2017 Fiscal Year Annual Research Report
A comparative study on the female migrants and the impact of migration on gender in modern European history
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15H03260
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
北村 暁夫 日本女子大学, 文学部, 教授 (00186264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 ひかる 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00272774)
青木 恭子 富山大学, 人文学部, 准教授 (10313579)
木村 真 日本女子大学, 文学部, 研究員 (20302820)
一政 史織 (野村史織) 中央大学, 法学部, 教授 (20512320)
杉浦 未樹 法政大学, 経済学部, 教授 (30438783)
平野 奈津恵 日本女子大学, 文学部, 研究員 (60634904)
山本 明代 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (70363950)
山手 昌樹 日本女子大学, 文学部, 研究員 (70634335)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移民 / ヨーロッパ史 / 女性 / ジェンダー / 公共圏 / 親密圏 / 家事労働 / 比較史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、17世紀から20世紀前半までの近代ヨーロッパにおいて、さまざまな形態の空間的移動(国内移動/ヨーロッパ大陸間の移動/大陸間移動、経済的な移民/政治亡命/難民)を経験した女性を対象として、空間的移動とジェンダーの相互的な関係を明らかにすることを目的としている。 三年目にあたる本年度は、二回の研究会を開催した。第1回研究会(平成29年7月22日)では、報告予定者が急病となったため、出席者がここまでの二年あまりの研究の成果を披露した。それにより、参加者によって研究の進展・深化にばらつきがあることが確認された。これを受けて、第2回研究会(平成29年12月9日)では、参加者全員がここまでの研究の成果について報告し、各人の研究内容に関する討議を行うこととした。その結果、政治活動などの公共圏や労働を中心とする経済的な領域においては、移動によるジェンダー関係の変化について具体的な事例を提示するという作業が順調に進んでいるのに対して、家族関係をめぐる親密圏に関する同様の研究では史料によって確認のできる事例を提示することが困難である現状が示された。残された一年あまりの期間に関しては、親密圏に配慮しつつも、公共圏や経済領域における支配的なジェンダー・イデオロギーに着目しつつ、移動によるジェンダー関係の変化に研究を集中させていくことを確認した。 研究会活動とは別に、各人の研究対象地域における史資料調査や文献閲覧を通じて、それぞれの研究を進めた。また、本研究の最終年度である平成30年度に外国人研究者を招いてのシンポジウムを開催することや、研究期間の終了直後である平成31年5月に開催予定の日本西洋史学会大会(静岡大学)において、これまでの研究成果を広く問うためのミニシンポジウムを開催することを決めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は2回の研究会開催を通じて、参加者がこれまでの研究期間において積み上げてきた成果について確認することができた。具体的な成果として、移動前に伝統的なジェンダー規範を内面化していた女性たちが、移動という経験を通じて家族領域での活動から公共圏の活動へ積極的に踏み出していったり、伝統的な宗教規範から逸脱していったりしていることが明らかにされた。ただし、こうした事例が数多く見られる一方で、移動によって根本的にはジェンダー規範が変化しなかった事例も散見され、過度な一般化が危険であることも認識された。そのため、最終年度に向けては、どの程度の理論化が可能であるか慎重に見極める必要があるという課題が残された。 また、研究の遂行に必要な書籍や設備の購入、対象地域における史資料調査やフィールドワークはおおよそ順調に進められ、4年間にわたる研究遂行のための過程を確実にたどることができた。 以上から、本研究は総体において順調に進展しているものの、個別にはいくつかの重要な課題が残されていることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き本年度も研究会活動を展開することで、女性による移動経験に関する史料の掘り起こしと方法論の深化を進めるとともに、研究の成果をシンポジウムや論集の刊行として社会に広く問うことを目指して、各人が取り組んでいる課題について問題点を洗い出す作業を行う。 本研究は公共圏(政治領域/経済領域)と親密圏に分けて研究を進める予定であったが、親密圏におけるジェンダー規範が移動経験についていかなる変容を被ったかという論点に関しては、史料的な制約が大きく、実証研究として十分な成果を得ることができない可能性が高くなったため、主に親密圏を研究してきた参加者に関しては、公共圏をめぐる諸問題に視点を拡大して研究を進め、一定の成果を得ることにしたい。 また、昨年度に予定しながら果たすことのできなかった、欧米からの研究者の招聘を実現したい。具体的にはフランス社会科学高等研究院ナンシー・グリーン教授の招聘を検討している。招聘が実現すれば、国際シンポジウムを開催する予定である。 さらに、本研究期間が終了した直後となる平成31年5月に開催予定の日本西洋史学会において、ミニシンポジウムを開催する計画を立てたので、そのための準備を進める。本年秋に予定されているミニシンポジウムへのアプライに向けて、報告者の人選や報告内容の精査を行う。 こうした活動以外に、参加者各人は引き続き対象地域における史資料調査やフィールドワークを行い、それに基づく分析作業を進めることで、個別の研究を進展させる。
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Research Products
(17 results)