2015 Fiscal Year Annual Research Report
関係への所属はわれわれに何をもたらすか-他者との関係の行動科学的検討
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15H03449
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
浦 光博 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (90231183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 健一郎 広島大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (20587480)
柳澤 邦昭 京都大学, こころの未来研究センター, 助教 (10722332)
川本 大史 東京大学, 総合文化研究科, 研究員 (50761079)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 関係性への所属 / 社会的温かさ / 存在の有意味性 |
Outline of Annual Research Achievements |
対人関係への所属やそこからの離脱が人にどのような影響を及ぼすのかについて4つの視点からアプローチした。まず、孤独感が存在の有意味性を損なう可能性について、(1)横断的な調査デザイン、ならびに(2)縦断的な調査デザインによって検討した。(1)では、孤独感の強い者は過去と現在の存在の有意味性を低く評価し、それがさらに未来の有意味性を低下させる可能性が示された。この関連性は楽観性の影響をコントロールしても認められた。(2)では2ヶ月間の間隔を置いた縦断的な調査データを分析した結果、Time 1の存在の有意味性、自己統制、婚姻状況(既婚か未婚か)、日常苛立ちごとの影響をコントロールしてもなお、Time 1における孤独感がTime 2における存在の有意味性を損なうことが示された。 次に、社会的な排斥が体温に及ぼす影響について実験的に検討した。CyberBall課題中の顔の表面温度をサーモグラフによって測定したところ、排斥条件において表面温度が高まっていることが示された。 第3に、孤独感が体温知覚を仲介して存在の有意味性に影響する可能性について検討した。縦断的な調査データを分析した結果、孤独感の強いものは体の冷えを強く感じ、それが過去と現在の有意味性を損なう可能性が示唆された。 第4に、気温と体温感覚が存在の有意味性に及ぼす影響について、体温感覚尺度と回答者の居住する都道府県の気象データを用いた分析を行った。分析の結果、存在の有意味性に及ぼす都道府県の年間平均気温と個人の知覚する体温調整機能の交互作用効果が有意であった。年間平均気温の低い都道府県に住む者は、体温調整機能が高く知覚される場合よりもそれが低く知覚される場合に有意味性を損ないがちであった。平均気温の高い都道府県に住む者の存在の有意味性は体温調整機能の影響を受けなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画として(1)所属の存在論的機能についての検討、(2)所属の存在論的機能と体性感覚としての温かさ-冷たさとの関連の検討、(3)他者との関係と他の資源との代替可能性の検討の3つを挙げていた。【研究実績の概要】に述べた成果から、まずこれらの計画のいずれもが順調に進められていることが分かる。 加えて、計画にはなかった新たな課題への展開も認められる。具体的には、第4の実績として示した、存在の有意味性に及ぼす都道府県の年間平均気温と体温調整機能との交互作用効果についての知見である。これは、気象条件と存在の有意味性との関連を個人の知覚する体温調整機能が調整する可能性を示したものである。上記(1)から(3)の知見と考え合わせることで、社会的温かさ研究の新たな可能性を切り開くものであると評価できる。 以上のことから、本研究課題は当初の予定以上の伸展を示すものであると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の成果を踏まえより発展的に研究を推進する。具体的には以下のとおりである。 (1)所属の存在論的機能について、孤独感だけでなく被排斥経験が存在の有意味性とどのように関連するのか、その関連性を調整する要因として何があるのかを検討する。(2)昨年度に得られた排斥されることで顔の表面温度が上昇するという知見は、一見すると先行知見と矛盾するものであることから、その生起機序についてより詳細に検討する。(3)他者との関係と他の資源との代替可能性について、昨年度は楽観性、自己統制、婚姻状況、世帯年収といった諸資源を取り上げ、これらとの代替可能性を検討した。今後は資源の範囲を広げ、関係所属に固有の機能があるかについてより多面的に検討する。(4)昨年度は気象条件と存在の有意味性との関連を個人の知覚する体温調整機能が調整する可能性が示された。この知見を発展的に展開し、関係所属、体温知覚、気象条件、存在の有意味性の間の関連性を詳細に検討する。
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Research Products
(7 results)