2016 Fiscal Year Annual Research Report
日本障害児教育の欧米依存からの脱却と自立のための欧米障害児教育の理論的歴史的総括
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15H03514
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
中村 満紀男 福山市立大学, 教育学部, 教授 (80000280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 信雄 山梨大学, 総合研究部, 教授 (10218844)
岡 典子 筑波大学, 人間系, 教授 (20315021)
藤井 聰尚 広島文化学園大学, 学芸学部, 教授 (50033634)
冨永 光昭 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (50227633)
木村 素子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (60452918)
高柳 瑞穂 (松本瑞穂) 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (60588010)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 障害児教育 / 日本 / アメリカ合衆国 / ドイツ / スウェーデン / ロシア / 社会主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、最終年度に向けて、アメリカ班・ドイツ班・スウェーデン班・ロシア-社会主義班ごとに、研究目的に即して検討した。 アメリカ班では、明治初期から現代に至るまでの日本人の訪問に関する特殊教育関連情報(時期・場所・受容内容等)について整理した。これによって、日本のアメリカ特殊教育への期待の内容と変化が把握できる資料となる。 ドイツ班は、現地調査および学説史の検討により、これまでのドイツ障害児教育の変化と展開を整理し、インクルーシブ教育の状況を確認した。 スウェーデン班とロシア-社会主義班は、戦後の日本に大きな影響を与えたという意味では共通するものの、スウェーデン班は未だに影響が継続している。そこで、スウェーデンについてはその何が日本にアピールしたのかについて現地訪問により調査を行った。ロシア-社会主義は、戦後の一時期、とりわけ障害児教育界に大きな影響を与えた国であるにもかかわらず、その最終的な成果と限界について現在でも把握されていない。そこで、ロシア班は、これまで10年程度の間隔をおいて訪問してきた同一校に三度目の訪問をし、教員にインタビューすることにより、ソ連-ロシアにおける障害児教育の盛衰とその実体を解明する手がかりを把握しようとした。 日本が近代国家を目ざしてから150年が経過し、これまで後進国として、当時の先進国から進んだ文物の一つである特殊教育を導入してきたが、非欧米圏で唯一先進国になった現在、日本の障害児教育は、高度なレベルを自負するものの、国際的なモデルにはなり得ていない。そこで、何が問題なのか、その問題の所在を解明することにより、国際的に通用する障害児教育の条件を明らかにすることを目ざしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象国により、いくぶん、遅進の程度に差はあるが、おおむね、当初の研究の趣旨通りに進行している。最終的には、日本の対象国の特殊教育への期待内容および時期等について、縦断的・横断的な検討を行うことにより、日本の外国情報依存体質の源は、かなり解明できると思われる。しかし、その改善策については抽象的には提示できると思われるが、実効性があり、意味がある具体策を提示することは困難であるかもしれない。というのは、日本とこれら外国との関係の様式あるいは構造は、障害児教育界に特有な要素は部分的であって、日本が抱えている問題の全体像の一部に過ぎないと思われるからである。その問題を例示すれば、強固な中央集権体質と地方および個人の弱体であり、この体質は、150年の近代日本の歴史において、容易に変化することはなかった。一方で、対象国であるヨーロッパおよびその延長であるアメリカとは文化的・社会的な相違があるために、日本が同化することによって問題を超克する可能性はあり得ないからである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の趣旨は単なる欧米障害児教育史にあるのではなく、対象国と日本との関係あるいは交渉の変化と実体の歴史的究明にこそ、大きな重点がある。しかし実際には、本研究で検討する外国との関係は、それぞれ、時期と問題が異なると考えられる。アメリカ合衆国のように、大正期以降、昭和戦前期の一時期を除いて、一貫して強い影響を受けてきた国もあれば、スウェーデンやロシア・社会主義のように、その影響が戦後に限定された国もある。また、外国情報の受容の仕方も同じではない。そして、ロシア-社会主義のように影響が一時的あるいは潜在化した国もある。日本と該当諸国との関係史について、以上の点に留意して最終年度の成果をまとめる必要がある。
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Research Products
(4 results)