2016 Fiscal Year Annual Research Report
省エネ行動における非価格要因の経済分析:構造アプローチと実験アプローチの融合
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15H03352
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
有村 俊秀 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70327865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 東 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (00595746)
作道 真理 一般財団法人日本経済研究所, 調査局, 研究員(移行) (70748954)
岩田 和之 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (90590042)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境経済学 / 省エネルギー / 構造推定 / フィールド実験 / 主観的幸福度 / ピア効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、家計部門の省エネを促進する方策について検討した。第1に、ミクロデータを用いて、家計の省エネ行動に関する分析を行った。分析対象としては、夏季のエアコンの28度設定、冬の20度設定を用いた。特に、社会的規範あるいはピア効果(友人が行うから自分も行う)が省エネ行動を促進するかを分析した。従来の実証研究ではピア効果分析においては、ピア効果の変数の内生性を考慮せずに分析を行ってきた。そのため、ピア効果が過大推定されている可能性があった。本研究では、友人が省エネ行動を実施すれば、自分も行動を行いやすくなるという状況をナッシュ均衡としてモデル化し、その理論モデルを取り入れた形での構造推定を実施した。分析の結果、内生性を無視した場合は、ピア効果の推定結果が過大になっていることが確認された。サーベイ調査を用いた省エネのピア効果分析には、内生性を考慮した推定が必要であることが示唆されたのである。 第2に、企業が行う環境取り組み(環境経営)が、家庭における省エネ行動促進に与える影響を分析した。特にISO14001の取得によって実施される省エネトレーニングが、人々の省エネ行動を習慣化あるいは規範となることにより、家庭でも省エネ行動を実施するかどうかを検証した。インターネット・サーベイによって得られた個票データを利用し、エアコンの夏季の28度設定、冬の20度設定、LEDへの切り替え、おふろの追い炊きを止めること等の省エネ行動を分析した。順序付きロジットモデルを用いた分析を行った結果、ISO14001を獲得している企業で働く人は、そうでない人に比べて省エネ行動を実施する確率が高いことが分かった。さらに、これらの省エネ行動による家庭における電力料金の違いについても分析をした。その結果、ISO14001を獲得している企業で働く人は、そうでない人に比べて電気料金が低くなる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにインターネット調査を終え、ミクロデータを用いたいくつかの分析を行った。第1に、構造推定アプローチを用いた研究として、ピアエフェクトが省エネ行動に与える影響を分析した。結果を論文としてまとめて、環境経済学の国際雑誌に受理、掲載された。第2に、ISO14001を持つ企業の従業員が家庭で省エネ行動を行うかどうかの影響についても分析を行った。第1段階として、ISO14001取得企業に勤める人の場合、そうでない人に比べ、より省エネ行動を行うことが示された。次に、これらの行動の差が家庭の電力料金に有意な差をもたらすのかを検証を進めた。その結果、地域差などが重要であることが示唆された。これらの結果を国際学会で発表した。第3に、個票を用いて、省エネ製品購入の補助金が、省エネ製品の購入を促進し、結果として省エネ行動の停滞(リバウンド)を起こすのかどうかを検証した。その結果、リバウンドが行われる可能性が示唆された。第4に、個票を用いて、主観的幸福度が省エネ行動を促進するかどうかの分析を進めた。現在、結果を取りまとめ中である。 第5に、実験アプローチを用いた研究として、スマートメーターが省エネ行動に与える影響に関する社会実験を開始した。初めに、スマートメーターを設置してくれる事業者を探し、そこにスマートメーターを設置した。そして、その事業者の顧客がスマートメーターがあることにより省エネ行動が促進されるかどうかの実証実験を開始した。 最後に、家庭を対象とした実験アプローチの研究のために、環境経済学並びに環境心理学の文献レビューを行った。さらに実験対象となる家庭の選定方法について検討を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的にはこれまでの研究をそのまま推進する。詳細は以下の通りである。第1に、ISO14001企業の従業員が、家庭の省エネに与える影響分析については、論文をとりまとめ、ディスカッションペーパーとして発表する予定である。その後、セミナー報告を経て、学術雑誌に投稿する。 第2に、エコポイントのリバウンド研究については、今後、セミナー、学会報告を経てディスカッションペーパーとしてまとめる予定である。 第3に、主観的幸福度が省エネ行動を促進するかどうかの分析については、分析結果をまとめ、セミナー、学会報告を経てディスカッションペーパーとしてまとめる予定である。 第4にスマートメーター社会実験については、実験を継続し、観測数を増やす。さらに、顧客へのメッセージが省エネ行動に結びつくのかどうかも研究を行う。この際、メッセージの内容によって省エネ行動が変わるかどうかも検証する。これらの実験を踏まえて、実験結果の分析を開始する。 最後に、家庭を対象とした実験研究については、対象となる家庭を選定する。また、実験のトリートメントグループに対する情報提供の在り方を確定し、実験を開始する。
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Research Products
(6 results)