2016 Fiscal Year Annual Research Report
下からの地域開発の実践―フットパスと農村民泊による展開
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15H03280
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前川 啓治 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80241751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 龍也 龍谷大学, 法学部, 教授 (30196844)
久保 由加里 大阪国際大学, 国際教養学部, 准教授 (60514354)
塩路 有子 阪南大学, 国際観光学部, 教授 (70351674)
廣川 祐司 北九州市立大学, 地域創生学群(基盤教育センター所属), 准教授 (80635649)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フットパス / 農村民泊 / 地域活性化 / コモンズ / 内的発展論 / Walkers are Welcome Town / 観光 / カレッジ・フットパス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、成果の顕著なフットパスのコース設置と実際のウォーキング・ランブリングによる地域活性化にとくに焦点を当てているが、以前より地域づくりの成果を示していた農村民泊による地域活性化と比較し、さらに同じ九州の中山間地域における地域活性化の手法である一村一品運動との関連を調べた。そこからは、生産→交流→交通という分野の漸次の移行展開が見て取れた。 フットパスとコモンズの関連については、分担者がイギリスにおいて継続調査中であるが、とくに法的な側面から公私空間の規定を訴訟事例から検討した。また、分担者の一人は、イギリスとフィンランドにてフットパスの現地調査を継続実施し、また、別の分担者は、前年度のフィールド調査をベースに、スイスにおける農地活用と観光との関連性として、アッペンツエル地方の事例をイギリスと比較検討した。 研究分担者3人が実践的に関わっているカレッジ・フットパスについては、福岡県中間市を北九州市立大学が、鳥取県鳥取市鹿野町を大阪国際大学が、大阪府吹田市を阪南大学が担当し、フットパス・コースの設置の段階から、地域づくりの実践を教育プログラムの一環として行い、内発的発展論の検証と応用展開を試みている。 「下からの地域開発」を主体的に行うためには、住民の主体性、意欲、学ぶ意識の醸成と向上とを外部者が引き出す必要があり、大学生が継続して地域社会に入り込む必要がある。しかし、そのためには、地域課題を大学生が解決しないというスタンスを維持し、住民のシビックプライドの醸成を促す活動をセットで行わなければならないという結論を得、分担者が地域課題解決全国大会において発表した。 さらに、代表者と分担者および研究協力者である日本フットパス協会理事の4人で、「フットパスによる地域活性化の展開」と題してAnthropology of Japan in Japanの研究大会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下からの地域づくりとして、農泊と比較するべくフットパスによる展開の調査を以下のように実施してきた。 ・フットパス型の観光の1つの基礎研究として、日本における自然観賞型遊歩道の管理責任についての法的枠組みについて検討した。さらに、自然保護だけでなく観光や地域振興との調和に高い価値をおく英国の国立公園制度に注目し、ダートムア、ニュー・フォレスト、サウスダウンズの各国立公園における実態調査を行った。 ・フィンランド・ヘルシンキで森へのアクセスの状況を視察し、英国コッツウォルズ地域の都市を再訪し、旅行業者や観光案内所での聞き取り調査を実施した。サマーセット州のウィヴァリースコムと、エクスモア国立公園内のダンスターの村で、国立公園とフットパスに関する調査を行った。大阪府吹田市でフットパス実施の準備を行い、日本フットパス協会主催の「全国フットパスの集い in 由利本荘」に参加し、秋田県のフットパスの事例を視察した。 ・鳥取県鹿野町河内地区果樹の里山協議会と学生との協働によるフットパスによる地域づくりの実践とインバウンド観光について調査した。また、福岡県遠賀郡岡垣町フットパス・福岡県福津市津屋崎フットパスの調査を実施した。さらに、京都府相楽郡和束町のトレイルと農泊について調査を実施し、インバウンド観光を実践した。 ・過疎高齢化しつつある地方の地域において、地域外の青少年層の継続的な地域への関与によって、地域がどのように変化していくのかを検証した。福岡県中間市において、中間高校生と北九州市立大学生が「なかまフットパスづくり」を連携して手掛け、地域の自治会やガイドの会(中間市民)への働きかけを行ってきた。また、福岡県直方市と宮若市においても、鞍手高校生と北九州市立大学生がフットパスづくりをともに実施することによって、地域内のこれまで接点のなかった新たなアクター同士の連携が構築できた。
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Strategy for Future Research Activity |
・フットパスなどの管理責任に関する法制の今後のあり方を探るため、フットパスやオープン・カントリーへの市民的アクセスの先進地である英国におけるフットパスやアクセス地の管理責任について研究を進める。また、英国の国立公園における土地利用管理は自然、歴史等の多様性を反映して様々であることが予想されるため、国立公園それぞれの個性に着目しつつ、そこにおける土地利用管理のあり方と問題点に関する実態調査を継続する。 ・コッツウォルズ地域ウィンチコムのフィールド調査をもとに、「英国におけるフットパスと地域活性化活動:文化遺産をめぐる文化・社会的環境の構築」としてまとめ、英国のスコットランドでフットパスとWalkers are Welcome活動の現地調査および吹田市の事例調査を継続する。 ・スイスにおける土地法についての調査を深め、観光との関連性を探る。京都府相楽郡和束町のトレイルと農泊の取組みについて、下からの地域づくりとしてまとめる。鳥取県鹿野町におけるフットパスによる地域づくりの実践とインバウンド観光の実践を継続し、発展させる。韓国の調査に着手する。 ・福岡県行橋市で、駅前の中心市街地の活性化のためにフットパスの理論を応用し、歩くことで地域資源のさらなる発見、まちの回遊性の向上による滞在時間の延長を模索してきた。この取り組みは、有効な手立ての確立できていない、停滞するまちづくりや地域づくりに、フットパスの理論が汎用性のあるモデルとなりうることを検証するものである。フットパス設置の過程の中で、持続可能な地域づくりに必要な要素をピックアップし、汎用性の高い理論としてまとめる。 大学生という主体が地域住民を巻き込んで、「下からの地域開発」を実践している事例の集積を、自らもそのアクターの一人として継続的に参与観察することで、フットパスの手法を、学際的研究の成果として提示してゆく。
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Research Products
(10 results)