2015 Fiscal Year Annual Research Report
流動性指標の時系列分析:企業倒産に影響を及ぼす金融経済指標間の因果関係解明
Project/Area Number |
15H03373
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大野 忠士 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (10527930)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 流動性リスク / 企業倒産 / システミックリスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、企業の信用リスク・流動性リスクに関する研究である。企業倒産を引き起こす要因となる金融経済指標相互間(金利や株価、ボラティリティ指標など)の因果関係を解明しようとしている。まず米国金融経済指標のなかから倒産発生を有意に説明するもの(金利スプレッド、株価、株価ボラティリティ、イールドカーブスプレッドなど)を選び出す。有意な変数の組み合わせで月次倒産数を予測するモデルを構築する。また有意な核指標ごとに時系列モデルを構築した上で、各変数時系列と倒産数時系列の因果関係、また各変数時系列相互間のGrangerの因果検定を行うことにより因果関係を解明する。まず1年目には市場データが充実しマーケットの透明性が高い米国市場で研究を進め、2年目に日本市場、3年目に欧州市場(ないしアジア市場)を対象に研究に範囲を拡大することを予定している。このことを通して各市場ごとに経済環境の変化から倒産数変化にいたる経路上の特徴・差異が明らかになる。世界の金融機関は2008年のリーマンショック、2011年のギリシャ危機等繰り返し金融危機に直面しており、監督官庁や金融機関の企画・審査部門ではいずれ到来する不況・倒産に備えた分析が一段と重要になっている。このため、金融経済指標における兆候の発生から倒産にいたる因果メカニズムを解明し、指標の変化を体系つけることはシステミックリスクの発生を防止し金融の安定を図ろうとする日銀・金融庁等監督機関にとって重要な意味を持つ。また、金融機関のリスクマネジメント上の進歩にも大きく寄与するものである。。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は米国データを用いて研究を行った。2000年1月から2014年12月までの15年間の米国月間倒産数データを用いて倒産数を予測するモデルを構築した。倒産数予測に有効な金融経済指標としてはボラティリティ指標、金利指標等の10変数があり、この10変数の組み合わせから求めた最終モデルはS&P500株クラッシュ、株価から求めた非流動性ファクター、インターバンク流動性スプレッド、レポ(翌日物)取引金額、株式市場ボラティリティの5変数を説明変数とするものとなった(調整済R2=0.837)。倒産数予測に有効な10変数を対象に相互のGrangerの因果性を調べたところ非流動性ファクターがボラティリティ指標、金利指標に影響を及ぼし、さらにボラティリティ指標が倒産数に影響を及ぼすという因果関係が存在することが判明した。また流動性危機時には倒産数の増加がCP金利スプレッドの拡大を引き起こすという負のスパイラルが存在することも示された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は米国市場データを用いて金融経済指標と倒産数との因果関係を解明した。本年度は日本市場を対象に研究を進める予定である。2000年から2015年までの倒産数時系列データと金融経済指標時系列データを作成し、こうしたパネルデータから倒産数予測モデルを構築するとともに、説明変数相互間の因果関係(Grangerの意味で)を解明する予定である。
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Research Products
(2 results)