2018 Fiscal Year Annual Research Report
高等学校における不登校と“社会で生きていく力”支援プログラムの開発と追跡調査
Project/Area Number |
15H03452
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
伊藤 美奈子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (20278310)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相馬 誠一 東京家政大学, 人文学部, 教授 (20299861)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 不登校 / 高等学校 / 通信制 / 校内カフェ / 事前指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高等学校における不登校への支援とし“社会で生きていく力”を育成するプログラムの開発にある。 文部科学省の不登校追跡調査によると、不登校経験者の高校進学状況が大きく改善された。しかし一方、中学卒業5年後におい ても人間関係や生活面、学力面での不安を抱えるものが多く、不登校支援のゴールである“社会的自立”が先送りにされている 現状が明らかになった。本研究では、高等学校に焦点を当て不登校や中退の現状を明らかにした上で、不登校経験者に必要とさ れる“社会で生きていく力”として“学ぶ力(学力や自らの進路を選びキャリア形成していく力)”“交わる力(集団の中で対 話し、ともに活動する力)”“心身の健康(折れない・あきらめない健全な心と体)”という3点を取り上げ、それらを支援するプログラムの開発を目指してきた。 本年度は、とくに2つの高校を対象に、不登校経験者への支援とその成果について心理臨床実践も交えつつ、検討を重ねてきた。通信制高校の実践からは、入学前からの「事前指導」(入学予定生徒を事前に登校させ、仲間づくりや基礎学力のサポートなどを行う)が有効であることが明らかになった。また全日制高校での取り組みからは、校内カフェ(放課後の居場所作り:そこでのおしゃべりやゲームなどを行う)が、不登校やひきこもりになるのを防ぎ、転学予防への効果もあることが示唆された。 この成果については、学会にて日本教育心理学会および日本心理学会にて発表(松下・伊藤,2019;金子・伊藤,2019)するとともに、論文としても報告(松下・伊藤,2020;有島他,2020)を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
“社会で生きる力”の一つとして重要な<就職へのつなぎ>を支援する取り組みについて検討を加える必要が生じ、就職指導に力を入れた実践をしている高校の開拓に努めてきた。2019年末になり、ようやく、卒業と就業を見据えた生徒指導に力を入れている高校をフィールドを確保することができた。2019年度中に、その高校への見学(2回)を行い、調査研究の準備を進めてきた。2020年度には、そこでの調査を加え、これまでの調査で明らかになったことを含めて、最終的に報告書としてまとめたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでフィールドとして調査や聞き取り、観察などを継続してきた広域通信制高校、おもに校内カフェの形で、心理臨床実践的関わりを継続してきた不登校クラスのある私立全日制高校、さらに、不登校経験者に丁寧な支援を行い、就職指導も含めた「生きる力育成教育」に力を入れている私立全日制高校、学力や自己肯定感に注目しつつ不登校経験者の高校卒業を目指す単位制・多部制高校を4校をフィールドに、調査を行いその成果をまとめる。 まとめた内容については、学会にて発表すると同時に、報告書にまとめ、最終的には、不登校経験者の進路選択にも資する資料となるよう一般書籍として刊行することを考えている。
|
Research Products
(10 results)