2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on the Diffusion Strategies of Standardized Technologies
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15H03376
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
安本 雅典 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (40293526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
糸久 正人 法政大学, 社会学部, 准教授 (60609949)
渡邉 万里子 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (70736701)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オープン / コンセンサス標準(化) / 実装 / コントロール / 知財 / 複雑システム / ビジネス・エコシステム / 社会的課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、平成28年度は、移動体通信、車載エレクトロニクス(交通システム)、産業システム等について、主として以下の点を検討した。 (1)コンセンサス標準に関わる技術の知識のタイプやそれらの普及戦略について、文献・公刊資料の検討や実務家との密接な意見交換を通じて、概念を整理した。とくに大規模で複雑なシステムの実現には、様々な企業が協調してコンセンサスを形成しながら、システム全体を構想し、個々の技術を標準化していくことが必要となる。こうした標準化では、仕様や必須特許は公開・引用されて普及するため、個々の技術の専有は容易ではない。こうした状況に対し、本研究では、個々の技術を統合して実装するためのシステム知識を保持することが、重要となってくることを指摘した。 また、(2)(1)をふまえながら、文献検討、ヒアリング調査、データ分析を通じて、主要企業における普及戦略と収益化に関わる戦略を検討した。移動体通信分野についての分析の結果、主要企業は、技術の実装を促す必須特許を複数の標準仕様間にわたって申請し、そうした必須特許のネットワークによってシステム知識を構築していることが明らかとなった。主要企業は、このようなシステム知識によって、実装で先行し、産業や技術をコントロールすることで、優位を保持しうる可能性がある。 これらをふまえて、本研究では、(3)標準仕様そのものより、むしろ主要企業の必須特許が他企業に引用され、実装に活用されることによって、標準技術の普及が進み、エコシステムの形成を促す可能性があることを指摘した。必須特許の引用は、他企業への技術のスピルオーバーによる技術の普及を促し、様々な企業による技術の実装(製品化)や事業展開を可能にする。一方で、標準化推進企業は、それらの個々の技術を統合するシステム知識によって、エコシステムをコントロールできる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献レビュー、調査・分析、実務家との意見交換を進めることにより、基本的な概念・枠組みの整理とデータ(公開資料、ヒアリング成果、量的データ)の蓄積・検討を進めることができた。また、これらについて途中成果を発表・出版することもできた。一方、関連する公的な委員会・会合、実務家との会合・調整、学内・学会業務等に時間を要したことから、予定していたデータ分析、成果執筆、海外ジャーナルを含む論文公刊に多少遅れが生じている。これらの点から、②とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、先行研究やデータの整理、調査によるデータの確認・追加収集、データベースの分析をさらに進める。それらの成果にもとづき、企業における収益化戦略および多様な企業によるビジネス・エコシステムの発達と関連づけながら、標準の普及戦略の分析と検討を進める。 より具体的には、昨年度までに検討された枠組みをふまえ、社会的課題に対応した大規模なシステム(例えば自動車、情報通信、インフラにわたる自動運転などのICTのシステム)を中心に、実装のためのシステム知識やその普及、およびそれらにもとづく企業間ネットワークの発達について、調査や分析・検討の精緻化を図る。 これらの複雑化しているシステムでは、標準化による技術や知識の公開がエコシステムの形成・発達を左右するようになっている。こうした状況では、標準技術を実装するうえで不可欠なシステム知識を蓄積し、それによってエコシステムの形成・発達をコントロールすることが、企業戦略上、重要となってくると考えられる。こうした観点から、産業動向、政策的プログラム、制度的な枠組みを理解しながら、企業間ネットワークや主な企業の技術戦略について、時系列を意識した分析を進める。また、成果については、国内外で、講演や記事執筆による社会的発信を進めるとともに、学会・研究会やワーキングペーパーによる発表や国内外の論文への投稿を、より積極的に行っていく。また、昨年度に引き続き、国内外で投稿中の論文が複数存在するため、刊行を目指す。
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Remarks |
新年度に当たり改訂中。当該科研費に特化したものではないが、関連業績・活動を紹介している。
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Research Products
(16 results)