2016 Fiscal Year Annual Research Report
地域福祉専門職による過疎地域支援のための診断指標の開発-関係性の分析-
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15H03442
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Research Institution | Chubu Gakuin College |
Principal Investigator |
大井 智香子 中部学院大学短期大学部, 社会福祉学科, 准教授 (60352829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 和良 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (20275431)
小松 理佐子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (40301618)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地域福祉 / 過疎地 / 地域再生 / 社会資源 / 関係性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、社会資源の不足する過疎地域において福祉的な支援を必要とする状態にある高齢者の生活の継続を可能にするための地域福祉専門職による地域支援の方法の開発である。とりわけ地域支援の前提となる地域診断に焦点をあて、従来国の政策で用いられてきた過疎地域の定義や「限界集落論」などにみられる人口要件や財政力要件を指標とする診断指標とは異なる質的な診断指標の開発を目標としている。2年目である2016(平成28)年度は、初年度の成果をふまえ調査を開始し、分析枠組みを具体化するための理論研究に取り組んだ。 (1)研究会の開催:第1回2016年4月3日、第2回2016年7月4日、第3回2016年9月2日、第4回 2016年9月19日 (ヒアリング調査と同日開催)、第5回 2016年12月26日、第6回 2017年3月26日の計6回開催した。 (2)ヒアリング調査の実施:日常生活における関係性の実態把握のため、調査枠組みに基づきヒアリング調査を実施した。調査先は、北海道北見市、山形県最上郡最上町、岐阜県加茂郡東白川村、三重県南牟婁郡紀宝町、北海道札幌市、熊本市 などである。 (3)実践事例の収集・検討:調査枠組みに基づき、各メンバーがそれぞれ事例の収集にあたり、研究会で検討を行なった。 (4)このほか行政等の協力を得ながら当該地域の地域生活構造把握のために必要な資料を収集した。これらのデータは、本研究が目的としている診断指標の開発について検討する際の有用な材料として考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗を阻害することととなった要因としては、主要メンバーである永井が産前産後休業ならびに育児休業に伴い、年度当初より研究分担者から外れたことである。このため、研究計画を見直すこととなり、2年目に計画していた調査をヒアリング調査中心のものとして実施することとなった。 過疎地において最も問題視すべきことは、人口が減少していくことのみでなく関係性が断ち切られていくこと=「関係性の貧困」にあり、関係性が断ち切られていく過程を視野にいれ、時間経過に応じた地域支援の方法が必要になるという、昨年までに得られた仮説に基づき研究を進めた。具体的には、過疎化の過程にありさまざまな「切断」局面に直面していると考えられる地域社会において、起きている課題と人々の生活を支えている要因を明らかとするため、ヒアリング調査を重ね、研究会において検討・分析を行った。さまざまな「切断」局面とは、本研究の計画時に想定した①地理的切断(中心都市との距離、中山間、離島)、②環境的切断(被災による切断)、③人為的切断(個人のライフヒストリーによる支援者からの切断、政策による切断)であり、分析枠組みとして用いている。 社会資源も人口も限られている地域社会においては、専門機関、施設、行政などの専門職のみでなくボランタリ‐な関わりの住民などが、それぞれの専門性や役割を核としてそれを広げた領域をカバーし、部分的には他と融合させて業務ならびに活動を展開させることで課題解決に取り組んでいる実態が明らかとなった。これらの「本来業務を核とした広がり・融合」した支援活動が、人口減少と社会資源の縮小が進む地域社会を持続させる方策となり得るのではないか。その展開には地域特性があり、時間経過に応じた地域支援が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施した調査の分析、加えてメンバーそれぞれが収集した事例の整理検討を行なうとともに、実態調査を実施する。また、永井は育児休業から職場にもどる10月に研究分担者として参加する予定である。 (1)日常生活における関係性の実態調査:(調査対象)地域支援を行っている支援者。調査先は平成27年度の調査をもとに確定)、(調査方法)ヒアリング調査、(調査内容)地域の住民間の関係や、地域支援の実態や困難性など (2)福祉的な支援を必要とする人への支援をめぐる関係性の実態:①支援者対象調査 (調査対象)民生委員・児童委員、保健師、地域包括支援センターの専門職、行政職、議会議員など(調査方法)半構造化面接によるインタビュー ②当事者対象調査(調査対象)公民館など地域の交流の場を利用している高齢者、(調査方法)他計式アンケート調査 (3)新たな関係性の創出方法の検討:(1)(2)で示した本調査の結果を比較分析する。それをもとに、介入の方法についての検討を行う。 (4)関係性の分析枠組みの再検討:(1)~(3)の作業を行いながらこれまでに仮説として設定した分析枠組みの妥当性を検討し、地域診断の指標を作り上げていく。
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Research Products
(2 results)