2016 Fiscal Year Annual Research Report
Integrated Research for Database Construction of Drawing Textbooks in the Meiji Period
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15H03502
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
赤木 里香子 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (40211693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 一夫 茨城大学, 教育学部, 特任教授 (70114014)
角田 拓朗 神奈川県立歴史博物館, その他部局等, 学芸員 (80435825)
山口 健二 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (90273424)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 美術教育史 / 美術教育 / 図画教育 / 手工教育 / 教科書 / 明治期 / 画手本 / 画帖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、明治期に刊行された図画手工教科書の全容解明と、その保存および活用に向けた総合的調査を行うことである。多様性に富む明治期図画手工教科書の総体を詳らかにするべく、それらの総合的データベース構築に向けて目録の整備を進めるとともに、資料の一部についてはデジタル画像データ化を行い、試験的なデータベースの運用に取り組む。劣化が進行する資料の保存と活用に加え、図画工作・美術科教育の成立要因を多角的に捉え直す意義もある。 平成28年度には前年度に引き続いて、研究代表者・分担者の所属機関が所蔵する資料についてデジタル画像データの作成および処理を進めた。明治前期から中期の初等教育用検定教科書と明治後期の国定教科書についての作業を継続するとともに、中等教育用教科書のデータ化にも着手した。 また、これまでデジタル化が完了した画像データを体系的に整理しながら、データベース化した段階で得られる知見からどのような分析が可能となるか、また、どのような活用方法を見出せるか、研究代表者・分担者それぞれの観点から考察を深めた。 さらに、美術教育史に関する国際比較研究に向けて、欧米の近代図画教育の方法論や教材等に関する情報収集を進めた。8月末から9月にかけてはカナダ、アメリカにおいて、ヨーロッパからイギリスを経由して北米に伝播した図画教科書に関する調査を行った。また、10月末には、ミュンヘンで開催された国際シンポジウム Drawing Education Worldwide! (主催:ミュンヘン美術史中央研究所、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン)に研究代表者および分担者がパネリストとして招待され、発表を行った。 平成29年3月末には美術科教育学会静岡大会において研究の進捗状況を報告するとともに、研究組織外の研究者に対して協力を依頼し、明治期図画手工教科書の活用に向けて具体的方策を講じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明治期図画手工教科書の所在調査、研究代表者・分担者の所属機関が所蔵する資料についてのデジタル画像データ化は当初の計画以上に進展しており、総合目録の暫定版の作成もおおむね順調に進展している。 国際比較研究に向けた研究者グループとの連携についても、国際シンポジウムへの参加を通して予想以上に充実させることができ、欧米の近代図画教育の方法論や教材等に関する情報収集も順調に進んでいる。 蓄積された画像データに基づいた試験的な画像データベースの作成については、専門業者との契約を必要とするため次年度に持ち越した。しかし、年度末の学会発表等により研究組織外の美術教育研究者との連携協力の可能性が高まり、試験的に運用するデータベースのモニターとして活動してもらえることが期待できる状態となった。 以上のような観点から、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度が最終年度となるため、明治期図画手工教科書についての所在調査と総合目録作成を終了し、画像データベースの試験的運用を開始する。 本年度前半までに研究代表者・分担者の所属機関が所蔵する資料の撮影を終え、その他の機関においても画像データ化可能な資料を渉猟し、画像データベースの素材を増やすだけでなく、一枚一枚の画像について、どの教科書のどこに位置するか、画者は誰か、画材やモチーフ、版種は何かといった多様な情報を持たせるようデータ処理を行い、キーワード検索ができるシステムの構築を、設計業者との協働によって目指す。 本年度後半には、各教科書の体系に沿って図様を見ることはもちろん、別の教科書の図様と比較しながら見るといった操作を実現しうるデータベースの運用を試験的に開始し、岡山大学附属図書館のサイトで公開する。さらにモニターによる意見を集約して、より使いやすく汎用性の高いシステムとなるよう、検討を重ねる。以上のような推進方策によって、図画手工教科書の総体を整理し体系づける手がかりを、より多くの人に開かれたものとしたい。 なお、国定教科書に関しては、明治期にとどまらず大正・昭和期のものもデータ化の対象とする。画像撮影は終了しており、大きな計画変更ではない。研究代表者・分担者は、教育的図画時代に作成された国定教科書に、それ以前の鉛筆画教科書および毛筆画教科書からの引用が見られることをすでに指摘してきたが、その引用・被引用の関係を、より明確にできることが期待される。 このデータベースを活用することで、世界各地で公開が始まっている多様な画像データベースと関連づけて、日本と欧米の図画手工教科書を比較したり、明治期中等・高等教育における図画手工教育の位置づけを再評価することができるだろう。本研究課題では試験的な運用にとどまるため、完成をめざして研究を継続する予定である。
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Research Products
(12 results)