Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,MEMS技術をベ-スに非破壊で水分・栄養物質動態をin-situで観察可能な超小型「維管束(道管流/師管流)センサ」を実現し,作物の生産性向上や高品質果実の安定生産に具体的に寄与すること,更にセンサ情報を統合し,植物の生育に最も重要となる作物や果実等の新梢末端や果柄等の細部を含む植物全体で時空間的な水分・栄養物質動態の測定を行なうことを目的としている. これに向けて, 道管流センサでは,疑似植物実験系やモデル植物を用いて,(1)微少流量測定(0-300μm/sの一般的な植物の流速範囲で10μm/s以下の分解能で測定可能),(2)高速応答性(測定開始後,数十秒程度で安定に測定可能)を確認するとともに,(3) 非破壊測定, (4) 測定再現性,(5)長期安定性等に関する知見を得る等,総合的な評価を行ない,提案したセンサシステムの有用性を実証した. 一方,師管流センサに関しては, 昨年度までに,主に実施した(1)流れの向き,(2)流速,(3)維管束(道管/師管)の位置判別機能に関する検証に加え,今年度は最後の課題である(4)高純度な師管液採取による成分分析測定に関して,液採取構造の工夫を始めとした高性能化等を図り,成分測定に最低必要な数μl程度の師管液の採取に成功し,液体クロマトグラフィを用いた成分測定の結果,糖(ショ糖,ブドウ糖,果糖)の検出を確認した.また, 高機能師管流センサに関しては,道管,師管でpH濃度やEC値(電気伝導率)が異なること,植物ではこれらのバランスが重要なことから,pH・ECの同時測定センサのプロトタイプを製作し,疑似植物実験系において,その動作検証に成功した. 更に,これら超小型の「維管束(道管流/師管流)センサ」を統合して,植物の新梢末端において,水分動態測定や栄養物質動態の同時測定を試み,その実現性の見通しを得た.
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