2016 Fiscal Year Annual Research Report
近代ヨーロッパを中心とする女性の空間的移動とジェンダーの変容に関する比較史研究
Project/Area Number |
15H03260
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
北村 暁夫 日本女子大学, 文学部, 教授 (00186264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 ひかる 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00272774)
青木 恭子 富山大学, 人文学部, 准教授 (10313579)
木村 真 日本女子大学, 文学部, 研究員 (20302820)
一政 史織 (野村史織) 中央大学, 法学部, 准教授 (20512320)
杉浦 未樹 法政大学, 経済学部, 教授 (30438783)
平野 奈津恵 日本女子大学, 文学部, 研究員 (60634904)
山本 明代 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (70363950)
山手 昌樹 日本女子大学, 文学部, 研究員 (70634335)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移民 / ヨーロッパ史 / 女性 / ジェンダー / 公共圏 / 親密圏 / 比較史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、17世紀から20世紀前半までの近代ヨーロッパにおいて、さまざまな形態の空間的移動(国内移動/ヨーロッパ諸国間の移動/大陸間移動、経済的な移民/政治亡命/難民)を経験した女性を対象として、空間的移動とジェンダーの相互的な関係を明らかにすることを目的としている。 二年目度目にあたる本年度は、二回の研究会を開催した。第1回研究会(平成28年7月23日開催)では、「ハンガリー移民女性の移民動機をアメリカのハンガリー語新聞への投稿作文から読み取る」と「パリのベルギー女性家事労働者の研究に向けて」の二つの報告が行われ、新聞の投稿が移民を経験した女性の「肉声」を聞くことのできる重要な史料であることや、「家事労働者」という言葉が職業の実態としては料理人、介護労働、家庭教師などさまざまな職務を指す概念であるために史料を綿密に吟味する必要があることなどが確認された。第2回研究会(平成28年12月3日開催)では、「20世紀のアメリカ合衆国におけるセツルメント運動と移民女性」と「北イタリア丘陵地帯における女性の出稼ぎと家族関係」の二つの報告が行われ、中産階級の女性たちによって担われたセツルメント運動がしばしば南欧・東欧出身の移民女性のアメリカ化を側面から支援する働きを果たしたことや、近距離の国内移動であっても比較的年齢層の若い女性たちを多く含む移動労働がしばしば性的モラルを侵犯するリスクのあるものとして警戒されていたことなどが確認された。 研究会活動とは別に、各人の研究対象地域における史資料調査や文献閲覧を通じて、それぞれの研究を進めた。また、本研究の前身と位置づけられる平成24~27年度の科研費に関して成果を書籍として発表するためのプロジェクトが推進され、各人が原稿を執筆する中で本研究とも重なる視点や史料の掘り起しがなされつつあることがメールのやり取りなどを通じて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は2回の研究会開催を通じて、女性の移民経験を歴史的に再構成するうえで、住民票や農業調査、新聞の投書欄、インタビュー記事などが重要な史料として利用可能であることや、「家事労働」概念の多義性や中産階級の視点による記述から移民女性の心性を読み解くための方法といった、史料や方法に関わる論点を整理することができ、各人の研究を深化するための作業が着実に進行したため。 また、研究の遂行に必要な書籍や設備の購入、対象地域における史資料調査やフィールドワークがおおよそ順調に進められ、4年間にわたる研究遂行のための過程を確実に辿ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き本年度も研究会活動を展開することで、女性移民の移民実践に関する方法論の深化と史料の掘り起こしの作業を進めるとともに、最終年度に向けて共同研究を取りまとめるべく、各人が取り組んでいる課題について問題点を洗い出す作業を行う。 また、昨年度は予定していた欧米からの研究者の招聘が諸般の事情により遂行できなかったので、今年度は実現させたい。具体的にはフランス社会科学高等研究院ナンシー・グリーン教授の招聘を検討している。招聘が実現すれば、国際シンポジウムを開催する予定である。 さらに、最終年度にあたる平成30年度に、日本西洋史学会において本研究参加者が報告するシンポジウムを行うことを計画している。今年度はそのための準備(学会へのアプライや報告者の人選など)を進める。 こうした活動以外に、各人は引き続き対象地域における史資料調査やフィールドワークを行い、それに基づく分析作業を進めることで、個別の研究を進展させることになる。
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Remarks |
http://www.euromigration.jp
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Research Products
(19 results)