2016 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Emotional/Neuroscientific Basis of Forgiveness
Project/Area Number |
15H03447
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大坪 庸介 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (80322775)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 昌宏 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00533960)
大平 英樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90221837)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | コストリー・シグナル / コミットメント / 謝罪 / 赦し / 機能的磁気共鳴画像法 / 眼窩前頭皮質 / 孤独感 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度に実施したfMRI研究により、コストのかかる謝罪を受け取った場合には、口頭だけの謝罪を受け取った場合と比較して内側前頭前皮質、両側TPJ、楔前部といった心的推論ネットワークが活動することが明らかになった。これは、コストのかかる謝罪が和解意図のシグナルとなっているという仮説を支持する結果であった。この結果については、H28年度に論文化し、現在、学術雑誌において審査中である。 H28年度には、同様のパターンが和解場面だけに限定されるのか、友人からのコミットメント・シグナル(関係を大事にしており将来裏切ることはないというシグナル)にも拡張できるのかを検討した。実験参加者には友人が自分との関係にコミットしていることを示す・コミットしていないことを示唆するシナリオを提示し、その際の脳活動をfMRIにより調べた。その結果、行動データのパターンとしては、コストのかかるコミットメント・シグナルによりもっとも相手への親密さが感じられ、相手がシグナルを出し損なった場面を想像したときに関係への悪影響を推定していた。これに対応する形で、海馬、眼窩前頭皮質がコミットメント・シグナルがある条件で有意に活動していた。眼窩前頭皮質は価値の計算に関係することが知られており、コミットメント・シグナルは意図のシグナルとして処理されるのではなく、相手への関係価値の調整に使われている可能性が示唆された。また、コミットメント・シグナルへの感受性については孤独感が関係することが知られているが、今回の実験でも孤独感の高い参加者の眼窩前頭皮質の活動が低くなっていた。 これらの結果から、謝罪による和解意図のシグナルは、和解場面に限定的で、それ以外の様々な社会的シグナルには一般化できない可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度に効果的謝罪に関係する脳部位を明らかにし、H28年度は赦しの至近要因である関係価値を計算する脳部位を特定した。H28年度に検討したコミットメント・シグナルは謝罪と同様に心的推論ネットワークにより処理されるのではないかと考えていたが、非社会的刺激の価値を評定する場合と同じく眼窩前頭皮質により査定されている可能性が示唆された。これは当初考えていた結果ではないが、それ自体が興味深い知見であり、論文として公刊可能な知見である。 これらの事情を総合して考えると、本研究は仮説通りの結果が出なかったという部分はあるが、検討したい領域について一定の知見を蓄積しつつあり、順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
H29年度には謝罪が意図のシグナルであるというH27年度の知見に立ち戻り、謝罪主体が個人ではなく、それ自体としては意図を持つことができない集団(例えば、組織や国家)であるときには、謝罪を脳がどのように処理するかを検討する。もし意図をもつことがない主体により謝罪がなされても心的推論ネットワークにより謝罪が処理されるとすれば、謝罪は心的推論ネットワークにより自動的に処理されるという仮説の妥当性を確認することができる。 具体的にはH29年度には、組織による違反場面などを提示し、それに対して組織がコストをかけて謝罪する・コストをかけずに謝罪する・謝罪しない場面を示し、参加者の心的推論ネットワークがコストのかかる謝罪条件でのみ高くなるかどうかを検討する。コストのかかる謝罪条件でのみ心的推論ネットワークが活動すれば、個人の謝罪と同じように組織の謝罪が処理されることが示されたことになる。一方、組織の謝罪が異なる方略で処理されているとすれば、それがどのような部位であるかを明らかにすることができる。
|
Research Products
(6 results)
-
-
-
-
-
[Presentation] Why we forgive our valuable partners: Rational calculation, emotional adaptation, or a mixture of both?2016
Author(s)
Smith, A., Yagi, A., Yamaura, K., Shimizu, H., & Ohtsubo, Y.
Organizer
Human Behavior and Evolution Society
Place of Presentation
Vancouver, Canada
Year and Date
2016-06-29 – 2016-07-02
Int'l Joint Research
-