2015 Fiscal Year Annual Research Report
人口減少期の都市地域における空き家問題の解決に向けた地理学的地域貢献研究
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15H03276
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
由井 義通 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (80243525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 芳樹 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (70191723)
矢野 桂司 立命館大学, 文学部, 教授 (30210305)
大塚 俊幸 中部大学, 人文学部, 教授 (80351188)
宮澤 仁 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (10312547)
久保 倫子 岐阜大学, 教育学部, 助教 (00706947)
西山 弘泰 九州国際大学, 経済学部, 助教 (20550982)
櫛引 素夫 青森大学, 社会学部, 准教授 (40707882)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 都市地理学 / 地域振興 / 空き家 / 郊外住宅団地 / 地域貢献 |
Outline of Annual Research Achievements |
人口減少期にある日本の住宅市場では、住宅需要の落ち込みに加えて、高度経済成長期以降の持ち家取得層が高齢化し、彼らの子どもたちの独立や中古住宅市場の低迷によって空き家が増加している。本研究は、大都市地域における空き家発生の実態調査とメカニズムの解明、空き家問題への取り組みを分析し、住宅市場や住宅制度等の背景を考慮しながら大都市地域における構造変容の解明と包括的都市再活性化策の検討を目的とし、以下の調査を行った。 1)空き家発生メカニズムのモデル構築のために、住宅供給や住宅制度の側面から都市内部と郊外地域における空き家発生の実態調査。 2)全国の自治体や地域住民による空き家対策について実態調査を行い、既存住宅ストックの活用等の地域事情に応じた包括的な都市再活性化策の提案について検討し、講演やワークショップの開催によって地域に研究成果を還元し、地理学による地域貢献を検討した。 平成27年度は、空き家の事例研究と空き家対策に関する各地の取り組みに関する研究成果をシリーズとして『月刊地理』に連載し、掲載原稿をもとにして『都市の空き家問題 なぜ?どうする?』(古今書院)を刊行した。当該年度は初年度の研究であったが、メンバーによる地域調査を活発に行い、一部はアメリカ地理学会や日本地理学会秋季学術大会など、国内外の学会で成果を発表した。 国内諸都市での調査としては、下記の調査を実施した。①広島県内の中古住宅の取引状況について分析。②統計からみた首都圏の空き家分布とその要因についてGISで定量的に分析した。③京都市都心部における田の字地区の範囲の京町家の悉皆調査を実施。④青森市・幸畑団地地区まちづくり協議会による、空き家活用の取り組みを調査。⑤郊外住宅地における居住環境調査。⑥空き家条例施行の背景に関する研究。⑦宇都宮市の空き家実態調査と住民の空き家に対する意識に関する研究。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に対する現地調査はおおむね順調に進行しており、『月刊地理』で連載していた原稿を中心に取りまとめたものを『都市の空き家問題 なぜ?どうする?』(古今書院)で刊行した。日本全国と東京大都市圏の空き家の分布状況などについてはGISによって分析し、また地方都市圏の空き家の状況については広島市を事例として分析し、それらの成果はアメリカ地理学会(AAG)において発表した。 そのほかの研究分担者による現地調査(①東京大都市圏郊外の多摩ニュータウンと東京大都市圏全域の傾向調査、②青森市の郊外住宅団地の活性化に対する取組に関する調査、③宇都宮市の空き家対策調査、④岐阜市・多治見市・成田ニュータウンにおける空き家調査と居住環境調査の準備、⑤愛知県小牧市の桃花台ニュータウンにおいて住み替え意向調査に関する調査準備、⑥首都圏の自治体における空き家の実態と対策についての調査準備、⑦福岡県における住宅のリノベーション事業の実態とその有効性に関する研究)についてもほぼ順調に研究が進んでおり、空き家の実態調査を進めるとともに、今年度からは空き家の利活用に関する研究についても調査を進め、中間報告を国内外の学会において発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は都市の空き家問題が深刻化する中で、空き家の実態調査と利活用に関する研究に対する社会的要請は強い。そこで以下のような研究方策をとる予定である。 ①中古住宅市場で長期間売れ残りとなったデットストックの特徴の解明(研究協力者の上村氏と共同で調査)し、分析する。②日本の主要な大都市地域における空き家発生地の実態調査の実施:東京・京阪神・名古屋・広島・福岡の各大都市圏において、地域的条件の異なる地区を選定し、空き家発生の実態と地域の対応に関する現地調査を行う。なお、東京大都市圏は若林、由井、宮澤、岩間、京阪神大都市圏は矢野、名古屋大都市圏は大塚と久保、広島大都市圏は由井、福岡大都市圏は西山を中心として現地調査を進める。なお、各大都市圏においては、空き家対策条例を既に施行しているか、条例施行を予定している自治体において、補助学生2名程度とともに現地調査を行う。また、地方都市の空き家問題については、青森市を櫛引、佐賀県武雄市・伊万里市を対象として西山が現地調査を行う。既成市街地や郊外住宅地の調査地では、空き家の所在地をリスト化し、現地調査により空き家の管理状態を調べるとともに、近隣住民への聞き取り調査によって、空き家になった時期や空き家の所有者の属性について解明する。③国内の主要な大都市地域において空き家問題への自治体や地域住民の対応に関する聞き取り調査:ローカルな空き家問題への取り組みとして、地域社会による空き家問題への認識や取り組みを現地調査により明らかにする。これにより、今後空き家化が進行しやすい地区の特性を検討するとともに、地域特性に応じた空き家対策の方向性を提案する基礎的資料をまとめる。④空き家の利活用に関する研究として、住宅のリノベーション事業の実態とその有効性に関する研究を西山が中心となって行う。⑤前年度の研究成果について、論文にまとめ投稿する。
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Research Products
(25 results)