2015 Fiscal Year Annual Research Report
人口構成の変化と国際資本移動に関する研究:為替レートと対外投資の収益性への影響
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15H03368
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
大野 早苗 武蔵大学, 経済学部, 教授 (40307145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊本 方雄 東京経済大学, 経済学部, 教授 (30328257)
松原 聖 日本大学, 商学部, 教授 (40336699)
黒坂 佳央 武蔵大学, 総合研究所, 研究員 (80139401)
鈴木 唯 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (80746694)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 少子高齢化 / 国際資本移動 / 為替レート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは、人口構成の変化が貯蓄投資バランスや国際資本フロー、為替レートなどに与える影響を分析するとともに、対外純債権の収益性と対外純債権の累増ペースとの関連を考察することを目的とする。 まずは、人口構成の変化と貯蓄投資バランスや国際資本フローとの関係に関する理論的分析について包括的にサーベイ研究を行った。具体的には、人口構造の変化を世代重複モデルに取り入れた多国間一般均衡型世代重複モデルに基づき、人口構造の変化が国内貯蓄、国内投資、および経常収支に与える影響を考察した。その際、遺産動機や予期せぬ支出に対する予備的動機のモデルへ反映を試みた先行研究、年金制度の存在を前提とした先行研究、あるいは危険回避的な主体を前提とする貯蓄・投資決定行動に関する先行研究など、より現実的な想定に基づく理論モデルから導かれる結果も確認した。さらに、人口構成の変化が貯蓄投資バランスに与える影響や資産価格に与える影響に関する実証分析に関しても既存研究の整理を行った。研究成果の一部は、熊本(2015)にて発表した。 また、対外純債権に関する為替レートの評価効果を検証した。近年の我が国の経常収支において、貿易収支の比重は低下する一方で第一次所得収支の比重が高まる傾向が顕著である。さらに、世界最大の対外純債権を保有する我が国では、経常収支というフロー変数の動向のみならず、ストック変数の評価効果によって対外純債権の累増ペースが左右されやすい。そこで、まずは為替レートの評価効果にとりわけ着目し、Lane and Shambaugh (2010)やBenetrix (2015)に基づき、我が国の対外純債権の累増ペースに与えた影響を検証した。研究成果は、大野(2015)、黒坂(2016)などにて報告した。さらに、分析対象国を広げ、資産構成の違いによる評価効果の相違に関して比較衡量した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、人口構成の変化と貯蓄投資バランスや国際資本フローとの関連に関する理論的考察や対外純債権の収益性に関する分析などをかなり進めることができた。実質為替レートの分析や直接投資の分析はやや遅れ気味だが、対外純債権の評価効果に関する分析を新たに実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度にて行った理論分析に基づき、人口構成の変化による影響に関する実証分析に着手する。本研究の主たるテーマは対外純債権の収益性との関連を考察することにあるため、投資対象資産がライフサイクル・ステージによって変化することを考慮した上でマクロ的なポートフォリオ構成に影響を与え、対外純債権の収益性に及ぼす影響を検証したいと考えている。そこで、理論モデルの拡張を検討した上で、実証分析の分析手法を検討する。また、我が国の長期的な経常収支動向に関してセミナー勉強会を平成28年7月に開催する予定である。 対外純債権の評価効果の国際比較に関しては、分析結果を整理し、近日中に公刊することをめざす。また、対外純債権の収益性に関して、直接投資の収益性に関する分析に着手する。当該テーマに関してセミナー勉強会を開催して知見を広げるとともに(平成28年6月予定)、データ収集を進める。 また、人口構成の変化が産業構造の変化を通じて実質為替レートに及ぼす影響に関する分析に着手する。高齢化の進展はサービス産業の占有率の拡大につながることが予想される。森川(2015)はサービス産業の生産性に関して考察しており、これらを参考に、バラッサ・サミュエルソン定理に基づき、各産業の生産性と実質為替レートとの関係について分析を進める。
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Research Products
(13 results)