2017 Fiscal Year Annual Research Report
下からの地域開発の実践―フットパスと農村民泊による展開
Project/Area Number |
15H03280
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前川 啓治 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80241751)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 龍也 龍谷大学, 法学部, 教授 (30196844)
久保 由加里 大阪国際大学, 国際教養学部., 准教授 (60514354)
塩路 有子 阪南大学, 国際観光学部, 教授 (70351674)
廣川 祐司 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (80635649)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アクセス制度 / パブリック・フットパス / 地域活性化 / WaW(ウォーカーズ・アー・ウェルカム)タウン / ランブラーズ協会 / 限界集落 / アクティブラーニング / カレッジフットパス |
Outline of Annual Research Achievements |
フットパスによる観光地域づくりの事例研究として、スコットランドのキスサイス、メルローズ、モファット、ニュートン・スチュワート、北部イングランドのオトレー、バーレイ、ベイルドンのWaW(ウォーカーズ・アー・ウェルカム)タウン組織の主要な担い手から聞き取り調査を行った、南西イングランドのコッツウォルズ地域のウィンチコム、チェプストウ、ロス=オン=ワイでは、一昨年来のウォーキングの参与観察も踏まえて再度の聞き取り調査を実施し、その後の変容などを調査した。 また、スコッツ・ウェイとランブラーズ・スコットランド等アクセス推進団体を訪問し、フットパスを中心とするアクセス制度の運用状況等の聞き取り調査を行い、イングランドとの比較を行った。同時にイングランドおよびウェールズならびにスコットランドにおけるカントリーサイドへの公衆のアクセス制度に関する文献を収集し、フィンランドの公的アクセス権についての重要文献の一部の翻訳を行った。さらに、イタリアの分散型ホテルいわゆる「町ぐるみの宿」アルベルゴ・ディフーゾについて、モリーゼ州、トスカーナ州でその展開の実態を調査した。 日本においては、兵庫県豊岡市但東地区でフットパスウォーキングを実施し、フットパス・コース設置による観光地域開発の方向性と課題について、地域の実践家向けにパネルディスカッションを行った。鳥取県鹿野町では、限界集落における地域づくりの取り組みを学生と地域の協働として継続している。 なお、分担者等が全国に先駆け、実践的に展開しているカレッジ・フットパスについては、フットパスから更なる地域づくりへの展開を目指して、関係者、担い手である学生等と検討を重ねた。また、日本フットパス協会主催のフットパス全国大会(福岡県中間市)では、大学(学生・教員)と地域住民との協働による「なかまフットパス」の活動成果を発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度のイギリス、フランス、ドイツ、スイスにおけるフィールド調査および平成28年度の国内のフィールド調査を受けて、平成29年度はイギリスと日本、イタリアのフィールド調査を幅広く実施してきた。 コモンズという観点から、アクセス権についての事例研究から理論研究へと展開しているところであるが、この点に関してはイギリスの国立公園なども視野に入れて研究対象の幅が広がっており、より普遍的な研究へと展開している点が研究の進展度合を示している。 イギリスのWaW(ウォーカーズ・アー・ウェルカム)ネットワークの年次大会にも参加し、全国レベルでの組織化や各地域のWaWタウンの関係性、課題と展望を把握することができ、日本のそれらとの比較も可能となってきている。また、この10周年記念大会が行われたヘブデン・ブリッジはWaWタウンの発祥の地でもあり、頻繁に言及されるフェア・トレードの理念にも鑑み、より広範な社会運動という文脈でのアプローチが可能であることを意識し始めており、実践からより広い理論への展開という理想的な流れが出来つつある。 また、日本においては、イギリスにないカレッジ・フットパスの全国組織化を担ってきている。フットパスを核としてどのような地域作りがなされうるのかという点から、従来の地域づくりの手法との接合方策の検討へと進展している。理論と実践が両輪として展開する研究となっているが、理論的には内発的発展論の成果の一部を再生するとともに、社会教育の実践としては、カリキュラムとの関連からアクティブラーニングという形態をとるようになってきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
過去3年間の研究の集積を統合し、研究発表を行い、フィードバックを得て、論文集として刊行する。 従来のフィールドワークにおける調査で、なおカバーしきれていない項目などの短期の再調査を実施し、インターネットで収集した情報も加え、まず民族誌のレベルでのアウトプットを行う。さらにそこから関連する文献の理解を進め、理論的な展開を行い、各テーマに沿った論考としてまとめる。 なお、10月末から11月にかけて、フットパスによる地域開発の先進地域であるイギリスのWaW(ウォーカーズ・アー・ウェルカム)ネットワークの会長を含め3人の理事を招聘し、代表者および分担者、日本の実践家を交えたシンポジウムを日本フットパス協会の大会(於宮城県柴田町)において実施する。 シンポジウムにおける研究発表の内容は、歩くことの意義、イギリスのフットパス・ウォーキングおよびその組織についての研究、また日本のフットパス・ウォーキングおよびその組織との比較、さらには日本におけるカレッジフットパスの試みとその展開、農泊とフットパス・ウォーキングによる地域開発の接合における問題点とその可能性、などである。 この日本の実践家をオーディエンスとするシンポジウムでの発表に対し、イギリスのWaWの招聘者からコメントをもらい、全般的なディスカッションを行う。 こうした日英の実践家との再帰的検証を経て、最終的な刊行物は編著という形で一般の出版社からの刊行を予定している。各地域の地域開発の実践家に向けた編著であり、これによって新たな地域開発と観光の方向性を示し、実践家の指針となることを期する。
|
Research Products
(6 results)