2015 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレートガバナンスと企業行動、企業パフォーマンスの国際比較研究
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15H03375
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 光太郎 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (90381904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, その他の研究科, 准教授 (60454469)
蟻川 靖浩 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (90308156)
池田 直史 東京工業大学, 社会理工学研究科, 助教 (90725243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経営財務 / 国際比較 / 企業の投資行動 / コーポレートガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究初年度であり、具体的な研究設計の検討、研究設計に沿った先行研究の確認、実証研究のベースとなるデータベースの構築、実証研究で注目する変数の構造の確認などの作業に多くの時間を費やした。その中でも重要となる研究設計としては、研究計画に基づき、4本の研究課題を具体的に設定した。 第1の研究課題は、過去20年以上続いている日本企業の低収益、低成長、低株価の要因を、コーポレートガバナンス要因に注目し、国際比較の観点から検証するものである。本研究についてはデータベースを構築し、経済産業研究所(RIETI)の研究会報告、米国ユタ大学教授のJeffrey Colesとの研究打ち合わせで得たコメントを踏まえて分析を改善し、現在Discussion Paperを作成中である。本研究は、5月にRIETI政策シンポジウムで報告予定である。 第2の研究課題は、経営者のAttitudes(個人的な態度)の企業行動への影響に関する研究である。本研究は、経営者へのサーベイで集めた経営者の楽観度やリスク回避度といったAttitudeの変数が企業の投資行動に及ぼす影響を国際比較の観点で検証している。本研究は、平成27年12月の行動経済学会で報告し、本年度の日本ファイナンス学会(6月)で報告予定である。 第3の研究課題は、コーポレートガバナンスコードの企業価値への効果を国際比較の視点からの検証である。日本でも2015年に成長戦略の一環としてコーポレートガバナンスコードが導入された。コードで要求している項目のうち、特に社外取締役比率に注目し、国際比較の観点で企業価値への効果を検証中である。 この他、企業買収制度に関する国際比較を行い、その企業価値への効果の検証を開始している。その準備段階として、国内の買収法制度に関する検証を行い、査読論文1本の発刊が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、本年度は先行研究のサーベイ、データベースの構築、具体的な実証分析の設計、実証分析に使用する変数の構造の分析、仮説検証のための予備的な分析の実施としている。これまでに、先行研究のサーベイ、データベースの構築、実証分析の設計、変数の構造の理解と予備的な分析を、「研究実績の概要」で示した複数の研究課題に対して実施している。 具体的には、国際比較の視点でのコーポレートガバナンスの要因に注目した日本企業の低パフォーマンスの検証について、仮説を支持する分析結果を得て、本年6月のRIETI政策シンポジウムでの報告が決定している。今後は、分析の精緻化を進めるとともに、論文ドラフトを精緻化し、海外学会での報告に向けた準備を進めることを予定している。 第2の研究課題は、経営者のAttitudes(個人的な態度)の影響に関する研究である。本研究は、第一段階の分析を終え、論文ドラフトを作成し、27年度行動経済学会で報告し、本年度の日本ファイナンス学会(6月)で報告予定である。第3の研究課題であるコーポレートガバナンスの効果に関する国際比較研究についても、第一段階の分析結果を得て、論文ドラフトを作成している。第4の課題として、企業買収制度と企業価値への効果の国際比較研究を計画しているが、その第一段階として国内の企業買収制度に関する分析を行った。この成果は、公開買い付け制度研究会の刊行予定の本の一章となるほか、実証分析論文が日本経営財務研究学会の査読誌である『経営財務研究』への掲載が決定している。 なお、上記の第1、第2の研究課題は、本年3月に米国に出張し、米国の代表的な研究者3名と討議し、有益なコメントを得ている。今後の分析の精緻化に活かす予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では、「現在までの進捗状況」に記載した通り、おおむね順調に進展しているため、現状の研究活動を継続することを予定している。各研究とも、おおむね事前に設定した仮説を支持する結果を得ているが、分析の精緻化が必要であり、研究会、学会における報告に対するコメントを踏まえて、改善作業を行っていく計画である。現時点で4本の研究課題を設定し、それぞれ研究チームを形成して分析を進めているため、本年度はその完成度を高めることに目的をおいている。 さらに、これまでの分析結果で、株主構成や株主の性格が企業の投資行動に影響を持つとの結果を得ているため、この点をさらに深堀りして検証することを計画している。具体的には、機関投資家が投資先企業に対してもたらすガバナンス効果に注目している。この点については、本年度中に研究設計を進め、研究としての実現性を判断する計画である。 また、日本における産業再編の遅れが企業の低パフォーマンスにつながっているとの指摘を踏まえ、産業再編の進捗状況が日本企業の財務的なパフォーマンスに与える影響についても検証を進める予定である。現時点で国内のサンプルを収集しているが、これを国際比較可能な分析とするために拡張することを計画している。 それぞれの研究課題に関する論文ドラフトが準備できた段階で、海外学会等に投稿準備を進めるほか、米国の大学を訪問し、第一線のファイナンス研究者との意見交換を行う予定である。
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Research Products
(7 results)