2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Policy Study on Nature, Ability, Performance and Pride of Teachers and School Management
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15H03489
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Research Institution | Kyoei University |
Principal Investigator |
藤田 英典 共栄大学, 教育学部, 教授 (30109235)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教師の自己効力感 / 学級経営 / 教科指導 / 同僚性・協働性 / 生徒の学習参加 / 学校文化 / 教育行政 / 教員政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
4年継続2年目の平成28年度は独自調査を行い小中教員1782名(小1016、中766)の回答を得た。得られた知見は多岐にわた豊富であるが、ここでは中学教員対象のTALIS2013の結果との比較のうち次の一点に絞って紹介する。 TALISでは日本の教師の自己効力感の著しい低さが注目された。自己効力感12項目について「非常によくできている」「かなりできている」の合計回答割合の参加国平均は9割台2項目、8割台8項目、7割台2項目だったが、日本は5割台3項目、4割台4項目、2割台3項目、1割台2項目であった。この結果について同調査の日本語版報告書は、日本の教師は「謙虚な自己評価を下す傾向、目標水準が高い等」による可能性があると述べている。しかし、当該質問項目の第3選択肢「ある程度できている」の英語版は「To some extent」であるが、4件法の場合の選択肢は正負各2つにするのが通例であるから、第3選択肢を「あまりできていない」と訳していたら違う結果になった可能性がある。そこで同質問について①TALIS元版(中481名)と②TALIS変更版(中285名)の2種の調査票を作成し調査した。②TALIS変更版の結果、3割台1項目、5割台2項目、6割台5項目(内3項目は約69%)、7割台4項目となった。この結果も3割台の1項目を除いてTALISの結果より約1割~約3割低い。その低さの一部が上記報告書の理由によるだろうが、他の実質的な要因もよると考えられる。例えば3割台の項目は「批判的思考を促す」で、TALIS参加国平均80%に対し37%でしかない。この大きな差は、例えば知識中心主義・受験学力重視傾向などに加えて、批判的思考(critical thinking)や論理的思考力(logical thinking)の形成を軽視・抑制する傾向があるからだとも考えられる。ともあれ、上記のような差を含めて、調査票に盛り込まれた種々の質問項目の相互関係・因果関係について分析・考察することが次年度の研究課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【本研究の枠組と分析課題】教師の資質・力量・誇り・パフォーマンス(NAPP)と学校教育の質・パフォーマンス(SQP)を目的変数、①教師の意識・実践、②学校経営と同僚性・協働性、③学校教育環境(子ども・保護者の実態)、④教育政策・教育言説(マスコミ等の見方)を主な規定要因とし、次の三つの分析課題を設定。 (1)上記③④の「学校教育基盤」の構造変容・揺らぎと教育実践の現代的な難しさ・課題。(2)上記NAPPと①②の関連構造・改善課題。(3) NAPPとSQPの関連構造に関する総合的検討。 【平成28年度の研究計画と進捗状況】上記三つの分析課題のうち(1)と(2)の検討作業の結果を踏まえ、それら(1)(2)と(3)について実証的に検討するために独自のWebアンケート調査を実施し、そのデータの分析に着手する。その進捗状況は以下の通り。 (a)上記(1)と(2)については概ね予定通り進み、暫定的な成果として調査すべき事項の確定と基本的な仮説の設定を行うことができた。(b)上(1)(2)の検討結果に加えて、(3)の課題達成の前提となる独自調査の実施に向けてOECDのTALIS2013その他の既存調査の結果を検討し調査票の作成に取り掛かったが、盛り込みたい質問項目が多く、その削減と構造化と、調査対象者の確保に予想以上に膨大な時間と手間がかかり、独自調査の実施時期が当初予定より半年遅れの平成29年1月になり、回収できたサンプル数も当初予定の約6割(1782)となった。(c)平成29年2月から独自調査データの分析に取り掛かり、上記(1)(2)の確認検討と(3)の総合的分析に着手した。 【「(2)おおむね順調に進展している」とした理由】上記(b)に記載したように独自調査の実施時期の遅れと回収サンプルの4割減があったものの、実質的な作業課題は計画通り進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、教師の資質・力量・誇り・パフォーマンス(NAPP)と学校教育の質(SQP)の実態と規定要因を明らかにするために、 (a)文献研究、(b) OECDのTALIS2013など 既存調査の結果の検討、(c)新たに実施する独自調査のデータの分析、及び(d)学校・教委等の視察・面談調査、の4つの作業を行うことにしている。4年継続の3年目に当たる平成29年度は、以下の4つの作業・活動を行う。 ①上記(a)(b)の作業の継続。②上記(c)の独自調査データの分析を進め、その成果を研究成果報告書として取り纏め公表することに加え(記者発表を含む)、複数の学会大会で発表し(現時点で4学会)、複数の論文を内外の学会誌等に寄稿する。③上記(d)の現地調査を開始する。④第2回独自調査(パネル調査を含む)を平成30年1月下旬~2月上旬に実施する。 上記(c)の独自調査は当初の企画通り調査会社に委託しWebアンケート調査として実施されたが、前年度実施の第1回調査で委託調査会社のモニターから回答を得ることのできた公立小中学校教員は提携会社1社のモニターも含めて1647名(委託会社1131、提携会社516)となったものの、本研究会が独自に教育委員会・校長会等を通じて協力依頼を行い回収できた教員(ビジター)は135名でしかなかった。モニター調査2社分とビジター調査での実査は三つの調査を実施したことになるため基本料金が嵩み、前年度科研費の6割強を占めることになった。第2回調査では、ビジターを本研究会のWebサイトで協力教員を募集し増やす予定ではあるが、大幅増は期待できないので、経費は第1回調査とほぼ同額になる可能性があるが、他の費目の経費を切り詰め、第1回調査と同数以上の確保を目指すことにしている。
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Remarks |
NAPP教師研究会日本学術振興会・科学研究費補助金による「教師の資質・力量・パフォーマンス等と学校経営・教育政策に関する政策科学的研究」
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Research Products
(6 results)