2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03507
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
大杉 昭英 国立教育政策研究所, 初等中等教育研究部, 部長 (50353397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須本 良夫 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30547691)
橋本 康弘 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (70346295)
中原 朋生 川崎医療短期大学, その他部局等, 教授 (30413511)
田中 伸 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70508465)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 価値学習 / 授業構成 / カリキュラム / 市民性教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
文献研究及び先行研究に基づき,社会系教科目における価値の扱いについては,強制力のある法,普遍化可能性を持つ社会倫理,個人の行動規範となる道徳に分類し,本研究において中心となる社会倫理として自由至上主義,功利主義,社会契約主義、共同体主義を取り上げ,その特徴を整理した。 そして,価値判断を行うプロセスについて児童生徒にインタビューする際の質問項目を作成するとともに,全国の小学校3校,中学校3校,中等教育学校1校,高等学校3校の合計10校で論争問題を取り上げた授業を視察し,児童生徒の判断根拠についてインタビューを行い,判断プロセスをまとめた。その結果,社会系教科目で学習した社会倫理的な内容が判断根拠になる割合が低く,検討課題が明らかになった。また,社会倫理として挙げた自由至上主義,功利主義,社会契約主義,共同体主義を取り上げて判断させる中学校の授業を参観し,中学校段階でもこのような倫理基準の理解とそれを活用して判断する力の育成が可能であることが明らかになった。 海外調査では,フィンランドを訪問し,ヘルシンキ大学とトゥルク大学の市民性教育を専門とする研究者にインタビュー調査を行い,意思決定の際の判断について道徳的価値が用いられる可能性について整理した。 以上,国内及び海外の調査結果をまとめ,社会系教科教育学会で研究代表と研究分担者の5名で共同発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,価値多元社会における社会系教科の価値学習の在り方を明らかにすることであり,そのために,欧米で先進的な取組が行われている市民性教育における価値学習と日本のそれとの比較を行い,社会系教科における価値学習のカリキュラム構成上の指針と授業構成について原理的実践的に研究を行うことを目指している。 そのため,平成27年度の研究実施計画では,前期に文献研究で価値判断基準となる社会倫理の内容を明らかにするとともに児童生徒の判断プロセスを解明するインタビュー項目の作成を計画していた。実際には,文献研究で4つの社会倫理の内容を明らかにするとともに,インタビュー項目を作成し,小中高校の各1校で児童生徒にインタビューを行い結果をまとめた。 後期には海外調査(フィンランド)を行い,市民性教育に関わる研究者へのインタビュー調査を行うとともに,国内では,小中高の各2校と中等教育学校1校で児童生徒の判断プロセスについてインタビュー調査を行い,その結果をまとめた。そして,その成果を学会で口頭発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,前期には,海外調査としてドイツ及び英国を訪問し,市民性教育を行っている研究者に価値判断についての見解をインタビューするとともに初等及び中等学校で授業視察を行い価値判断を行う授業の構成について調査する。また,国内会議を開催し,昨年度行った児童生徒の判断プロセスを明らかにするインタビュー項目を再検討し,新しい内容を構想する。 後期には,新たに作成するインタビュー項目を使って,国内で行われる小中高校の論争問題を扱った授業で児童生徒がどのような判断プロセスを取るのかを明らかにし,それを整理する。 そして,海外調査及び国内調査をまとめた内容を学会で口頭発表する。その結果を踏まえ,最終年度となる来年度の研究計画を再検討し,研究のまとめ方について整理する。
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Research Products
(7 results)