2018 Fiscal Year Annual Research Report
マンション敷地売却制度による権利調整費用の低減効果に関する実証研究
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15H03345
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Research Institution | Association of Urban Housing Sciences |
Principal Investigator |
久米 良昭 公益社団法人都市住宅学会(都市住宅研究センター), 都市住宅研究センター, 研究員 (60316643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 秀夫 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (60251633)
中川 雅之 日本大学, 経済学部, 教授 (70324853)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 区分所有建物 / マンション建替円滑化法 / 土地利用計画 / 敷地売却制度 / 区分所有関係解消 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.新たな区分所有解消制度の設計……(a)耐震性能、機能陳腐化など個別要件なく、建替計画を前提としない区分所有関係解消決議、(b)多数決要件を5分の4から緩和、(c)更新事業に参加した区分所有者による開発利益の確保、(d)借家人対策のための措置(無条件での借家権消滅)からなる制度スキームを設計した。 2.制度改善による再生事業成立可能性増大効果の推計……23区内マンション売買・賃貸情報データベースを対象として、中古賃貸マンション家賃関数及び新築分譲マンション価格関数を推計したうえで、次の指標を算出し、様々な建替制度の下での建替事業の純利益(下式)の符号を分析した。 「純利益」=「建替事業の利益」/(1+1/r)-「賃貸住宅経営の利益(今期)」 対象となるマンションは、1971年に竣工した建築後45年を経過したマンションとする。①現行制度の「80%多数決」による建替え決議の場合、再生事業の純便益がプラスとなる住戸が80%以上を占めるマンションは、全2156棟数中、3.8%しか存在しない。②一般的な区分所有解消制度が導入されれば、厳格な特別多数決要件を保持したままでも、マンション再生の実現性は高まる。具体的には、80%の特別多数決を維持しても、17.9%のマンションで再生が実現する。多数決要件を67%まで緩和すれば53.6%のマンションで、60%まで緩和すれば64.6%のマンションで再生事業が実現すると見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実証分析結果が得られて、良好な成果が得られる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
住宅建物に関する区分所有は、そもそも合理的な所有・管理システムとは言い難い。マンションも、築後年数が経過し、老朽化、耐震性能不足、社会機能陳腐化等により品質・性能が低下すると、更新が困難なため、都市の不良資産化、空き家化進展による将来のスラム化が懸念される。 こうした都市マンションストックが、建替え等により円滑に更新されていくためには、ただマンションの建替え・管理に関する制度のみならず、広く住宅売買・賃貸借を含む不動産取引に関する制度が適切に設計・運用されていることが必要である。このため、マンション法に限らず、不動産競売制度及び借家制度の改善を含めて、マンションストック更新のための法システムについて検討する。
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Research Products
(27 results)