2016 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of a high-speed structured illumination microscope and its application to the observation of dynamic soft materials
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15H03518
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梶本 真司 東北大学, 薬学研究科, 講師 (80463769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福村 裕史 東北大学, 理学研究科, 客員教授 (50208980)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構造化照明顕微鏡 / 相分離 / 溶液内柔構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度には,高繰り返しナノ秒レーザーを励起光源とした蛍光顕微鏡に回折格子を導入し,励起光ビームを複数に分け,対物レンズを通して試料上で再びビームを結合し,干渉縞を作ることで構造化照明を可能にした。さらに,ハイスピードカメラを導入することで,構造化照明顕微鏡を構築した。また,ナノ秒レーザーを用いて水溶液中の金ナノ粒子を励起することによって,可視光領域にブロードな発光が観測されること,さらにこの発光強度が圧力に依存して大きく変化することを見出した。これらの結果は,ナノ秒レーザーパルス励起に伴う金ナノ粒子およびその周辺の溶媒の急激な温度上昇によって,そのパルス幅内においてナノバブルが形成していることを示唆していると考えられる。さらに,発光に対するレーザー強度閾値や観測された発光寿命からナノバブルの発生メカニズムやその崩壊過程まで含んだダイナミクスについて考察した。また,下部臨界温度を持つイソブトキシエタノール(iBE)-水混合溶液の相分離ダイナミクスについて,ナノ秒レーザー温度ジャンプ法と時間分解光散乱測定を用いてその温度依存性を詳細に調べ,温度ジャンプの大きさが小さく,到達温度が低いほど,Early stageと呼ばれる濃度変化を伴う相の形成過程を含む相分離初期過程に要する時間が長く,その時に形成される相の大きさが大きいことがわかった。構造化照明顕微鏡の光源として使用していたナノ秒レーザー装置の修理とそれに伴う再調整のために実験が遅れたが,概ね順調と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は高繰り返しレーザーを光源として用い、ハイスピードカメラ、蛍光顕微鏡と組み合わせることで、時間分解能1 ミリ秒以下、光学限界を超える空間分解能を持った高速構造化照明顕微鏡を構築し、それを用いて溶液内に存在するメゾスコピックな柔構造や性細胞の実時間観測を行うことを目的にしている。28年度の研究では,励起光源となるレーザー光の光路上に回折格子,あるいは格子縞構造を持ったマスクを導入することで,励起光ビームを複数に分割し,そのうちの2つ,あるいは4つのビームを対物レンズを通して試料内において再び結合することで,干渉縞を作成することで構造化照明を可能にした。また,ハイスピードカメラを導入することによって,構造化照明顕微鏡を構築した。構造化照明顕微鏡の分解能を決定する重要なパラメータである干渉縞の間隔は,光学系にプリズムを導入し設置したマイクロメータを調整し,対物レンズに入射する際のビーム間の距離を変更することで簡単に調整できるように構築した。また,照明光パターンの位相の高速変調を可能にするために導入するポッケルスセルについてハイスピードカメラを用いてその応答速度の評価を行い,数100μsでの位相制御が可能であることを確認した。さらに,高速構造化照明顕微鏡の観測対象として予定している,相分離過程にある溶液中に過渡的に現れる微小柔構造について,レーザー温度ジャンプ法と光散乱法を用いてその構造のサイズの温度依存性を調べ,相分離を開始する温度が低いほど,相の成長が遅く,また初期過程に形成される相のサイズが小さいことを確認した。また,細胞内の小機関についてもラマン顕微鏡を用いた観測を開始し,ラマン散乱光を用いて細胞をイメージングすることで,細胞内の水や生体分子の濃度を画像化できることを確認し、構築している構造化照明顕微鏡の観測対象となりうると結論した。進捗状況は概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度には,これまでに構築した構造化照明顕微鏡にポッケルスセルを導入し,実際に照明光のパターンの位相を変えながら,複数枚の画像を連続的に取得し,それぞれの画像に現れるモアレ縞を解析することで超解像画像を取得できる,高速構造化照明顕微鏡を構築する。まずは,照明光パターンの位相を1次元方向のみ変調させて,オプティカルセクショニング画像,および1次元の超解像画像を取得する。試料としては,溶液中の柔ナノ構造だけでなく,蛍光色素によって染色した生細胞内の各オルガネラを対象とすることを考えている。さらに,励起光ビームを3本に分け,対物レンズを通して試料上で再結合し干渉縞を作ることで,2次元の格子模様の照明光パターンを用い,縦・横の縞を独立に位相制御することで2次元の超解像画像を取得する。2次元の格子模様の作成,および位相制御にはポッケルスセルを2つ導入し,2つのビームに対してそれぞれ独立に位相を制御する必要がある。さらに,ハイスピードカメラとポッケルスセル,レーザー光を電気的に同期することで,高速超解像顕微鏡を構築する。まず,均一な液体試料や蛍光ビーズなどを用いて,構築した高速超解像顕微鏡の評価を行い,その後に生細胞や溶液内微小柔構造の観測を行う。高速化を実現するために,蛍光色素の選択など試料についても最適な試料を作製する必要があると考えられるが,それぞれの環境における蛍光スペクトルや蛍光寿命,量子収率の測定・決定することで,高速構造化照明顕微鏡を用いた観測に適した観測対象が選択できると考えている。さらに,パルス電場やレーザー照射など外部摂動に対するナノ柔構造の観測を目指す。
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Research Products
(7 results)