2016 Fiscal Year Annual Research Report
低次元ナノ構造水酸化物の形態や構造制御による機能チューニング
Project/Area Number |
15H03534
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
馬 仁志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 準主任研究者 (90391218)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水酸化物 / ナノシート / イオン伝導 / 燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
Mg-Al系及びCo-Al系層状複水酸化物(LDH)等板状結晶を脱炭酸処理により硝酸アニオン(NO3-)に交換した後、ホルムアミドの中に機械的振とうを加えて剥離し、LDHナノシートを得た。作製したナノシートを櫛形微小電極に堆積させ、シート面内方向に沿ってイオン伝導特性を測定した。測定した交流抵抗の抵抗値からイオン伝導率を求めたところ、ナノシートの面内方向のイオン伝導率は温度(30-60°C)と相対湿度RH(50, 80%)の増大とともに増加し、80%RHと60℃の環境下でほぼ10-1 S/cmに達することが分かった。この値はこれまでのアニオン伝導体の中で最も高く、実用化済みの燃料電池に用いられているNafionのプロトン伝導率にも匹敵する。 一方、剥離する前の層状複水酸化物板状結晶を同じく櫛形電極上に堆積し、その横方向に沿って測定された伝導率(10-4 S/cm~10-3 S/cm)はナノシートより1~3桁小さいことから、剥離ナノシート化したことがイオン輸送特性の向上に大きく寄与していることが明らかになった。またナノシートの厚み方向の伝導率は非常に低く、約10-6 S/cm程度にとどまる。すなわち、シート横方向のイオン輸送はその垂直方向よりはるかに早く、ナノシートの独特の究極的2次元構造に起因していると考えられる。 層が幾重にも積み重なった構造を有する層状複水酸化物と比べて、単層ナノシートの表面がより多くの水分を吸着し、水酸化物イオンが自由に動くことができるようになり、それに応じてイオン輸送特性が著しく向上されると考えられる。今回発見したナノシートの高い陰イオン伝導性は、燃料電池や水電解装置、触媒、センシングならびに分離膜など広範な用途に技術革新をもたらすことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
層状複水酸化物ナノシートが10-1 S/cmに達する非常に高い水酸化物イオン伝導性を示すことを発見した。層状化合物を最小基本単位である層1枚にまで剥離したナノシートにすることによって、新奇な物理的および化学的特性をもたらす可能性をあらためて示す結果となった。 この伝導率は従来の水酸化物イオン伝導体と比べ10~100倍という高い値で、無機アニオン伝導体の中でも世界最高であり、固体電解質としてアルカリ燃料電池や水電解装置等への応用が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は水酸化物ナノシートの電気化学特性を系統的に調べるとともに、新たに発見した優れた2次元イオン伝導機能が最大限に発揮できる固体電解質材料としての応用展開も進めていく予定である。燃料電池や水電解装置のイオン伝導体または交換膜を製造するために、ナノシートの高い伝導異方性を考慮し、面内伝導が最大化されると同時に垂直方向への輸送が最小限に抑えられる最適な電解質層設計を模索する。
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Research Products
(6 results)