の強化をはかる。共同論文集の構想検討を重ね、年度末には企画として確定し、並行して準備作業も進める。また年度総括研究会で、研究活動成果を確認する。
|
Research Products
(20 results)