2017 Fiscal Year Annual Research Report
What does belonging to relationships bring to us? : Behavioral science of relationship with others.
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15H03449
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
浦 光博 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (90231183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 健一郎 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (20587480)
柳澤 邦昭 京都大学, こころの未来研究センター, 特定助教 (10722332)
増井 啓太 追手門学院大学, 心理学部, 特任助教 (00774332)
川本 大史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (50761079)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 関係への所属 / 存在論的機能 / 社会的温度調整 / 心理社会的資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は(1)関係所属の存在論的機能の検討、(2)所属の存在論的機能と社会的温かさとの関連、(3)他者との関係と他の資源との代替可能性の3つのテーマについて検討した。 まず(1)については、死をイメージした際に生じる時間割引効果(Yanagisawa, K., et al., 2017)や人生をイメージした際の脳内の反応(柳澤邦昭・他, 2017) に関しての検討を行った。 (2)については、社会的温度調整理論の観点から2つの研究に取り組んだ。1つは、居住地の寒さを調整することの孤独感抑制機能の検討であり(浦・川本, 2017)、もう一つは、温暖な気候が冷たい心を持つ者(Dark Triad得点の高い者)の向社会的行動を促進する可能性についての検討(Masui, & Ura, 2017)である。前者では、寒い地域に居住する者の孤独感が、冷たさの調整によって緩和されることが示唆され、後者では、Dark Triad得点(DT得点)の高い者は一般に向社会的行動をとる傾向が低いが温暖な地域に住む者は、DT得点の低い者と同程度の向社会性を示すことが示唆された。 (3)については、居住地の人の流動性(都道府県別の転職率)がDT傾向の高い者の他者に対する攻撃意図にどのように影響するかを検討した。サイコパシー傾向の高い者は一般に攻撃意図が高いが、流動の低い地域に住む高DT傾向者は、それの高い地域に住む高DT者よりも心理言語的暴力意図、身体的暴力意図のいずれも低い傾向を示した。人材の流動性という地域変数が個人の関係所属の安定性を介して、高サイコパシー傾向者の反社会性を抑制する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したとおり、昨年度に予定していた検討課題について、着実に成果をあげることができている。一方で、昨年度の成果はいずれも学会発表の段階にとどまっており、単年で見ると、必ずしも当初の計画以上の進展とは評価しにくい状況ではある。 しかし、一昨年度までの3年間の進捗はいずれも当初の計画以上の進展を示していること、昨年度の成果も十分な妥当性を持つものであり、近い将来に査読のある学術論文として刊行されることは十分に期待できることから、昨年度についても(1)当初の計画以上に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を基に、今後以下の4つのテーマについての検討を進める。 (1)人生の有意味性に関連する心理社会的資源の整理:これまで関係への所属の存在論的機能(Yanagisawa,et al.,2015, Yanagisawa, et al. 2017)、孤独感と温かさの知覚ならびに人生の有意味性との関連(浦・川本,2015,浦, 2016,2017)について検討を重ねてきた。今後は、社会経済的地位や人材の流動性といった社会構造的な要因と関係所属ならびに人生の有意味性との関連について調査ならびに実験的な検討に取り組む。 (2)反社会的行動の抑制要因としての関係所属:これまで居住地の暖かさが反社会的パーソナリティの持ち主の向社会的行動に及ぼす影響(Masui & Ura, 2017)、居住地の人材の流動性が反社会的パーソナリティの持ち主の反社会的行動(浦・増井, 2017)に及ぼす影響を検討してきた。今後は、階層帰属意識や格差意識の影響を加味した検討を進める。 (3)関係への所属が個人と社会に及ぼすネガティブな影響:人は、温かな関係性からの離脱をためらいがちである。しかし、関係性の持つ規範や社会構造上の位置づけによっては、関係所属が個人や社会に対してネガティブな影響をもたらす可能性がある。今後は、このような関係所属のネガティブ効果についても検討する。 (4)社会的排除の生成・維持過程における心理社会的資源の影響:人は誰しも弱さを持つが、安定的な関係性に所属していれば、そこから提供される資源によって弱さが補われうる。逆に言えば、安定的な関係を持たない者は弱者となって社会的に排除されかねない。さらに、その社会的に生み出された弱者としての地位がスティグマ化されることで、排除された状態が維持される。今後は、このような社会的排除の生成・維持過程における心理社会的資源の影響について検討する。
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Research Products
(5 results)