2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03301
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
交告 尚史 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40178207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 達彦 國學院大學栃木短期大学, 日本文化学科, 准教授 (20390750)
三浦 大介 神奈川大学, 法学部, 教授 (30294820)
古井戸 宏通 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30353840)
松本 充郎 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (70380300)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公法学 / 日本史 / 林学 / 水循環 / 民俗学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の課題は、森林法に基づく林地開発許可の制度の運用や、砂防法に基づく砂防事業の実施状況を調査するなかで、森林の果たす役割が河川や地下水等とどのように結びついているかを認識することにあった。 そのためには、メンバー全員が基礎知識を共有する必要があると考え、まず林野庁の行政官および林野庁OBの研究者を我々研究会に招き、林野庁の治山行政の制度とその運用、さらには制度の歴史について教示を仰いだ。続いて、新潟大学の丸井英明教授(再雇用の特任教授:専門は砂防工学)を招き、砂防行政の制度と問題点を解説して頂くと同時に、教授の留学先であったオーストリアの野渓・雪崩防護行政との比較論を拝聴した。こうして二度の研究会を持ったことにより、日本の治山行政と砂防行政の全体像を掴むことができたし、また両制度が抱えている問題点を認識することができた。 このようにして知的基盤を形成できたことにより、とくに林学研究者である古井戸は、今度は自分が林野庁主催の研究会で「近代林政における保安林制度の位置付け―欧州山岳地域の経験に学ぶ」と題する講演を行うところまで、研究を進展させることができた。 さらに、三浦を除く他のメンバーは、今期の研究の総まとめとしてオーストリアのインスブルックを訪問し、同国の「環境、農業、野渓・雪崩防護省」の行政官、州の林野行政担当者および市の関連分野担当者と面会し、さらには車で、山間の現場を案内していただいた。 以上のような次第で、全員の共通認識は着実に高まったと言える。加えて、個々のメンバーについてみると、日本の歴史研究を専門とする坂本は、長野県と群馬県をフィールドとして、江戸時代の林政における現場監視の有り様について詳細な研究を行った。また、三浦は、『沿岸域管理法制度論』なる書物を著し、森林に関する法制度を解説するとともに、森・川・海の災害防御について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のとおり、本年度は、森林法に基づく林地開発許可の制度の運用や、砂防法に基づく砂防事業の実施状況を調査するなかで、森林の果たす役割が河川や地下水等とどのように結びついているかについて、全員が基礎知識を共有できるようにすることが目的であった。その見地からみると、当初予定していた信州佐久での全員による現場観察と討論を行うことができなかったのは、一つの反省点である。 しかし、もう一つの大きな目標であったオーストリアの野渓・雪崩防護行政を背景とする基礎知識の共有に関しては、当初の目論見よりもずっと高いレベルに到達できたと考える。その大きな要因は、前出の丸井英明教授が、我々の科研費とは別予算で、我々のオーストリア調査に同行して下さったことにある。そのおかげで、我々は訪問すべき行政機関を確実に把握することができ、またドイツ語の専門用語の意味を理解することもできた。このことは、年度当初には予期できなかったことであり、その意味では、我々の計画は目論見以上に進展したと言ってもよい。 しかしながら、上記のように、目標を実現できなかった部分もあるので、総体的評価としては、おおむね順調であったと記すのが妥当であろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、比較研究の視野を広げることを最大の目的とする。すなわち、それぞれこれまで築いてきた比較研究の基盤を活用し、交告はかつての留学先であるスウェーデンの林野行政を、また古井戸と三浦は主としてフランスの林野・砂防・河川行政を、そして松本は近時の留学先であるアメリカの河川・森林行政を対象として研究を進める。坂本は、引き続き長野県と群馬県をフィールドとする歴史研究を行うとともに、砂防会館等の史料を活用した砂防史研究に着手する。さらに坂本は、その時の関心の所在に応じて、外国調査にも参加し、比較の視座の獲得に努める。 以上のように、各メンバーが自分の得意領域を基盤とした研究を発展させるのが本年度の狙いではあるが、随時集合して全員の共通認識が高まるように配慮したい。 なお、昨年度末に実施したオーストリア調査のまとめがまだ十分とは言えないので、古井戸と松本は、記憶が失われないうちに、資料等を読み込んで有用な知識を活字化し、全員で共有できる状態にもっていくよう努力する。
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Research Products
(8 results)