2018 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03521
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
内田 和之 京都産業大学, 理学部, 准教授 (10393810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 克政 神奈川工科大学, 基礎・教養教育センター, 准教授 (60436243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | モアレ / 原子膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に引き続き、モアレを利用した熱伝導性の制御を研究するために、必要なコードの開発を続けた。 熱伝導性を知るには、モアレが生じた系における原子の運動について、詳しく調べる必要が有る。最終的には、第一原理的な電子状態計算を用いて各原子に働く力を正確に計算し、その力が働いた場合の運動方程式を解く計画である。しかしながら、第一原理的な電子状態計算は、特にモアレが生じているような巨大な系において、電子の個数があまりにも多く、莫大な時間と計算機資源を消耗してしまう。そこでまず、経験ポテンシャル法に基づく古典的、半定量的な分子動力学法を用いてモアレを生じた系における原子の運動を調べ、研究の見通しをたてることが必要だと考え、現在も、面内の原子間相互作用(共有結合)と面間の原子間相互作用(ファンデルワールス力)の両方を、半定量的に記述することのできる経験ポテンシャルと、超多原子の運動を効率的に解くための超並列計算プログラムの開発を進めている。この内、面間の原子間相互作用(ファンデルワールス力)の計算部分は、ほぼコードを完成した。平成31年度は、面内の相互作用(共有結合)を記述するコードの作成を進めること、面間の原子間相互作用を記述するコードと面内の原子間相互作用を記述するコードを融合すること、さらにコード全体を並列計算プログラムに書き直す作業を進めたい。また平成30年度の計画では、分散関係のアンフォールドについても調査研究を進める予定であったが、進捗が遅れている。これについても並行して研究を進めて行く計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モアレを利用した熱伝導性の制御の研究を進める上で避けることのできない、経験ポテンシャルの作成と、分子動力学計算プログラムの作成が、未だ途上であることから「やや遅れている」と判断する。約1年前、Nature誌にモアレを生じた系で、ねじれ角に依存して超伝導が現れるという実験報告が初めてなされ、研究当初には想定していなかった側面(超伝導)からも「モアレを利用した物性制御」を調べる必要が生じている。この件に関して、現在も情報収集の段階であり、研究が進んでいない。Nature論文においては、非フォノン機構による超伝導であろうという示唆がなされている。しかしながらモアレを生じた系の運動方程式を解き、フォノンを調ベることは、超伝導の機構をはっきりと特定する為にも不可欠な情報であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、面内の原子間相互作用(共有結合)と面間の原子間相互作用(ファンデルワールス力)の両方を、半定量的に記述することが出来る経験ポテンシャルの作成を進める。原子数の比較的には少ない系で第一原理計算および実験の結果を再現するように経験ポテンシャルを作成し、作成したポテンシャルを原子数の多い系に適用し、結果を検討する。ポテンシャルを確立した後、まずモアレを生じた系におけるフォノン分散について調べる。この時に、実験との比較の為にはフォノン分散のバンドをアンフォールドする理論とプログラムを作成する必要がある。 次に、モアレを生じた系における熱伝導の分子動力学シミュレーションを行う。得られた結果を、フォノン分散に関する知見を利用しつつ解析する。このような古典分子動力学によって、モアレを生じた系における熱伝導性の物理について見通しを立てておけば、第一原理計算による分子動力学法を使ってその信頼性を確保する時のコストを必要最小限に抑えることができる。
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