2016 Fiscal Year Annual Research Report
流動性指標の時系列分析:企業倒産に影響を及ぼす金融経済指標間の因果関係解明
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15H03373
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大野 忠士 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (10527930)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 流動性リスク / 企業倒産 / システミックリスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は企業の信用リスク・流動性リスクに関する研究である。企業倒産を引き起こす要因となる金融経済指標を発見し、その因果関係を解明しようとしている。日本市場における金融経済指標(金利、株価、ボラティリティ指標など)13の中から企業倒産数を有意に説明するものを選び出した。そのうえで、有意な変数(ラグ付き)を組み合わせて過去16年間(2000/4~2016/3)の月次倒産数を予測するモデルを構築した。その結果、TIBOR-コールスプレッド、イールドカーブスプレッド、対数CP-コールスプレッド、TIBOR-TBスプレッド、対数株式下落幅の5変数からなる線形モデルが構築された(調整済みR2=0.881)。単回帰で説明力ある8変数を因子分析したところ、金利スプレッド因子とボラティリティ因子に分解された。この8説明変数の時系列データから変数相互のGrangerの因果関係検定を行ったところ、①景気後退の指標であるイールドカーブスプレッドの拡大がまず最初に起こること、②TIBOR-コールスプレッドやTIBOR-TBスプレッドという金融機関の短期調達コスト上昇が一般企業の市場調達コスト(CP-コールスプレッド)を引き起こすこと、③金融機関の超短期調達手段であるレポのスプレッドはTIBORコストとの間で互いにフィードバックしあって拡大する関係にあること、④最終的にはCP-コールスプレッド、レポスプレッド、株式ボラティリティという3変数が倒産数増加の直接的な要因になっていることが判明した。こうした金融経済指標における兆候発生から倒産委いたる因果関係の解明はシステミックリスクを予防し、金融の安定を図ろうとする日銀・金融庁等監督機関にとって重要な意味を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は日本市場データを用いて研究を行った。日本データを用いた倒産数予測モデルが構築できた他、説明変数の因子分析、説明変数間のGrangerの因果関係解明も行えた。 平成27年度にはは既に米国データによる研究を完成させており、進捗は当初の予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は英国データの分析を行うとともに、3市場での指標と倒産数の関係について分析を深める予定である。2000年から2016年までの倒産数データと各種金融経済データを収集しまずは単回帰により倒産予測に有意な変数を選び出す。そのうえでそれた変数の組み合わせにより倒産数予測モデルを構築する。さらに有意な説明変数の因子分析を行いグループ分けを行う。また説明変数の時系列データから説明変数相互の因果関係を解明し、金融経済指標の変化から倒産委いたるプロセスを明確にする。英国データからの分析を終えたうえで、米国市場、日本市場との比較から3市場での金融経済指標の特徴、異同を解明する予定である。 またこれらの成果は国際会議、国内学会等で発表する予定である。
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Research Products
(3 results)