2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03473
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松下 佳代 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (30222300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 和宏 新潟大学, 歯学部, 教授 (40224266)
平山 朋子 藍野大学, 医療保健学部, 准教授 (80388701)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | パフォーマンス評価 / ルーブリック / PBLテュートリアル / 改良版トリプルジャンプ / 考えるOSCE-R / 学習成果 / 直接評価 / 間接評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.能力の形成を促すパフォーマンス評価の開発 (1)新潟大学歯学部――①初年次教育科目「大学学習法」でのライティング・ルーブリックを用いたレポート評価、②2・3年次のPBL科目でのワークシートとロールプレイによる評価(「改良版トリプルジャンプ」)を開発・実施した。①はアカデミック・ライティング、②は問題解決能力をみるためのパフォーマンス評価である。今年度は特に、別に開発した授業用学習質問紙(CLQ)による間接評価とパフォーマンス評価による直接評価との関連、パフォーマンス課題についての教員による評価と学生による自己評価との関連について分析を行った。 (2)藍野大学理学療法学科――OSCEに臨床推論課題とグループリフレクションを組み合わせた「考えるOSCE-R」を開発・実施した。これは、基本的臨床技能とその背後の臨床推論能力をみるためのパフォーマンス評価である。この評価の学生の学習に対するインパクトを、OSCE得点の変化、質問紙調査、インタビュー、リフレクションシート等のデータを収集し、MAXQDA等を用いて分析した。 2.パフォーマンス評価の拡張――新潟大学のフィールドを用いて、学生の学習成果に関する直接評価と、学習成果や学習プロセス、学習経験に関する間接評価から得られる情報の統合をめざした研究を行った。 3.パフォーマンス評価の理論化――新潟大学および藍野大学でのアクションリサーチを通じて、学習成果の評価が、直接評価か間接評価か、質的評価か量的評価か、の2軸によって4タイプに分けられること(パフォーマンス評価はもとは質的評価であるがルーブリックを介して量的評価にもなる)、直接評価と間接評価の結果を統合するには評価単位(プログラムか科目か)をそろえる必要があること、評価が学生の学習経験にもなるような「学習としての評価」として機能することが重要であること、が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初に、1~3の目的について、①信頼性と実行可能性の改善、②学生の評価能力の向上、③思考の可視化と評価、④他分野への応用という4つの研究課題を挙げた。それぞれの達成度について述べる。
1.能力の形成を促すパフォーマンス評価の開発――(1)新潟大学歯学部:①コピペへの評価者の態度の違いという要因に着目し、コピペ検出ソフトを使って評価者間信頼性の向上を試みたが、明確な効果は得られなかった。一方、改良版トリプルジャンプの実行可能性の改善(評価負担の軽減)については、ワークシート課題のオンライン化を図り、来年度から運用予定である。②については、まず学生の評価能力の実態を明らかにすることに取り組み、かなりの知見が得られた(2参照)。(2)藍野大学理学療法学科:③について、「考えるOSCE-R」に関するデータをMAXQDA等を用いて分析した結果、学生が、リフレクションの中で臨床推論に必要な知識や技術を学んでいることが明らかになったが、一方で、学生の臨床推論がどのように変化し、それがOSCE課題のパフォーマンスや臨床実習での実践にどう反映されているかについてはさらに検討が必要である。 2.パフォーマンス評価の拡張――②学生の評価能力について、パフォーマンス評価結果(直接評価)と学生による学習質問紙の回答(間接評価)との関連、パフォーマンス課題についての教員による評価と学生による自己評価との関連について分析を行った。その結果、両者の間には大きなズレがあり、教員による評価を、学生による自己評価によって代替することは困難であることが示された。ただし、学習プロセスや学習経験を捉える際には質問紙を用いた間接評価が有用であることも明らかになった。 3.パフォーマンス評価の理論化――理論化の成果については、④他分野への応用も含め、単行本(『アクティブラーニングの評価』)と『大学教育学会誌』にまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、1~3の目的について、①信頼性と実行可能性の改善、②学生の評価能力の向上、③思考の可視化と評価、④他分野への応用という4つの研究課題に取り組む。平成27年度は、新潟大学歯学部と藍野大学理学療法学科の2つが主たるフィールドであったが、新たに私立高槻中学校・高槻高等学校を第3のフィールドに加え、学校種や分野の異なるフィールドで、「能力形成を促すパフォーマンス評価の開発と拡張」の研究を展開する。 1.能力の形成を促すパフォーマンス評価の開発 (1)新潟大学歯学部――①ワークシート課題のオンライン化(仮称「eステップス」)による「実行可能性の改善」の効果を検討する。②平成27年度に現状分析が進んだ「学生の評価能力」について、自己評価結果と教員による評価結果のズレをリフレクションさせて、評価能力の向上を図る(PBL評価)。レポート評価については、平成28・29年度(1年次・2年次)にまたがって行う予定である。 (2) 藍野大学理学療法学科――③について、「考えるOSCE-R」が実際に学生の臨床推論を評価できているか、その能力を育成する上で役立っているかについて、さらに詳細な分析を行う。 2.パフォーマンス評価の拡張(他分野・学校種への応用)――高槻中学校・高槻高等高校における、深い学びをめざしたアクティブラーニング型授業の導入によって、実際にディープ・アクティブラーニングが生起しているか、それを通じて能力育成と知識習得が両立できているかを、パフォーマンス評価や授業・学習プロセスの分析(授業のビデオデータやグループワークの音声データの分析)によって明らかにする。 3.パフォーマンス評価の理論化――これまでは、問題解決能力や基本的臨床技能・臨床推論能力などに焦点をあてていたが、能力形成と知識習得との関係を見るところまで、パフォーマンス評価の射程を広げる。
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Research Products
(44 results)