2016 Fiscal Year Annual Research Report
A paradigm of rational manufacturer/retailer versus irrational consumer: An investigation through empirical industrial organizaion framework
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15H03333
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
金澤 雄一郎 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50233854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
明城 聡 法政大学, 経済学部, 准教授 (70455426)
S.J Turnbull 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90240621)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | NEIO / random coefficient logit / GMM estimation / manufacture Stackelberg / retailer Stackelberg / vertical Nash / generalized Nash bargain |
Outline of Annual Research Achievements |
廉価で購買が頻繁に繰り返される非耐久消費財においては、習慣的に過去に購買した製品の購入を続ける惰性型(inertial)がいる一方、心理的飽和(satiation)を原因とするバラエティー探究型(variety- seeking)購買行動をする消費者も多く、これら state-dependence behavior が消費者の行動バイアスとして観測されることはマーケティングにおける Guadagni and Little (1983) の先駆的研究のみならず、行動経済学の文献で広く指摘されている。またこのような消費者に製品を提供する廉価な非耐久消費財の小売業者・生産者が、長期にわたる利潤最大化よりも、セカンド・ベストな方法として短期的な利潤最大化を行動原理とした価格設定プライシングを採用する可能性も無視できない。 一方パッケージ消費者製品の製造業者は、消費者に付加価値を提供することができる特別な機能を備えた新製品の開発に努めている。しかし、メーカーが小売業者に対して相対的に力を失っている場合には、マージンの面ではまだそのような努力が報われているかどうかは不明である。 上記の問題を踏まえ、この製造業者のマージンの問題を調査するために、先行研究で採用された枠組みを拡張し、小売業者へのパワーシフトを反映することができる小売業者の製造業者に対するシュタッケルベルグゲームを数学的に定式化したモデルを導出し、製造業者と小売業者の間の戦略的相互作用を組み込んで日本のヨーグルト市場における経済分析を行った。 この研究結果を査読論文として Cogent Economics & Finance Volume 4, 2016 - Issue 1電子版に”Is product with a special feature still rewarding? The case of the Japanese yogurt market”として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の学術的な意義の第一は、高価な耐久消費財を念頭に実証産業組織論で開発された理論的に頑健な手法を、廉価な非耐久消費財でも適用可能なように発展させることにある。第二の学術的な意義は、廉価な非耐久消費財市場を対象とする場合に見落とされてきた限定合理性およびその市場におけるエージェント間の戦略的行動を明確に定式化することによって、イノベーションと消費者の多様性(heterogeneity) が市場を通じて (simultaneity) 産業組織に与える影響を計量的に評価する基礎を一層発展させることにある。平成27年度(2015年度)基盤研究(B)の研究計画調書において、廉価で購買が頻繁に繰り返される非耐久消費財の性質そのものが原因で、市場参加者が限定合理性(bounded rationality)を行動規範として採用している可能性が否定できないことを述べた。未知の製品を購入した場合のリスク回避のために過去に購買した製品の購入を続ける惰性型(inertial)がいる一方、および心理的飽和(satiation)を原因とするバラエティー探究型(variety- seeking)購買行動をする消費者も多く、これら state-dependence behavior が消費者の行動バイアスとして観測されることを指摘した。またこのような消費者に製品を提供する廉価な非耐久消費財の小売業者・生産者が、一期先までを含めた短期的な利潤最大化を行動原理とした限定合理的な価格設定を採用する可能性についても言及した。上記の論文ではこれらの点も考慮したうえで、なおかつ製造業者と小売業者の間のゲームの間での小売業者に有利なスタッケルベルグゲームを定式化し、推定することができた点で研究計画は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進展に伴い、計画調書作成時には見えなかった重要な理論的課題が見え始めたので、それに挑戦する必要がある。 具体的には製造業者と小売業者の間で行われるナッシュバーゲニングゲームを定式化する際に、2010年に行われた重要な先行研究の一つであるMichaela Draganska, Daniel Klapper, Sofia B. Villas-BoasによるA Larger Slice or a Larger Pie? An Empirical Investigation of Bargaining Power in the Distribution Channelなどではfixed retail assumptionが広範に用いられてきた。しかしながら小売業者が力を持ってくれば、対抗する製造業者に対して、小売価格を変動させることによって販売量を変えることがある程度できるので、これを脅しに自らの利益を確保しながら、製造業者に圧力をかけてゆく方法が可能であることに気づいた。すなわち製造業者の力が強い場合にはfixed retail assumptionを用いることができるが、その逆の場合にはこの仮定そのものを緩める必要がある。すなわちゲームの力関係が直接市場価格に跳ね返ってくるモデルを作成する必要がある。これをモデル化することが、重要な課題である。その一歩を2017年INFORMS Marketing Science学会で発表し、批判を受ける予定である。
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Research Products
(7 results)