2016 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Studies on Policy Processes and Political Effects of Permanent Austerity in Advanced Democracies
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15H03307
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横田 正顕 東北大学, 法学研究科, 教授 (30328992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森井 裕一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00284935)
加藤 雅俊 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (10543514)
上川 龍之進 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (40346656)
八十田 博人 共立女子大学, 国際学部, 教授 (70444502)
杉之原 真子 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (80376631)
高安 健将 成蹊大学, 法学部, 教授 (90399783)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 緊縮政策 / 比較政治経済学 / 先進国 / デモクラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、各分担者は海外調査を含む旺盛な研究・調査を続け、多忙な中にもそれぞれに活字業績を中心とする十分な成果を上げることができた。こうした研究成果をもとに、年度末に仙台で合同研究会を実施し、全員がレジュメを持ち寄り、各自の研究の進展状況について報告を行った。合同研究会においては、本科研研究と比較的最近出版された『財政赤字の国際比較』(岩波書店)や『財政と民主主義』(日本経済新聞社)などとの対比の上で、本科研共同研究の趣旨が再確認された。 財政学や経済学を基礎とする先行研究では、財政再建の実現または財政赤字の克服という政策目標、あるいはなぜ財政赤字が生じるのかといった問題設定の下に、これらを従属変数とする分析が一般的である。これに対して本科研共同研究においては、緊縮財政が政治的「定数」となった先進国の現状において、むしろ緊縮政策を独立変数とする研究や、財政再建という政策目標それ自体を相対化するような研究の方向性があり得るということである。合同研究会における議論の中でも、上記の方向性に沿った興味深い指摘や発見について報告があり、活発な議論が行われた。 例えば、緊縮政策の恒常化は、南欧諸国では政治的外圧となって作用し、政党政治の流動化をもたらしたが、このことは必ずしも他の事例においては一般的ではなく、特に財政規律の憲法化を早々に実現したドイツなどではこのようなことは起きていない。また、オーストラリアでは、1980年代以降の財政制度改革が2000年代の危機を乗り切る際に重要な役割を果たした。アメリカや日本では財政政策に関するある種の政治的サイクルが見られるが、日本の場合には、他の政策を推進するため、あるいは政局の一部をなす言説として「緊縮」が用いられる傾向があるとされる。 これらの発見を踏まえて、今年度以降、さらに共同研究を深めていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者を含む一部の分担者が所属機関の役職や学会の要職についていること、また東京、大阪、仙台と、構成員の居所が三分されていることから、研究会・例会を頻繁に開催することはそもそも不可能である。この状況は初年度と変わることがなく、また今年度・次年度も大きく変化することはないであろう。 しかし、このような不利な条件の下においても、分担者は海外調査を含む旺盛な研究活動を各自展開し、年度末の研究会にてその成果を披露して互いの意見交換を図ることができた。また、この研究会では、共同研究の成果の中間報告を学会報告の形で行うこと、加えて、最終的な成果物を商業出版を通じて公表すること、といったことが来年度以降の計画として承認され、「緊縮政策の政治的帰結」をテーマとする学会報告の企画の立ち上げ準備に着手したところである(ただし、具体的な学会の選定、本科研共同研究の分担者以外の報告者の選定については、なお検討の余地がある)。 以上のことから、本科研共同研究は、おおむね順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては、前2年度と同じように文献・資料の収集と海外調査を含む調査活動を各自の責任において進め、研究を深めることに努める。その上で、年度末のワークショップ形式の研究会にて研究成果を相互に持ち寄い、意見交換を行う。その報告の一部は、平成30年度に予定される学会報告を念頭に置いたものとなる。学会報告については、学会運営の公平性に鑑み、必ずしも本科研研究で丸抱えの形によるセッションを設けることはせず、必ず第3者を交えて企画立案を行う予定である。 ワークショップに提出される予定の他の報告原稿についても更なる加筆修正を行い、平成30年度以降の出版計画に組み込んでいく。すなわち、最終年度の平成30年度においては、上記の通り学会報告を中心としながら、年度内に刊行に至るよう商業出版計画をさらに進める方針である。出版計画の準備として、夏休み明けごろに各自の執筆案を提出してもらうこととなっている。 昨今の出版事情の悪化に伴い、必ずしも商業出版社との交渉が早期にまとまり、編集作業が円滑に進行する保証はないため、年度内の刊行はあくまでも目標に過ぎないが、仮に年度内刊行が困難となった場合でも、書籍という形で成果物を公表する方針自体は堅持するものとする。
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Research Products
(17 results)