2017 Fiscal Year Annual Research Report
縄文土器で煮炊きしたものと土器の使い分けについての研究
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15H03262
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 特招研究員 (10272527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 芳郎 明治大学, 文学部, 専任教授 (10221730)
宮田 佳樹 金沢大学, 先端科学・イノベーション推進機構, 博士研究員 (70413896)
西田 泰民 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (80172667)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古食性復元 / 縄文土器 / 脂質分析 / 年代測定 / 土器付着炭化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、脂質分析の技術開発、日本列島産食材のデータ収集、遺跡出土資料の分析という三本柱の研究を進めた。 これまで、土器胎土に吸着した有機物を抽出する方法は、2g程度の土器粉末にクロロホルム/メタノール混合溶液を加え、超音波処理をして総脂質を抽出していた(TLE法;Total Lipid Extraction)。土器胎土の分析は、小さな土器片を破砕するか、土器内面の表面を削り取って測定試料とする破壊分析である。遺跡発掘担当者などの同意を得て、分析対象試料を幅広く入手するためには、必要な試料量を出来る限り減少させることが望ましい。このために、新たに0.1g程度の試料を用いる少量試料法(SS法;Small Scale)を採用し、試験運用を行っている。0.1g程度の土器胎土にメタノール、硫酸、ヘキサンを順次加えて、有機化合物を抽出する方法で、測定前の前処理時間も短縮することが出来た。 模造土器で現生食材を煮炊きし、おこげを生成させる実験を、2004年以来10年以上にわたって続けてきた。保存してある原料食材、煮炊き実験土器の一部、特に海棲哺乳類、陸棲動物について、測定・分析を行い、バイオマーカーを検知し、分子レベル炭素安定同位体分析の結果を得た。日本列島の主要な栄養資源である植物質食材については、特徴的なバイオマーカーが、これまで見つかっていなかった。堅果類・雑穀についても分析を行い、重要な知見を得た。 遺跡から出土した土器の分析も並行して進めた。石川県真脇遺跡、八日市地方遺跡、群馬県居家以岩陰遺跡、北海道江別市対雁2遺跡、千歳市イカベツ2遺跡などの土器片、土器付着炭化物の分析を行った。また、中国の田螺山遺跡、跨湖橋遺跡、新峡遺跡などから入手した資料について分析を行った。これら内外のの分析結果については、報告書を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
技術開発、日本列島産食材のデータ収集、遺跡出土資料の分析という三本柱の研究は、それぞれ順調に進んでいる。 脂質分析試料の抽出については、分析に用いる試料量の低減、前処理の省力化を行った。これまでの抽出法(TLE法)では、約2gの土器胎土が必要であったが、少量試料法(SS法)を導入することにより、約0.1gの試料量とし、前処理に必要な時間も、4~5日から3日程度に短縮することが出来た。また、有機物試料を抽出したヘキサン溶液を窒素気流中で蒸発乾固させるために、簡易エバポレーターを導入し、効率化を図った。3試料を同時に取り扱うことが出来るが、相互汚染や、装置からの汚染を防止する施策を講じた。 一方、分子レベル炭素同位体分析を行う質量分析計の検出感度を向上させるために、質量分析計のヘッドアンプを改良した。現在、調整を進めている。 日本列島産食材については、主として、過去に行った煮炊き実験の原料食材・実験土器の測定・分析を行った。炭素・窒素同位体比、炭素/窒素原子数比(C/N比)については、すでに測定を行っているので、バイオマーカーの検出、分子レベル炭素同位体分析を進めた。海棲哺乳類、陸棲動物、堅果類、雑穀を中心に、測定・分析を行った。雑穀については、特にキビ・アワについて、産地の異なるウルチ・モチ種を入手し、分析した。 遺跡から出土した土器の分析を並行して進めており、日本列島だけでなく、中国の遺跡から出土した資料についても分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本研究の最終年度である。脂質分析の技術開発・基礎研究、日本列島産食材のデータ収集、遺跡出土資料の分析という三本柱の研究を変わらず推進していく計画である。 昨年度末に、分子レベル炭素同位体分析に使用する質量分析計のヘッドアンプを改良した。調整を進め、同位体の検出感度だけではなく、精度に関しても向上を図りたいと考えている。また、前処理をさらに効率化、省力化するために、汚染の有無を検証しながら、脂質自動抽出装置の導入などを検討する予定である。 さらに、土器胎土に有機化合物が吸着される際、加熱が重要な役割を果たしていると考えられているが、この点に関しても、実験的に検証する計画を考えている。 煮炊き実験については、保存してある食材原料、実験土器胎土、付着炭化物の測定、分析を行ってきた。これまでは、単独の食材を煮炊きしたものを測定、分析してきた。実験では、単独食材だけでなく、植物質食材に陸棲動物や魚類などを混合して煮炊きした実験土器も数多く保存されている。これらの混合食材を煮炊きした場合について、それぞれのバイオマーカーがどのように変化しているのか、していないのか、また、分子レベル炭素同位体比が、どのような値を示すのか、などを検討する。遺跡から出土した土器に残されている痕跡から、混合食材の組成を推定することが出来るかどうか、明らかにすることが最大の課題である。 遺跡出土土器の分析については、日本列島内の土器について、特にその器形、装飾の有無、容量に関して、煮炊きした食材と関係があるのかどうか、検討できる土器資料を優先的に測定、分析する計画である。国外の土器資料についても、積極的に測定、分析していくことを考えている。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] The compact AMS system at the University Museum, the University of Tokyo.2017
Author(s)
Ozaki, H, Omori, T, Itahashi, Y, Yamazaki, K, Kanesawa, A, Uehara, K, Yamaguchi, A, Uchida, A, Yoshida, K and Yoneda, M.
Organizer
14th Int. Conf. on Accelerator Mass Spectrometry.
Int'l Joint Research
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[Presentation] Radiocarbon dating on archaeological remains from the Youkaichijikata site, Ishikawa, Japan2017
Author(s)
Miyata, Y., Minami, M., Nakamura, T., Shimohama T., Tada, Y., Sano, T. and Nakatsuka, T.
Organizer
14th Int. Conf. on Accelerator Mass Spectrometr
Int'l Joint Research
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